電子工作でPCBの製作を始めて早いものでもうすぐ2年ほどが経ちます。
これまではブレッドボードでのテストやユニバーサル基板を使ったプロトタイプの製作までだったものが、自作基板の製作を始めたことによりイメージしていたものを形にする事が出来る、電子工作で出来ることの幅も大きく広がってきたように感じます。
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基板(PCB)の製作では実装するパーツによりその実装方法や使用する道具なども変わってきます。


スルーホールパーツを使った基板では通常のはんだゴテを使った手はんだでの実装になりますが、表面実装(SMD)パーツを扱った基板ではヒートガンを使ったり、また加熱したホットプレートに基板を乗せ基板全体を加熱させながらはんだペーストを溶かして実装を行うリフローでの実装がメインとなってきます。
1206や0805サイズくらいまでのパーツならまだ手はんだでの実装も可能ですが、パーツ数が多い場合やさらに小さなパッケージサイズのパーツやICチップを扱う場合リフローによる実装は効率が良く綺麗に仕上げることが出来ます。
これまでのPCB製作を振り返ってみて、リフローによる実装で使う道具としてリフロー装置(リフロー炉)は必須となるアイテムとなります。
私はこれまで『MHP30』というリフロー装置を使っていました。(今もMHP50と併用して使っています)
PCBの製作をやられている方ならご存じの方も多いと思う、Miniwareさんのミニリフロー装置となり定番アイテムだと思います。

そしてMHP30の後継機となる『MHP50』が新たに登場しました!
MHP50ではMHP30からホットプレートサイズが大きくなりカラーディスプレイ採用により見やすく操作性もアップ、そして[Reflow(リフローモード)]が新たに追加されたりと使いやすさが更に向上しています。
PD電源から使えるミニリフロー装置としてのコンパクトなサイズ感や加熱性能・安全設計など良い部分は全てMHP30から引き継がれ、さらに上記機能が追加された非常に使いやすい製品となっています。
目次
ミニリフロー装置『Miniware MHP50』を使ってみる!
ミニリフロー装置として非常にメジャー&定番製品となるMHP30の後継機として今年初め(2024年1月)に登場したのが『MHP50』です。
ホットプレートサイズが大きくなりましたが、それでも片手に収まるサイズ感です!
販売開始前にMiniwarさんにご提供して頂き、現在メインのリフロー装置として使っています。
普段のPCBリフロー作業ではマストアイテムとなり便利に使っているのですが、すっかりレビューするのを忘れていました。
コンパクトで非常に便利なミニリフロー装置なので、MHP30と比較しながら使い勝手等をレビューしていきたいと思います。(ほんと便利です!)
外観チェック
まずMHP50の本体外観を簡単に見ておきます。
付属品はマニュアル(英語)と100Wに対応したType-C to Type-Cケーブルが付属しています。
PD電源モジュールが付属したモデルもあるようですが、電源は65W以上のものであれば使えるので手持ちのものや別途用意した方がコスパはいいと思います。
MHP30からホットプレートサイズが大きく(50mm×50mm)なりましたが、重心の位置が低くなるように背丈が低く設計されているので安定感が増しています。
そのためMHP30で付いていたアウトリガー的なものは排除されています。
大きなカラーディスプレイが採用され、操作系のスイッチが背面から前面に変更されたので操作性が大きくアップしています。
また電源供給は、PD電源(最大100W)に加えDCジャック(19V~24V 最大150W)からも供給を行うことが出来るようになっています。
ホットプレートを取り外し交換が可能になっているのはMHP30と同様ですが、下部に冷却用のファンが搭載されています。
MHP50では[リフローモード]という新たなモードが追加されたため、その冷却用途だと思われます。
MHP30から引き継がれた便利な機能
MHP30が優秀なのは、なんといってもそのサイズ感と安全設計です。
これらは全てMHP50にも引き継がれています。
- コンパクトなサイズ感でPD電源からの駆動が可能(最大100W)
- LED点灯色により視覚的に現在温度が分かり、傾き検知で強制加熱ストップの安全設計
①コンパクトなサイズ感でPD電源からの駆動が可能(最大100W)
まずMHPシリーズ(MHP30 / MHP50)共通で言えるのが、そのコンパクトなサイズ感です。
MHP50のホットプレートサイズは50mm×50mmとなっておりMHP30の30mm×30mmからサイズアップしています。
ホットプレートサイズは大きくなっていますが、それでも他の大きなリフロー装置やリフローオーブンを使う場合よりも基板を加熱出来る範囲はかなり小さい印象を受けます。
私の場合マイコン関係の基板を作ることが多いのですが、このような用途では基板サイズは大抵の場合Arduino Unoサイズくらいまでに収まるものがほとんどです。
製作する基板サイズや用途に関わってくる部分ではありますが、私のように使用用途が合致すれば非常に便利なミニリフロー装置だと思います。
そしてMHP50はPD電源からの駆動が可能となっています。(MHP30の65Wから100Wにアップしています。)
PD電源からType-Cケーブル1本で加熱&リフロー作業でのパーツ実装が行えるのが非常に便利です!
リフローでの実装作業では、はんだペーストやフラックス、ピンセット、PCBスタンド、多くの表面実装パーツ、さらにリフロー後にブリッジ等の修正を行うためにはんだゴテもスタンバイさせていたりと・・・作業スペースがかなり逼迫してしまう場面が多いと思います。
ミニサイズでPD電源からType-Cケーブル1本で作業できるので、このコンパクトさは非常に便利になることが多いと思います。
②LED点灯色により視覚的に現在温度が分かり、傾き検知で強制加熱ストップ の安全設計
他の安価なリフロー装置と比べMHPシリーズは安全に配慮した設計がされているのが大きなポイントです!
リフロー作業ではホットプレートの温度が200℃以上と非常に高温になります。
リフロー作業中はディスプレイに表示される温度を確認しながら作業を行うので問題は起きにくいのですが、リフローでの事故は作業後に起こることが多いと思います。
パーツ実装後は加熱されたホットプレートは自然冷却により温度を下げていきます。(MHP50には冷却ファンも搭載されています)
200℃以上に加熱されたホットプレートの自然冷却にはかなりの時間がかかります。
リフロー作業後にブリッジ部分の修正といった他の作業をやっている時に誤ってホットプレートに触れて火傷をしたり、またホットプレートに何か接触してしまい焦がしてしまったという経験はリフローをやられている方なら1度は経験したことがあると思います。
MHP50(MHP30も同様)ではホットプレート下部に設置されたLEDの点灯色により現在のホットプレート温度が視覚的に分かりやすくなっています。
自然冷却をしている際にうっかり触ってしまうといったことも起こりにくく、この安全設計はいいですね!
また加熱中に本体の傾斜が一定角以上になると傾き検知により加熱が強制的にストップする機能も付いています。(デフォルトでは30℃に設定されています)
高温に加熱して使う製品なのでこのような安全設計は必須となり、これら機能は全てMHP30から引き継がれています。
さらに加熱が一定時間以上続くと(設定により変更可能)自動的に加熱をストップさせたり、オートパワーオフ(シャットダウン)機能も引き継がれています。
MHP50でアップデートされた部分や追加された機能
次にMHP50でアップデートされた部分や追加された機能を見ていきます。
- ホットプレートサイズが大きくなった(50mm×50mm)
- 操作スイッチを前面に配置&カラーディスプレイで操作性がアップ
- PD100W or DC150Wの電源の選択が可能
- リフローモードの搭載
①ホットプレートサイズが大きくなった(50mm×50mm)
MHP50ではホットプレートサイズがMHP30の30mm×30mmから50mm×50mmと大きくなっています。
Arduino Unoを乗せると少し足りませんが、これくらいのサイズであれば基板を動かし加熱させる部分を移動させながらリフローを行えば問題なく実装する事が出来ます。
MHP30からホットプレートサイズが大きくなっているのでMHP50ではボディーの高さが低く設計されています。
重心の位置が低くなりMHP30よりも本体の安定感が増しています。
そしてこれはMHP30でも作ったのですが、このような治具スタンドを作っておくとある程度大きな基板サイズのリフローにも対応する事が出来るので大変便利です!

このような変則的なリフローにも対応する事が出来ます。
スタンドを2連で使い自作キーボードといった結構大きなサイズの基板実装でも使ってみましたが・・・
加熱部分を移動させながらと結構時間はかかりましたが、実装自体は難なく出来てしまいました。
これは便利です!
②操作スイッチを前面に配置&カラーディスプレイで操作性がアップ
MHP30では本体背面に配置されていた操作スイッチがMHP50では前面に変更されています。
操作系のスイッチが背面にあるというMHP30では唯一使いにくい部分ではあったので、リフロー温度や時間の確認、モードの切替など作業中の操作性がアップしています。
また大きくサイズアップしたカラーディスプレイが使われ作業中の項目確認もしやすくなっています。
③PD100W or DC150Wの電源の選択が可能
MHP30の最大65W PD入力からMHP50では最大100W PDに対応しています。(詳しくは後述します)
またMHP50ではDC19V~24V(最大150W)電源の利用も可能となっています。
④リフローモードの搭載
MHP50では新たに[Reflow(リフローモード)]が追加されました。
通常の設定した一定温度でホットプレートを加熱する[Heat(加熱モード)]とは違い、このモードではMHP50にあらかじめ設定しておいた3相曲線に従って加熱を行います。
予備加熱(プリヒート)やその時間、また本加熱&時間といったリフロー温度プロファイル曲線をあらかじめ設定しておいて、それに従い加熱させるモードとなります。
今日はMHP50でライトな基板実装!
すごく地味だけどやってる本人はめちゃ楽しいのよ😆新しいはんだペーストの確認も兼ねて・・・ pic.twitter.com/UUu0RfGBHV
— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) October 8, 2024
リフローモードが追加されたため、MHP30では無かった冷却ファンがホットプレート下部に設置されています。
運用は65W以上 100W PD電源での利用が理想
MHP50には、PD電源(20V 最大100W)またはDC(19V~24V 最大150W)からの駆動と2種類の電源オプションが用意されています。
PD電源とType-Cケーブルで接続、または直流安定化電源やACアダプターなどとDCジャックで接続する方法です。
おそらくType-Cケーブルを差し込みPD電源を利用する方法が一般的になるかと思います。
使用するPD電源は電力が大きいほどホットプレートを加熱するスピードがアップします。
MHP50を半年ほど利用してみてストレスなく運用するには65W以上、理想は100WのPD電源を利用するのが望ましくなりそうです。
50W前後の電力供給では加熱が非常に遅く実運用ではかなりストレスになります。(加熱に5分以上かかります)
65W PD電源を利用すれば、設定温度(220℃)までホットプレートを加熱するまでに3分半ほどで完了します。
MHP30では最大65Wの入力に対して2分弱で加熱が完了しますが、MHP50ではホットプレートサイズが大きくなっているので同じ入力電源では倍近く加熱時間がかかってしまいます。
100W PD電源を使えば2分弱と非常に早くなるので、MHP50では100W電源を利用し運用するのが理想的だと思います。
また最近ではミニサイズの安定化電源を使われている方も多いと思います。
MHP50はDC電源からの駆動も可能なので、このような使い方も出来ますね!

そしてリフロー作業では、はんだの煙が結構出るのでMHP50とはんだ吸煙機を同時に使い作業をしています。
ここでPD電源側のネゴシエーション(電力の再分配)の問題が出てきます。
PD電源モジュールは使用する機器を増やすと電力の再分配を行う際に一瞬電力供給がストップする製品が多くあります。
MHP50といったリフロー装置を使う場合、再起動がかかってしまうのでこれでは面倒となってきます。
PD電源はいくつか持っており200Wや300Wといった大きな出力スペックがある電源を使う場合は問題になることはあまりありませんが、100WクラスのPD電源では供給が一瞬切れて面倒になる事が多いので、私がMHP50を使ったリフロー作業の際に使っているPD電源モジュールを1つご紹介しておきます。
こちらは安価ですが140Wの出力があり、電源ポートが独立しているので便利に使えるPD電源モジュールです。
[PD 100W]ポートにMHP50を接続し、他の[PD 20W]ポートや[QC3.0]ポートは内部回路が独立しているので、はんだ吸煙機といった他の機器と同時に使ってもMHP50の電源供給をストップすることなく作業することができ便利なので使っています。
MHP50にはPD電源モジュールが付属するモデルも販売されているようですが、このような電源を別途自分で用意する方がコスパはいいと思います。(他の用途でも使えるので!)
ちなみにはんだ吸煙機は自作したこちらを使っています。
3Dプリントパーツを使えば安価で作ることができ、12cmファンでの吸煙力は申し分なく愛用しています。(ブログ記事のものから改良しPD電源12Vで駆動出来るようにしています)

最後に!
MHP30と比較しながら後継機となるMHP50を見ていきました。
便利な機能や安全設計などは全てMHP30から引き継がれ、ホットプレートのサイズアップや機能・使い勝手が向上した順当なアップデートになっていると思います。
少し記事が長くなってしまい使用方法や設定方法など本記事ではカットしましたが、直感的に使えるのでこれから購入される方も特に問題ないかと思います。
ユーザーマニュアルや最新ファームウェア情報は以下メーカーサイトから確認出来るので、購入の検討や設定・使用方法の確認などで参考になると思います。
参考 MINIWARE Products Resource Downloade-Design















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