昨年末に購入した初めての3Dプリンタ『Ender3 V2』ですが電子工作などの趣味用途で非常に役立っています。
3Dプリンタでのモノ作りは楽しく、私が使っているような比較的安価で手に入る機種でもその造形精度は高くイメージしたものを形に出来る・・・本当に素晴らしいことです!
個人レベルでもいろんなものを作れる、そんな時代になったんですね!
そして3Dプリンタという趣味が高じて2台目となる『Artillery Genius』も購入し、完全に3Dプリンタ沼にハマっている感じです。
3Dプリンタを使うようになり半年ほどが経ち感じたのが、フィラメント管理の重要性です。
最近の3Dプリンタは比較的安価なタイプのものでも高い精度での造形が可能となっています。
造形品質や精度に関しては3Dプリンタの調整やスライサーソフトの設定などで大きく変わってくるのですが、その品質を維持するにはフィラメントの状態も大きく関わってきます。
3Dプリンタで使われるフィラメントは湿気を吸収しやすく、一度フィラメント内に取り込まれてしまった水分は造形にいろいろと悪影響を与えます。
造形中に「パチッ、パチッ」と音が鳴る時がありますが、フィラメントに取り込まれた水分がノズルの加熱により蒸発する時のものです。
これが出だすと造形物表面にブツブツとした突起のようなものが出たり表面が荒れたりすることがあります。
寸法精度が要求されるパーツなどの造形では非常に厄介となります。
また糸引きも多く出るようになりったり、フィラメントの押し出し量が不規則になり積層の密着も悪く?なりスカスカな造形になることもありました。
フィラメントがポキポキと折れたりするようにもなります。
このようにフィラメントに取り込まれた水分は造形に悪影響を与えます。
そんなことからフィラメントの管理にはドライボックスを使いシリカゲルなどの除湿剤を使い湿度を管理しながら運用&保管するのが望ましくなります。
3Dプリンタをやられている方はみなさん同様な方法で管理されていると思います。
しかし一度フィラメント内に取り込まれてしまった水分はシリカゲルなどの除湿剤を使っても除去することが出来ないため加熱処理をする必要があります。
フィラメントドライヤーと呼ばれるものを使うということですね!
私の環境でもフィラメントの吸湿による影響が上記のように多く出るようになってきたのでフィラメントドライヤーを導入しました。
使用頻度はそれほど高いものではないのですが、3Dプリンタをやられている方は1台は持っておきたい必須アイテムになるかと思います。
目次
SUNLU FilaDryerS1 フィラメントドライヤー
3Dプリンタ用のフィラメントドライヤーは、eSUN eBOXや今回ご紹介するSunlu S1をよく見かけ使われている方も多いかと思います。
最近ではCrealityやSOVOLが同様のフィラメントドライヤーを新しく発売しました。
現状、あまり選択肢が多くない3Dプリンタ用のフィラメントドライヤーとなります。
フードドライヤーを使われている方も多いようですね。
今回ご紹介するのは、Sunlu製のS1フィラメントドライヤーとなります。
Sunlu製のフィラメントはお気に入りで使う機会が多いため個人的にSunluというメーカーは好きなので選んだというのが大きいのですが、シンプル操作でeBOXと比べ加熱性能が高い?という動画が多く上がっていたので、Sunlu製のフィラメントドライヤーをまず選択しました。
eBOXには、湿度計や重量計、FANなどSunlu製のフィラメントドライヤーにはない付加機能が付いているようですが・・・後日eBOXもレビューしたいと思います。
それではSunlu S1フィラメントドライヤーを見ていきましょう。
付属品一覧
付属品は、フィラメントドライヤー本体のほかにACアダプターとテフロンチューブのスペア、取扱説明書が付属しています。
取扱説明書は、フィラメント素材による設定温度&加熱時間、そして簡単な操作方法が書かれたものとなります。
操作が簡単(分かりやすい)というのがこのフィラメントドライヤーの特徴の1つとなるかと思います。
外観チェック
外観は非常におしゃれな感じです。
加熱温度&稼働時間の設定は前面パネルから行います。
シンプルな操作で直感的に使えると思います。
フィラメント排出口は、前面と上部の計2ヶ所あります。
前面の排出口は少し大きく、使わない際のキャップが付属しています。
上部の排出口は1.75mmフィラメント用のPTFEチューブ(内径2mm/外形4mm)のものがうまく固定できるサイズとなっています。
こちらの穴を塞ぐためのキャップ等は付属していません。
背面には電源ケーブルを繋ぐDCジャックがあります。
底面には滑り防止のラバー素材の脚が4ヶ所付いています。
内部にはフィラメントスプールを回転させるためのローラーが2つ設置されています。
ローラーの動きは非常にスムーズです。
そして底面全体に貼られている金属プレート、これが加熱用のプレートとなっており加熱時はこのプレート全体の温度が上がります。
そのため加熱処理時の場所による温度のムラは少ない印象です。
側面にはウレタン素材?が貼られフィラメントスプール接触時の摩擦低減になっているようです。
1kgスプールを1本装着できるサイズとなっています。
形状&構造は非常にシンプルですね!
使用方法
使い方は非常に簡単です!
前面パネル下にある2つのボタンで操作します。
操作を簡単にするために2つのボタンのみの設計にされているようですね。
そのため電源ボタンや停止ボタンなどもありません。
まずどちらかのボタンを押すと起動します。
表示されるPV(℃)は現在の庫内の温度となります。
左ボタンで目標温度(SV)を下げ、右ボタンで上げていきます。(デフォルトでは50℃に設定されています)
次に左ボタンを長押しすると目標稼働時間SV Time(0~24時間)を同様に設定します。
設定はこれだけです。
設定が完了すると数秒で設定温度&時間で加熱処理が開始されます。
加熱処理中でも同様の操作で設定項目の変更は可能です。
オフボタンや停止ボタンはありませんが、目標稼働時間を0時間に設定することによりスタンバイモード(停止)することが出来ます。
操作は非常に簡単です!
加熱温度&稼働時間の目安は付属マニュアルに明記されています。
状況に応じ変えていく感じとなります。
材料 | PLA | WOOD | PVB | ABS | HIPS | PC | PA | ASA | PETG | TPU |
設定温度 | 40~50℃ | 50~55℃ | 47~51℃ | |||||||
加熱時間 | 3~6時間 |
加熱処理後のフィラメントの変化
3Dプリンタを購入した時に一緒に買ったPLAフィラメントで試してみました。
初めて買ったということでドライボックスでの防湿保管等の知識がなく、ほぼ湿度管理などせずそのまま使っていたものです。
ナイロン系のフィラメントなどと比べるとPLAフィラメントは吸湿しにくい?(湿度が低い季節だったからなのかな?)素材のように感じますが、それでもブリッジ形状とかになると大きく糸引きが発生するようになったものです。(写真右)
50℃で3時間加熱処理させましたが、かなり改善されました。(写真左)
不規則なフィラメントの押し出しもなくなっていますね!
うまくフィラメントに取り込まれた水分を除去出来ているようです。
これだけでもフィラメントドライヤーを導入した意味がありました。
庫内温度は均一に熱が伝わるようです!
eSUN eBOXには内部にファンが内蔵されているようです。
プレートで加熱した熱を循環させる構造になっているようですね。
本機は構造が少し異なりファンは内蔵されていません。
庫内底面の金属プレート全体が加熱する構造となっています。
加熱処理時、この金属プレート全体が90℃以上(設定温度により異なります)とかなり高温となるため加熱性能は高いように感じます。
金属プレートを高温で温め、庫内温度を均一に設定温度に近づけるという構造のようですね。
まだeBOXの方を使ったことがないので比較できませんが、デジタルマルチメーターで庫内の温度を計測してみましたがほぼ均等に熱が伝わっているようです。
またファンがないので稼働中は無音で静かです。
スプール穴に入れるシリカゲルボックスがあると便利!
上記「使用方法」の項目で書いてなかったのですが、加熱処理時は庫内にシリカゲルなどの除湿剤を入れておく必要があります。
加熱によりフィラメントから出てきた水分を除湿剤でキャッチするということですね。
eBOXではシリカゲルなどの除湿剤を入れるためのスペースがあるようです。
本機にはこれがないので加熱処理の際はフィラメントスプールの穴に除湿剤を入れて行うのがいいかと思います。
入れるシリカゲルの量などを考えるとこのようなケースを使うと量が多く、加熱処理後そのまま運用する場合にも便利となります。
シリカゲルケースはこちらのデータをお借りして作成しました。
参考 Silica Gel/Desiccant Canister for Filament SpoolsThingiverse私が使っている再利用可能なシリカゲルは除湿能力は高いのですが結構細かい粒となっていてます。
このケースだとスリット幅が1mmで作られているので溢れることはありません。
PTFEチューブ&湿度計ブラケットを作ってみました
先にご紹介したようにSunlu S1フィラメントドライヤーには湿度計が内蔵されていません。
この手のタイプのフィラメントドライヤーはその構造上、密閉性に関してはあまり良くないといった話を購入前に聞いたことがあったのですが・・・別途温湿度計を用意し2週間ほど使っていますが、シリカゲルなどの除湿剤を入れておけば庫内の湿度を常時20%前後で保てることが出来るようです。
これなら防湿剤を入れ加熱処理後、そのまま湿度管理しながら運用することができそうです。
そこで小型温湿度計をマウントするためのブラケットを作ってみました。
また前面にあるフィラメント排出口にうまくPTFEチューブを固定するためのブラケットも作り使うようになりましたが、非常に使い勝手は良くなりました。
S1フィラメントドライヤーは1.75mmフィラメントのほか、2.85mmや3.00mmフィラメントにも対応しているため前面のフィラメント排出口の形状は大きくなっています。
通常よく使われる1.75mmのフィラメントではかなり穴は大きく、1.75mmに対応したPTFEチューブ(内径2mm/外形4mm)でもこのようになります。
うまくPTFEチューブを固定できるブラケットがあれば便利となります。
PC4-M10サイズのクイック継手を使いこのような形状のブラケットを作成しました。
また小型湿度計をマウントできるタイプのものも作りました。
これで加熱処理後、そのまま湿度管理しながら運用できチューブによりフィラメントをうまくガイドでき使い勝手は良くなります。
こちらの記事で詳しく紹介しています。
興味ある方はSTLデータもダウンロード出来るのでご覧ください!
【追記】定期的な除湿剤の交換が必要そうです!
トータルで1ヶ月ほどシリカゲルを入れた状態で運用しています。
同量のシリカゲルを入れた自作ドライボックスと比べるとだいぶ庫内の湿度が上昇してきました。
フィラメントドライヤーという構造上、完全な密閉性を求めるには難しい印象です。
フィラメントを加熱処理後、そのまま運用しようと考えるとシリカゲル等の除湿剤を定期的にこまめに入れ替える必要がありそうです。
自作ドライボックスの方は1ヶ月以上常に低い湿度を維持できているので密閉性は完璧なようですね!
フィラメントドライヤーは1台持っていると便利なので、加熱処理専用として使うか、再利用可能なシリカゲルを使いこまめに処理して運用するのが望ましいようです。
【追記】メタルラックに設置するためのスタンドを製作しました!
メタルラック(エレクターやルミナスなど)にドライボックスやフィラメントドライヤーを設置している方多いと思います。
Sunlu S1フィラメントドライヤーはコンパクトですが奥行きが27.1cmとなっており、メタルラックのハーフシェルフ(奥行き25cmタイプの棚)には真っ直ぐ置くことが出来ません。
ブログにご要望を頂いたので、このS1フィラメントドライヤーをハーフシェルフの棚に設置するためのスタンドを公開しました。
【追記】eSUN eBOX Liteフィラメントドライヤーもレビューしました!
eSUN eBOXの後継機にあたるeBOX Liteフィラメントドライヤーもレビューしました。
Sunlu S1と同価格帯で買えるeBOXシリーズの新製品となります。
Sunlu S1と比べると奥行きが短くなり幅が広がった形状となっています。
3Dプリンタの設置にメタルラックを使用されている方多いと思いますが、奥行きが短くなっているのでハーフシェルフ(奥行き27cm)にもそのまま置けるので私の環境では重宝しています。
メタルラックなど設置する場合の選択肢は広がるかと思います。
またS1にはないFANが搭載されており熱循環は良さそうですが・・・
Sunlu S1と比較しながらレビューしているので、フィラメントドライヤーの購入を検討されている方はこちらの記事も参考にしてみて下さい!
最後に!
今回、Sunlu 製のS1フィラメントドライヤーをご紹介しました。
それほど高いものではないので、フィラメントが使えなくなり廃棄することを考えると1台持っていると便利ですね!
加熱性能だけで考えるとフードドライヤーを使った方が効率がいいといった話をよく聞きます。
試してみたかったのですが、私の環境では3Dプリンタ設置スペースにそれほど広く取れる場所がないため、コンパクトに作られた本機は便利となりました。
またボックスの密閉性も良く、加熱処理後に防湿管理をしながらそのまま運用できるのもいいですね!
フィラメントドライヤーはあまり種類がなく選択肢が限られますが、3Dプリンタをやられている方は1台は持っておきたいアイテムだと思います。
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