電子工作で基板(PCB)の製作を始めて1年ほどが経ったのですが、自分がイメージする自作基板が作れるようになってくると電子工作で出来ることの幅も広がってきたように感じます。
最近では中国(主に深セン)に工場を持つPCB製造メーカーが増え、個人レベルでの発注でも非常に安価な価格で基板を製作することが出来るようになっています。
この1年、自作基板の製作を楽しんできたのですが、あまりの安さと製造の早さからユニバーサル基板などを使ったプロトタイプの製作すら面倒に感じるようになってしまったくらいです!
電子工作をやられている方で自作基板の製作にも興味がある方は、これはもう試してみないと損ですよね!
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そして今回は、初めてPCBWayに基板を発注した話となります。
PCBWayの利用は初めてだったので他社との発注方法の違いなどがありましたが、概算での見積もりを出しエンジニアのチェックを受け正式な価格が決定するという発注の流れは基板発注の際に思わぬ追加料金がかかってしまったなどのトラブルも起きにくく、PCB製作にまだ不慣れな方でも安心して発注することが出来ると思います。
それでは、PCBWayでの基本的な基板発注方法について見ていきたいと思います。
目次
【PCBWay】ユーザー登録から基板発注までの手順
近年、中国に製造工場を持つPCB製造メーカーが増えてきました。
PCBWayやJLCPCB、FusionPCB、Elecrowといった製造メーカーは日本で利用されている方も多いと思います。
一般的な用途で使用する基板では数百円程度から基板を製造してもらうことが出来ます。
電子工作で自作基板の製作を始めて1年ほどが経ちある程度の事は理解出来てきたので、今回初めての利用となるPCBWayに基板を発注してみることにしました。
PCBWayさんからはもうかなり前から何度もオファーを頂いていたのですが・・・他社との比較など、PCB製作に関してある程度自分の中で理解出来てきたので今回利用させて頂きました。
今回発注した基板
PCBWayの利用は今回初めてとなるため、標準的な設計?で進めたこちらの基板をテスト的に発注しました。
ESP32-S3-WROOM-01を使った自作開発ボードです。
基板サイズは52mm×53mmとなっています。
この基板の発注を例にPCBWayでの基本的な基板発注の流れを見ていきたいと思います。
最終的な価格決定までの流れ(事前チェック)
PCBWayでの基板発注は事前チェックが2段階あります。
JLCPCBといった他の製造メーカーとは少し発注方法(確認方法)が異なる部分です。
- 概算の見積もり価格を確認する!
- エンジニアがデータをチェックし最終的な価格が決定される!
①概算の見積もり価格を確認する!
PCBWayトップページからまず概算の見積もりをするのですが、サイトは日本語にも対応しているのでこちらでは日本語表記にして説明を進めていきます。
トップページの[Language]から日本語を選択することが出来ます。
まず基板サイズや数量、加工オプションといった発注項目の入力や発送方法(DHLやOCSなど)を選択し概算の見積もりを出します。
この時点では、まだ基板データ(ガーバーファイル)は必要ありません!
当記事はPCBWayでの利用が初めての方や基板製作初心者の方がご覧になっていると思います。
特殊な設計や加工など行わない標準的な基板の製作ではおそらく概算の見積もり価格から最終的な価格が変わることはあまりないと思うので、PCBWayを使った場合の製造コストの確認に使うだけでもいいかもしれません!
多くの発注項目があり基板製作が初めてだという方は結構迷われるかもしれませんが、一般的な用途の基板ではデフォルト設定から変更する必要はないと思います。
もちろんお分かりになる方は用途等に応じて選択して下さい!
こちらでは最低限選択すべき項目だけ見ておきます。
基板寸法 & 枚数の選択
まず基板サイズの選択です。
標準サイズとなる100mm×100mm以内に収まる基板寸法であれば格安の5ドルで製造することが出来ます。
今回発注した基板のサイズは52mm×53mmなのでこれを入力します。
基板枚数は5枚からの製造となります。
必要な枚数入力します。
今回発注した基板では1辺が100mm以内に収まっているので、基板5枚を5ドルで製造してもらうことが出来ます。
レジスト(基板色)の選択
基板の色(レジスト色)を選択します。
これはお好みで選択して下さい。
選択するレジスト色によっては追加料金がかかる場合があるようです。(つや消し色)
シルク色の選択
基板にプリントするテキスト(R1/C1など)や挿入した画像などのシルクプリントの色を指定します。
他のPCB製造メーカーでは標準となる白色のみの選択しか出来ない事が多いのですが、PCBWayでは黒色や黄色を選択することも出来るようです。(オプション料金がかかります)
製品番号を削除するか否か(Remove product No)
基板製造時に他の基板と区別するために「製品番号」というものが基板の任意の位置にシルクプリントされます。
PCBWayのサイトを見る限り、はんだ付け時にこの番号が隠れるようにICの下に配置されるように計らわれているようです。(Noを選択した場合)
基板デザイン的に不要なシルクプリントが入ってしまうことを嫌う場合があると思います!
有料(1.5ドル)となりますが、[Yes(extra+$1.5)]を選択することによりこれを削除することも出来ます。
また目立たない位置に指定して入れることも出来ます。
発注する基板によっては、パーツ直下などうまく隠せない場合があると思います。
基板設計時にシルクで[WayWayWay]とテキストを入れておき、
こちらは無料となります。
概算の見積もり価格の確認
以上が最低限選択しておいた方がいい項目です。
標準的な基板の発注であれば、他の項目はデフォルトで設定されている項目を選択しておけば問題ないと思います。
今回発注した基板ではこのような選択となりました。
製品番号を削除するオプション(1.5ドル追加されます)のみを選択し、他は全てデフォルト項目を選択しています。
またメタルマスク(ステンシル)も基板と一緒に発注しました。
一通り入力が完了したら[計算する]をクリックすると入力した内容(発注仕様)に従った基板製造にかかる概算見積もり価格が表示されます。
製造時間を短縮したい場合は特急料金を支払うオプションも用意されています。
配送方法もDHLやFedEx、OCSといった多くの配送業者から選択することが出来ます。
今回OCSを選択しました。
OCSはANAグループの高速輸送サービスです。
更に安い配送方法もありますが、価格と到着日数のバランスが一番良い配送方法だと思います。
以上選択出来れば、基板製造料金と送料を合わせたトータルコストの概算を確認することが出来ます。
基板製造料金5ドルにオプション料金1.5ドルが加算されPCBコストは6.5ドル、ステンシル料金が10ドル、OCSでの送料が15.65ドルのトータル32.15ドルが今回発注した基板での概算見積もり価格となりました。
問題がなければ[カートに追加]をクリックして発注(レビュー)に進みます。
ユーザー登録
[カートに追加]へと進むと、未ログインの場合はログイン画面が表示されます。この先の基板データのレビューや最終的な価格の確認&発注にはユーザー登録が必要となっています。
実際にPCBWayでの基板発注をお考えの方は登録して下さい!
ユーザー登録はメールアドレスとパスワードのみを登録するだけです。
ユーザー登録が完了すると5ドル割り引きのクーポンが付与されるので、初回発注時に利用できます。
ここから基板データ(ガーバーファイル)のレビューや発注に進んでいくので、この時点で配送先住所も登録しておきました。
英語表記(ローマ字)での入力となります。
こんな感じですね!
②エンジニアがデータをチェックし最終的な価格が決定される!
[カートへ進む]からログイン後、ガーバーファイルを添付する画面になります。[ガーバーファイルを追加]から用意している基板データをアップロードします。
アップロードが完了したら[今すぐ注文する]をクリックするとPCBWayのエンジニアによるデータチェックが開始され不備等がないか、また発注に問題がなければ最終的な価格が決定されます。
ガーバーファイルをアップロード後、[レビュー中]となりPCBWayでデータのチェックが開始されます。
今回、基板とステンシルの発注なので[2レビュー中]と表示されています。
レビューには少し時間がかかります。
他の基板も含め何度かレビューを出したのですが、営業時間内のお昼から夕方くらいまでなら10分ほど、夜間でも1時間ほどでレビューは完了するようでした。
レビューが完了すると[支払い待ち]になります。
登録したメールアドレスにもレビュー完了通知のメールが届きます。
レビュー完了後に最終価格が表示されるのですが、今回発注した基板では概算見積もり価格6.5ドルよりも大きく料金が加算され56.41ドルとなっていました。
何が原因で見積もり価格よりも最終価格がアップしていたのか分からなかったので、画面右下にあるチャットでオペレーターさんに聞いてみました。
どうやら基板設計時のビアの穴径が小さすぎたため、製造は出来るけど特殊な加工になるのでオプション料金が加算されているというものでした。(画像も添付してくれました)
支払い前にこのような確認が出来るのはありがたいですね。
一旦この発注はキャンセルし、基板データを修正後同様の手順で再度アップロードしてチェックしてもらったところ、概算見積もりと同価格になりました。
レビュー完了後、製造料金を確認し問題がなければ[支払い]へと進み発注します。
ガーバーファイル(基板データ)について
話が少し前後しますが、基板発注の際に必要となるガーバーファイル(基板データ)について少し見ておきます。
初めて基板を発注される方は気になる項目だと思います。
私はKiCadを使って基板設計をしていますが、基板製造メーカーに発注する際に必要となってくるレイヤーについて書いておきます。
KiCadを使って基板設計完了後、発注する際に必要となるガーバーファイルを出力するには、[ファイル]→[プロット]へと進みます。
[出力フォーマット]は[ガーバー]を選択し、[出力ディレクトリ]を選びます。分かりやすいようにこちらでは[Plot]というフォルダを作り、ここにデータを出力するようにしました。
[含めるレイヤー]は以下7レイヤー(または9レイヤー)を選択します。
これがPCB製造メーカーに発注する際に必要なデータとなります。
- F.Cu / B.Cu 銅レイヤー
- (F.Paste / B.Paste はんだペーストレイヤー)
- F.Silkscreen / B.Silkscreen シルクレイヤー
- F.Mask / B.Mask レジスト・マスクレイヤー
- Edge.Cuts 基板外形レイヤー
今回ステンシルも一緒に発注したので[F.Paste / B.Paste]が必要となり上記9レイヤー分のデータを出力しましたが、ステンシルを発注しない場合も入れておいて問題ありません!
基板とステンシルを一緒に発注する際に忘れてしまうので私はいつも入れています。
9レイヤーが選択できたら[プロット]をクリックしてファイルを出力します。
指定したフォルダに各レイヤーファイルが生成されます。
次に[ドリルファイルを生成]をクリックしてドリルファイルも出力しておきます。
指定したフォルダに各レイヤーデータとドリルファイルが生成されます。
PCB製造メーカーに基板製造を依頼する場合、これら生成したデータ全てをzip形式に圧縮したファイルを使います。
これで基板発注の際に必要なガーバーファイルの完成です。
KiCadのこれらレイヤーに゙関して詳しくはこちらの記事も参考にして下さい!

発注
データのレビューが完了し基板データに問題がなく最終的な価格にも問題がなければ、[チェックアウトに進む]から発注へと進みます。
今回の発注では上記基板に加えもう1枚追加してまとめて発注しました。
配送先住所や支払い方法、配送業者を選択して発注となります。
PCBWayは海外メーカーですが、PayPalやクレジットカード、銀行振込など各種支払い方法にも対応しています。
配送料金は配送地域により多少料金が異なってくるようですが、先述のようにOCSあたりが価格と配送スピードのバランスが取れた選択だと思います。
また、割り引きクーポンコードをお持ちならここで選択しておきます。
初回ユーザー登録時に5ドルオフクーポンが付与されています。
今回の発注はPCBWayさんのオファーを頂いて発注した形となり、アカウント残高として担当者様に請求額分を付与して頂きました。
ありがとうございました。
以上問題なければ[注文する]をクリックし発注を行います。
支払いが完了すれば、あとは製造&発送を待つだけです。
製造工程の確認
基板の製造工程に入ると現在の進捗状況を確認することが出来ます。
[詳細を見る]から各工程でどのような製造が行われているのかWebで見ることも出来るので、PCB製作では参考になると思います!今回の発注では、ほぼデフォルト項目を選択した2基板とともにステンシルも一緒に発注しました。
ステンシルの製作は標準的な緑レジストを選択した基板よりも製造日数がかかるのですが、発注から2日で全ての製造が完了しました。
非常に早いですね!
基板の発送
発注から2日で全ての製造が完了し、その当日に出荷されました。
出荷後数時間で配送状況を確認することが出来ます。
今回OCSでの発注なので、OCSの貨物追跡リンクが追加されています。
基板到着
基板発注から2日で製造が完了しその当日に出荷、OCSで5日で手元に届きました。
発注からトータルで7日で基板が手元に届いたことになります。
早いですね!
ステンシルは製造時に出たMDF材をリサイクルしたものに厳重に梱包されていました。
これはありがたいです!
そして基板ですが、こちらは有料オプションは使わず「製品番号」が基板裏に入るように指定して発注した基板です。
基板設計時にシルクで[WayWayWay]とテキスト文字を入れ、発注項目の[Remove product No]で[Specify a location]を選択すれば無料で入る位置を指定することが出来ます。
標準的なサイズの基板(100mm×100mm以内)であればPCBWayでは5ドルで製造することができ製品番号を削除するオプションの1.5ドルは少し割高に感じてしまいます。
パーツの下など実装後見えなくなる場所や目立たない位置とかに指定しておけば追加料金がかからないのでお得です!
もちろん製品番号の削除オプション[Yes(extra+$1.5)]を選択して追加料金(1.5ドル)を払えば、これを完全に削除することも出来ます。
基板デザイン的に余計なシルク文字を入れたくない場合やパーツ等で隠せないといった場合に有効です!(下記基板では削除オプションを付けました)
今回発注した2枚の基板ではテスト的に製品番号を削除するオプションやステンシルも一緒に発注したので料金はその分高くなっていますが、PCBWayでは基本1基板5ドルから製作を行うことができ配送も早く、そして発注時の思わぬ追加料金の発生なども事前にチェック出来るので、初めて自作基板を製作&発注される方にも分かりやすくていいと思います!
最後に!
どのPCB製造メーカーを使っても標準的な基板の発注であれば追加料金が加算されてしまうことはあまりないと思いますが、PCBWayでは事前チェックが2段階あり初めて利用する場合や基板発注にまだ慣れていない方でも安心なのがいいですね!
私の場合、今回初めての発注で想定より大きな追加料金が加算されてしまうというケースにいきなりあたってしまったのですが、レビューまでは無料で行ってもらえるので一旦キャンセルしてデータを作り直し再度レビューを行うといった事もでき、そのあたりは他のPCB製造メーカーよりも分かりやすくていいと思います。
まだ基板設計が終わっていない段階でもガーバーファイルを用意する必要がなく、ある程度製作する基板のイメージが出来ていたら概算の見積もりが出来るのも便利ですね。
初めてPCBWayを利用してみようとお考えの方の参考になればと思います。
そして今回製作した基板に関しては、また別記事で詳しくご紹介出来ればと思っています。
















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