Raspberry Pi 10周年を記念して作られたRP2040搭載の名刺サイズ電子ペーパーバッジ『Badger 2040』用のシンプルな透明ケースを作ってみました。
Badger 2040はそのほぼ全面を埋める2.9インチサイズのEインクディスプレイが使われていて基板(PCB)が非常にカッコいいのが特徴で、名刺サイズとコンパクトな形状なので名刺基板としてやネームタグとしてオシャレに利用出来るガジェットです。
Pimoroniのサイトでは3Dプリントして使えるBadger 2040用のハードケースやバンパーなど多数紹介されているのですが、カッコいいPCBに仕上がっているのでケースで隠してしまうのは少し勿体ない、ということで私はミニスタンドを製作して使っていない時は作業デスクに飾って楽しんでいます。
そして今回は、JLCPCBの3Dプリントサービスとなる『JLC3DP』を利用してBadger 2040用の透明レジンケースを製作した話となります。
電子工作で自作基板の製作も始めたことからPCB用のケース作成に関していろいろと模索していたのですが、JLCPCBの3Dプリントサービスは非常に安価で品質も良いことが分かったので最近よく利用するようになりました。
自宅で製作するには光造形機が必要となり後処理といった面倒な作業も必要となってくるレジンを扱った造形物の製造も綺麗に仕上げてくれます。
製作したBadger 2040用の透明レジンケースとともにJLCPCBの3Dプリントサービスについて見ていきたいと思います。
目次
JLC3DPを利用してPimoroni Badger2040の透明レジンケースを作ってみました!
JLCPCBと言えば基板(PCB)の製作で利用されている方多いと思います。
他のPCB製造メーカーと比べ基板製造料金が格段に安いのにも関わらず品質も良く問題なく使えるので趣味用途では大変重宝しています!
JLCPCBではPCBの製作以外にCNCや3Dプリントサービスも行っています。
3Dプリントサービスは最近よく利用するようになったのですが、こちらも安価で利用することができ非常に綺麗に仕上げてくれます。
PCB用のケース作成に関して模索していたところだったのでテスト的にBadger 2040用の透明ケースをモデリングして、スポンサーになって頂いているJLCPCB(JLC3DP)に製造して頂きました。
JLC3DPのSLA(Resin)について!
Badger 2040用のケースは前々から作ってみたいと思っていたのですが、カッコいいPCBが隠れてしまうのは少し残念で製作するなら透明レジン一択だろうなと考えており、普段私が自宅で使用しているFDM機では難しくなることから製作を断念していました。
JLCPCBの3Dプリントサービスとなる「JLC3DP」では多くのマテリアル(材料)が用意されています。
SLA(レジン)を扱ったものも製造する事ができ、透明レジン(8001レジン)もその一つとなります。
レジンを扱った造形は光造形機が必要となり、またレジンで出力された造形物は表面処理といった後処理も必要となり自宅で行うには面倒な作業となってきます。
JLC3DPではこのような後処理も標準で処理してもらうことができ、非常に綺麗に仕上げてくれます。
JLC3DPでのレジンを使った造形物の一例を少し見ていきます。
こちらは初めてJLC3DPを利用して製作した自作キーパッドで使う透明レジンを使ったスペーサーパーツです。
当初アクリルパネルで製作する予定でしたが、微妙な寸法の厚みや凝った形状のものはアクリルパネルでの製作では難しくなることから透明レジンを使った3Dプリントパーツとして作成しました。
結果的に大成功、納得いく自作キーパッドとして完成させることが出来ました!
サンディングといった表面仕上げが標準となっているので、サポート等の積層跡が全く無く非常にクリアな仕上がりになります。
この時が初めての利用だったのですが、3Dプリントパーツでこれだけのものが作れるのは驚きで、私がJLCPCBの3Dプリントサービスにハマるきっかけとなりました。
またこちらはファミコンのコントローラーの形状を忠実に再現した透明ケースです。(後日記事追記しておきます)
こちらも驚くほど綺麗な仕上がりになっています!
寸法精度も良いので、実物の赤ケースとの組み合わせでも利用する事が出来ます。
これまでJLC3DPでSLA(レジン)関係のものは一通り試してみましたが、他のマテリアルも同様に表面仕上げにより積層跡が全く無く綺麗に処理された状態で手元に届きます。(下写真はBlack Resin)
JLCPCBの3Dプリントサービス(JLC3DP)は比較的安価で利用することが出来るので、自宅の3Dプリンタを使い試作を重ねて最終的に完成品として仕上げる際に利用するようになりました。
JLC3DPのサービスを利用した記事はこちらにまとめているので合わせて見て頂ければと思います。
何度かJLC3DPのサービスを利用してみて、これまで製作してみたかったけど自宅の環境では難しくなるものの製作も可能だということが分かったので、今回Badger 2040用の透明レジンケースを製作してみることにしました。
Badger 2040用ケースのCADモデリング
以前Badger 2040用のスタンドを製作した際にPCB本体の形状も正確にモデリングしていたので、ケースの作成は比較的簡単に出来ました。
壁厚を何ミリで作るかですが、普段の感覚ではPCBのサイズや形状からおそらく2mm(または3mm)くらいで設計を開始していると思います。
壁厚を2mmほど確保していれば、PLAといったマテリアルでも十分な強度を確保することが出来ると思います。
しかし名刺サイズのPCBで壁厚が2mmでは少し分厚い印象のケースになってしまいそうです。
透明ケースとなると尚更です!
最終的に上面・底面の厚みを2mmとし、側面は1mmで設計することにしました。(一部0.8mmの箇所があります)
JLC3DPの『3Dプリント設計ガイドライン』によると、このサイズの造形物では壁厚を1.0mm~1.5mmほど取ることが推奨されているようです。
参考 3D Printing Design GuidelineJLC3DP1mm厚では強度が少し心配だったので厚み1.5mmと2.0mmで設計したものも発注したのですが、強度的に1mm厚でも全く問題なく薄くてPCBのデザインを損なうことのない綺麗なケースに仕上がりました。
PCBを挟み込む構成となるため上蓋と下蓋の2パーツ構成とし、ケースの固定方法にネオジム磁石を使う方法も考えたのですが、今回はインサートナットを使うことにしました。
SLAレジンを使ったインサートナットの熱圧入を以前試したことがあるのですが、レジンで作った造形物はFDMのフィラメントみたいに溶けてくれないためその圧入に結構苦労した経験があります。
本来は挿入するナットの外寸と同じサイズのホールを用意し接着剤を封入して固定するのが望ましくなるようです。
SLAのパーツって、フィラメントみたいに溶けないというを事った・・・😅 pic.twitter.com/kTMKpPIDsy
— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) May 12, 2024
一応熱で柔らかくはなるので、インサートナットを封入するホールのサイズを上手く調整するとフィラメントのように溶けてはくれませんが綺麗に熱圧入することは出来ました。
今回使用したM2のインサートナットは、外形3.5mm×高さ5.0mm(実測値3.45×5.0mm )のものを使いこれに合わせてホールのサイズを作りました。
FDMで作る際はホール径は少し小さくし溶けたフィラメントがナット下部に溜まるように少し深くモデリングするのですが、レジンでは溶けることがないので上記サイズで設計しています。
結果的に綺麗にナットを圧入する事が出来ました。(後述します)
以上を意識してケースのモデリングを進めていきました。
JLC3DPに発注する
JLC3DPへの発注方法も少し見ておきます。
と言っても3Dプリントパーツの発注は簡単です!
JLC3DPのトップページから製作した3Dプリントデータ(STLデータが推奨されているようです)をドラッグ&ドロップしてアップロードします。
透明レジンでの発注なので、SLA(Resin)の中にある[8001レジン]を選択します。
8001レジンは[透明(Transparent)]と[半透明(Translucent)]を選択することが出来るのですが、[半透明(Translucent)]は表面仕上げ前のものとなりサンドペーパーが付属していて自分で好みに後処理を行う必要があります。
以前半透明を試したことがあるのですが、綺麗に仕上げるのに非常に手間がかかりました。
今回透明なケースを作りたいので[透明(Transparent)]を選択します。
サンディングといった表面仕上げをJLCPCBがやってくれるので、完全にクリアに仕上げたい場合はコストは同じで手間がかからずおすすめです!
今回製作した透明ケース(上蓋・下蓋)の製造料金は5.65ドル、配送方法にOCS Expressを選択してトータル7.7ドルほどの料金となりました。
表面仕上げを含めこのお値段なので非常にお安いですね!
今回製作したBadger 2040用のCADデータ(STL)をダウンロード出来るようにしておきます。
興味ある方は使ってみて下さい!
Badger2040 Case(STL)
またデータのアップロード後、データに不備等がないかのレビューが行われ問題がなければ決済へと進みます。
今回製作したCADデータは設計上どうしてもJLC3DPのガイドラインにある壁厚を確保できない部分があり、データアップロード後に機械的にこのような警告が出ましたが製造は問題なく出来ました。
JLC3DPの基本的な発注方法に関しては、こちらの記事で詳しく紹介しているので合わせて見て頂ければと思います。
3Dプリントパーツの到着
データのアップロード後レビューを受け本発注へと進み製造が開始されるのですが、製造開始から4日で完了し翌日発送され、配送方法はOCS Expressを選択して5日のトータル10日ほどで手元に届きました。
3Dプリントサービスはマテリアルによっては結構時間がかかるものもあるのですが、PCBの発注同様に安価で到着が早いのはJLCPCBのサービスの特徴ですね!
非常に綺麗な仕上がりに驚きました。
CADのレンダリング画像より実物の方が良いと感じたのは初めてです。
JLC3DPで作った3Dプリントパーツ、やばいレベルの仕上がりで来よったわ🤩
ほんと綺麗!
ビックリするわ!提供:@JLC3DP @JLCPCB @JLCPCB_Japan pic.twitter.com/q9yiqUfKdq
— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) May 15, 2024
早速インサートナットを封入してみました。
ナットの外寸を取っておりナット周りの壁厚も薄いので手で押し込んで挿入することも出来ますが、インサートナット用の小手先を使い熱圧入してみました。
SLAレジンの熱圧入はあまり推奨されていないようですが、熱で多少柔らかくなってくれるので接着剤等を使わなくても綺麗に封入する事ができ抜けることもありませんでした。
Badger 2040用の透明レジンケースの完成です!
壁厚が1mmと薄くクリアな仕上がりなので、PCBのデザインを損なうこともなく非常にいい仕上がりとなりました。
最後に!
FDM機のフィラメントを使った造形は自宅の3Dプリンタで出来るのでいつも活用しているのですが、しかしレジンを扱うものとなると光造形機が必要となり後処理などのことを考えると面倒となることからこれまでレジンを扱ったものの製作を考えたことがなかったのですが、JLC3DPでは安価な料金で試すことが出来るのでオススメです!
個人的にJLC3DPのサービスに最近ハマっており、まだブログではご紹介出来ていませんがかなり利用させて頂いています。
自宅に数台3Dプリンタ(FDM)があるのでこれまでこのような外注のサービスを利用することはないかな?とスルーしていたのですが・・・
国内の同サービスと違いJLC3DPはかなり安価な価格で利用できるサービスなので、自宅の3Dプリンタで試作を重ね最終的な完成品やプロトタイプは発注して綺麗に仕上げる・・・、普段3Dプリンタを利用されている方ほど便利に使えるサービスではないでしょうかね?
ほんとオススメです!
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