3Dプリンタを使っているとあると便利!ないと不便となる必須アイテムはいくつかあると思います。
その中でもマストアイテムとなるのがフィラメントドライヤーではないでしょうか?
吸湿したフィラメントを使うと造形にいろいろと悪影響を及ぼしますからね。
最近の3Dプリンタは比較的安価なタイプのものでも高い精度での造形が可能です。
現在私が使っているEnder3 V2やArtillery Geniusは低価格帯の部類に入る3Dプリンタですが、購入前に想像していたのとは比較にならないくらい綺麗に造形ができ精度も問題なく使えています。
しかしネックとなってくるのが使用するフィラメントの管理によりその造形品質は大きく左右されます。
FDM方式の3Dプリンタで使われるフィラメントは材質にもよりますが湿気を吸収しやすく、一度フィラメント内に取り込まれてしまった水分はフィラメントドライヤーなどを使って加熱処理しないと除去する事が出来ません。
造形中に「パチッ、パチッ」と音がなる時がありますが、フィラメント内に取り込まれた水分がノズルの加熱により蒸発するもので、これが頻繁に出るようになると造形物表面にプツプツとした突起のようなものが表れたり、荒れたりする場合もあります。
また寸法精度が要求されるパーツの製作などでは非常に厄介なものとなります。
そして糸引きなども多く発生するようになり、フィラメントの押し出し量が不規則になり積層の密着が悪くなったりと・・・いろいろと悪影響が出てしまいます。
そんな事で3Dプリンタをやられている方はみなさん密閉性の高いドライボックスを使いシリカゲルなどの除湿剤を使ってフィラメントの湿度管理に気を使い運用&保管等やられていると思います。
しかし一度フィラメントに取り込まれてしまった水分はシリカゲルなどの除湿剤を使っても除去する事が出来ないため加熱処理をして水分を飛ばす必要があります。
このように吸湿してしまったフィラメントを加熱処理するためにフィラメントドライヤーが役立ちます!
またフードドライヤーなどを使って処理されている方も多いようですね。
使用頻度的にはそれほど高いものではありませんが、3Dプリンタをやられている方は1台持っておくと便利となる必須アイテムの1つだと思います。
これまでSunlu S1というフィラメントドライヤーを使ってきました。
フィラメントメーカーのSunluが出しており安価な価格設定もよく便利に使えています。
そして今回ご紹介するのはeSun eBOX Liteというフィラメントドライヤーとなります。
eSUN eBOXは使われている方をよく見かけるフィラメントドライヤーとなりますが、その後継機となるeBOX Liteが新たに発売されサンプルを頂いたのでご紹介したいと思います。
価格的に上記Sunlu S1フィラメントドライヤーとほぼ同価格帯で販売されています。
eBOXから機能を減らした廉価版のeBOX Liteという位置付けかと思っていましたが、無駄な機能をなくしコストを抑えたアップグレードされた機種といった印象です。
1ヶ月ほどeSUN eBOX Liteを使ってきた感想を詳しくご紹介したいと思います。
フィラメントドライヤーの購入を検討されている方は、上記Sunlu S1の記事と一緒に見て頂ければいいかと思います。
目次
eSUN eBOX Lite フィラメントドライヤー
こちらがeSUN eBOXの後継機となる新バージョンのeBOX Liteとなります。
eBOXの方は使ったことがないため詳細に比較できませんが、製品スペック及びSunlu S1と比較しながら見ていきたいと思います。
付属品
まずは付属品です。
フィラメントドライボックス本体のほか、ACアダプター(24V 2A)・PTFEチューブ・チューブ固定ガイド・ユーザーズマニュアルが付属しています。
ACアダプターは、eBOXの12VからeBOX Liteでは24Vに変更されているようです。
普段Sunlu S1フィラメントドライヤーも使っていますが、S1の方も24V駆動となっています。
S1は1.5A、対しeBOX Liteは2Aとなっています。
ACアダプターを使い回せると便利なんですが・・・怖いので試せていません!
外観チェック
本体外観を見ていきます。
本体サイズは215mm×104mm×238.5mmとなっています。
Sunlu S1と比べると奥行きが短くなった分、少し横幅が増している感じです。
奥行きが短い分、設置できる場所の自由度も高くなります。
普段フィラメント関係のものはメタルラックのハーフシェルフ(奥行き27cm)に置いています。
Sunlu S1では奥行きが長いため真っ直ぐ置くことが出来ず、3Dプリンタで作ったこのようなパーツを下駄として履かせて設置しています。
eBOX Liteの奥行きは238.5mmとなっているのでそのまま設置する事が出来るのが個人的には非常にありがたいですね。
3Dプリンタの設置にメタルラックを使われている方も多いと思いますが、S1 or eBOX Liteの選択の基準にもなりそうです。
フィラメントの排出口は前面の1ヶ所のみとなります。(Sunlu S1は上部にもあります)
付属のチューブガイドを取り付けて使う感じとなります。
背面は電源用DCジャックが配置されています。
24V 2A駆動の定格電力48Wとなっています。
底面は滑り防止のラバーが取り付けられています。
透明(少しグレー色が入っています)の上蓋アクリルパネルは開くと約90度の位置で止まります。
Sunlu S1は180度奥まで倒れる形状になっています。
個人的には上蓋が途中で止まるeBOX Liteの方が使い勝手はいいと思います。
内部には2つのローラーが配置されています。
回転は非常にスムーズでいい感じです。
そして側面には断熱材が貼られています。
eBOXからのアップグレードポイントの一つとなります。(Sunlu S1にも貼られています)
そして底面全体を覆っている金属パネルが加熱プレートとなります。
これもeBOXからのアップグレードポイントとなり、Sunlu S1と同様に加熱時に熱が均等に分散されるようになっているようです。
またSunlu S1にはなかったFANが搭載されていて熱を循環できる仕組みになっています。
ちなみにFANの風は加熱プレート脇から吸入されFAN上部へと排出され循環させています。
FANが取り付けられているクボミ部分にシリカゲルなどの除湿剤を入れるような構造になっています。
しかし穴が小さいのでちょっと入れにくいようですね。
後述するシリカゲルケースを私は使っています。
1kgのフィラメントスプールを入れてみました。
横幅は最大で約93mmまでのスプールに対応しています。
製品仕様
簡単に製品仕様をまとめておきます。
メーカー | eSUN |
モデル | eBOX Lite |
入力電圧 | 100-240V 50/60Hz |
定格電圧 | DC24V / 2A |
定格電力 | 48W |
暖房能力 | <=35W |
温度調整 | 3段階調整(庫内温度:40℃/50℃/55℃) |
加熱時間設定 | 最大18時間 |
対応フィラメント径 | 1.75mm/2.85mm/3mm |
本体サイズ | 215mm×104mm×238.5mm |
本体重量 | 639g |
操作方法
操作方法は非常に簡単ですが、普段Sunlu S1も使っているので少し戸惑う部分もありました。
まず電源ボタンを押して起動します。
ここから加熱処理する「温度」と「時間」を設定していきます。
設定する「温度」と「時間」はモードボタンを押して切り替え、「↑」「↓」ボタンで変更するだけなので操作自体は簡単です。
設定する温度は数値(℃)として入力するわけではなく、あらかじめフィラメントの素材により設定されている「Level(レベル)」を指定します。
TEMP(温度設定)を「1」に設定。
TIME(加熱時間)を5.5時間に設定してみました。
温度設定が実温度(℃)で指定するのではないところが少し面倒ですね!
こちらが付属マニュアルに記載されている温度設定レベルとなります。
上記の例で言うと、温度設定をLevel1にしたのでPLAやPLA+の温度設定ということになります。
そして加熱プレートが103℃に加熱され、庫内温度を40℃に保つという設定となります。
Sunlu S1では実温度(50℃や51℃など)を指定して設定していたので、このあたりはS1に慣れていると使いにくい印象です。
加熱時間は最大18時間まで設定できます。
加熱時間の目安がマニュアルには明記されていませんが、このあたりはフィラメントの状況により変わってくると思います。
また、eBOXには重量計が搭載されているようですがeBOX Liteではこの機能はなくなっています。
ほぼ使わないであろう?機能なので、その分価格が安くなっているのはいいのではないでしょうか?
上記により温度及び時間を設定すると自動的にFANが回転し加熱が開始されます。
基本操作は以上となり非常に簡単です。
加熱処理中は内部のFANが回っているので、その風切り音はそれなりに大きいです。
Sunlu S1ではFANが内蔵されていないので動作音は無音でした。
FANの有無に関しては正直なところS1と比べてみても加熱性能が上がっているのかどうかはあまり分かりませんでした。
1ヶ月ほどの間に数回加熱処理で使ったレベルなので、回数が増えてくると違いも出てくるのかな?
動作中は常にFANが回っており比較的大きな音となるので、FANの有無によりS1との選定ポイントになりそうですね。
ちなみにeBOXではFAN動作の「カチッ・カチッ」というクリック音(リレーの切り替え音でしょうか?)がうるさいといった動画をよく見かけますが、eBOX Liteでは全くなくこの点は改善されているようです。
eBOXは実機がないので比較できなくて恐縮ですが、参考になる比較動画がありeBOX Liteの加熱性能に関しても詳細に解説されているのでこちらの動画も参考にして下さい。
加熱処理時の庫内温度をチェック
先述のようにSunlu S1フィラメントドライヤーと比較すると、温度設定は細かく設定できるわけではなく定められた「温度レベル」の数値を指定して設定する形となります。
S1のように実温度での設定ではなく、ディスプレイにも現在の庫内温度の表示がありません。
特に細かく温度を設定する必要はないと思いますが、駆動中に実温度の表示機能はほしいところでした。
加熱処理中に庫内の温度が実際にはどれくらいになっているのか調べてみました。
温度を感知するセンサー(サーミスタ)の位置がどこにあるのか分かりませんが、熱風が出るFAN上部に温度計を設置して測ってみました。
結果はこんな感じとなりました。
温度レベル1(PLA/PLA+)
規定値 | 実温度 |
40℃ | 40℃ |
温度レベル2(ABS/ABS+/PETG)
規定値 | 実温度 |
50℃ | 48℃ |
温度レベル3(PVA/Nylon/PC)
規定値 | 実温度 |
55℃ | 53℃ |
高温になると少しバラツキがあるようですね。
ほぼ誤差といったところで測定する位置によっても若干変わってくるかと思いますが、常に温度は一定値に保たれているようなので熱対流の精度はいいと思います。
実際の加熱処理の際は庫内にシリカゲルを入れて吸湿する必要があります。
先述のようにシリカゲルを入れるスペースがFANの後ろにありますが、私はシリカゲルケースをフィラメントスプールの穴に入れて使っています。
これなら再利用可能なシリカゲルを使うことができ、加熱処理後そのままドライボックスとしても使えます。(密閉性はそれほど高いものではありませんが)
ちなみにシリカゲルケースはいつもこちらのものを使っています。
参考 Silica Gel/Desiccant Canister for Filament SpoolsThingiverse継ぎ手パーツを作りました!
eBOX Liteにはチューブとチューブガイドパーツが付属しています。
この付属のもので1ヶ月ほど使ってきましたが(通常時フィラメントケースとしても使っていました)、1.75mmフィラメントを使う場合、付属の太いチューブでは取り回しが非常にしにくく・・・
4mmサイズのPTFEチューブを取り付けることも出来ますが、スポスポと抜けてこれまた使いにくく・・・
という事で継ぎ手パーツを作りました。
これはSunlu S1フィラメントドライヤーでPTFEチューブを取り付けエクストルーダーまでのガイドとして普段使っていますが非常に使いやすいので、これをベースにeBOX Lite用にサイズを修正し作り直してみました。
10mmのクイック継ぎ手を取り付け4mmのPTFEチューブを固定することが出来ます。
以下、ThingiverseのSunlu S1用ページに追記しました。
標準で付属するものが使いにくい場合、試してみて下さい。
【追記】フィラメントドライヤーの効果を確かめてみる!
フィラメントドライヤーの使用ででどれくらいの効果があるか確かめてみました。
半端に余ったフィラメントで半年ほど部屋に放置されていたPLAフィラメントを使いました。
フィラメントドライヤーでの加熱処理前後での違いはこのようになりました。
以下写真はeBOX Lite使用前後の写真となります。(PLAフィラメント使用)
写真左では吸湿による影響が大きく出ていますね!
糸引きやフィラメントの排出(フロー)が安定していないことがよく分かります。
4時間ほどフィラメントドライヤーを使い加熱処理させたものが写真右のものとなります。
ほぼ正常な状態で出力できているのが分かります。
フィラメントドライヤーの効果は高いようですね!
Sunlu S1でもほぼ同様な結果となりました。
加熱性能には関しては、Sunlu S1もeBOX Liteも大きな差は感じられませんでした。
最後に!
eSUN eBOXの新バージョンとして登場したeBOX Liteのご紹介でした。
1ヶ月以上使っていますが、加熱処理が必要なフィラメントは既にSunlu S1を使って処理していたことから実際にはまだ数回ほどしか使えていません。
S1と比較すると本記事でご紹介したようにFANが搭載され熱循環は良くなっているとは思いますが、正直なところ性能的には大きな差は感じられませんでした。
フィラメントドライヤーとしてはS1と同等、大きな差は使っていて感じませんでした。
Sunlu S1とほぼ同価格帯となっており安価で購入出来るので、あとは操作面や動作時のFANの騒音、サイズで選ぶ形となりそうです。
PLAやPLA+、PETG、TPUでの比較となり、ABSなど他の素材ではまた変わってくるかもしれません。
ただ加熱処理中のFANの音はそこそこ大きなものとなるので、このあたりFANレスで無音なSunlu S1との選定ポイントになるかと思います。
加熱処理しながら3Dプリンタを動かして造形するとなると全く気になるレベルの音ではないのですが・・・
またローラの回転は非常にいいので、フィラメントをBOXに入れたまま運用するのもいいかと思います。
中にシリカゲルを入れておけばある程度の除湿効果はあります。
DIYして作ったドライボックスでは2ヶ月ほど湿度を20%以下に保てるので、流石にこのような専用のドライボックスにはかないませんが、それでも上記のシリカゲルケースを入れておけば3週間位は庫内の湿度を20%前後に保てるようでした。
フィラメントドライヤーとしてフードドライヤーを使われている方も多いようですが、おそらく加熱性能に関してはそちらの方が良さそうではありますがサイズが大きく、またフィラメントを入れてそのまま運用と考えるとこのような形状のドライボックスの方が適していそうです。
という事で新しく登場したeBOX Liteのご紹介でした。
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