ついにJLCPCBでUVマルチカラーシルク基板の発注が出来るようになりました!
サービス開始前の昨年にサンプルとしてカラーシルクプリントされたPCBルーラーを頂いたのですが、高精細で非常に綺麗なプリントだったのでサービス開始を楽しみにしていました。
2024年4月1日にサービスが正式に開始されJLCPCBで誰でも低価格で発注することが出来るようになりました。
こちらはサービス開始直前に先行体験として試させて頂いたカラーシルク基板となります。
EasyEDAでのプレビューと発注の際のJLCPCBサイトのプレビューに少し不具合?があり実際にどのような仕上がりになるのか分からなかったので、今回は以前製作した基板に既存の画像を貼り付けるなどしてテスト的に発注した基板となります。
JLCPCBでのUVマルチカラープリント基板の発注は非常に簡単で、製造料金もサービス開始前に予想していたものとは違い非常に安価なので驚きました!
今回はJLCPCBでカラーシルクプリント基板を発注する手順を見ていきたいと思います。
JLCPCBでUVマルチカラーシルク基板の製作を行ってみました!
JLCは中国の深センにある基板製造メーカーで、グローバルではJLCPCBとなり日本で利用されている方も多いと思います。
JLCとJLCPCBでは提供されているサービスが一部異なるようで、JLCの方では既にカラーシルクプリントサービスは開始されていましたがJLCPCBの方でも正式にサービスが開始されました。
カラーシルク基板の発注自体は非常に簡単なんですが、KiCadといった基板設計を行うCADソフト側がカラーシルクに対応していないため、基板データ(ガーバーファイル)をEasyEDAを使って作成する必要がります。
EasyEDAはJLCPCB(JLC)が提供しているブラウザ上で基板設計が出来るCADソフトで基本無料で使うことが出来ます。
EasyEDA上で基板を設計し、部品のコンポーネントのシルク色をカラーにしたりリファレンスや文字の色を指定したり、また画像を貼り付けてカラーPCBとして仕上げていく形になります。
カラーシルクプリントサービスは現在、基板色(レジスト色)は白色に限定され、その白レジスト上にUVインクを利用してカラープリントしているようです。
耐熱性も高いようで、リフローでのパーツ実装も通常通り行うことができます。
カラーシルク基板を作る際の制約
JLCPCBでカラーシルクPCBを製作する際にはいくつか制約があります!
今後変更される可能性もありますが、現状での制約はこのようになっています。
- EasyEDAを使って基板データ(ガーバーファイル)を作成する必要がある
- 2層基板のみ
- 基板厚は1.6mm
- 白レジスト限定
- 金メッキ加工(ENIG)
- パネライズ(面付け)は非対応(現状1枚のみカラープリントされる)
EasyEDAを使ってガーバーファイルを出力する必要がある
先述の通り基板設計用のCADソフト側がカラーシルク基板の設計に対応していないため(対応しているCADソフトもあるのかな?)、JLCPCBでカラーシルク基板を発注するにはEasyEDAを使い基板を設計しカラー指定を行い基板データを出力する必要があります。(KiCadのデータをインポートすることも可能)
2層基板 / 白レジスト限定 / 金メッキ加工(ENIG)
カラーシルクプリントサービスは、1.6mm厚の2層基板に限定されるようです。
発注時に1.6mm厚以外も選択できるようですが、結構高額になります!
また基板色は白レジストに限定され、表面加工は金メッキ加工(ENIG)となります。
パネライズ(面付け)に関しては、発注は出来るようですが現状1基板のみカラー出力されるようです。
EasyEDAを使いカラー基板を設計する
カラーシルク基板をJLCPCBに発注する場合、EasyEDAで基板を設計しガーバーファイルを出力する必要があります。
普段EasyEDAを使って基板設計を行っている方なら簡単な作業になると思いますが、私はPCBの製作を始めてまだ1年ほどとなり普段KiCadを使って基板設計を行っています。
EasyEDAはOSHWLabというサイトで他の方が公開している基板データをプレビューして見ることくらいでしかまだ使ったことがなく、慣れないCADソフトを使った設計は非常に時間がかかってしまいます。
初めてEasyEDAを使ってみた。
コレ作るのに30分以上かかっとるよ!
慣れって大事😅 pic.twitter.com/wPWJeYlrIt— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) March 15, 2024
私のように普段KiCadをメインに基板設計をされている方多いと思いますが・・・ご安心下さい、既にKiCadを使い設計完了しているデータをEasyEDAにインポートすることも出来ます。
今回私がテスト的に発注したカラーPCBはKiCadで設計したデータをEasyEDAにインポートし、そこからシルク文字のカラーを変えたり画像を挿入する形でカラー基板データとして作成しました。
普段EasyEDAをメインで使っている方は操作方法等慣れているかと思いますが、KiCadをメインで使っている方はEasyEDAを使った基板設計は慣れるまで時間がかかると思うので、あらかじめKiCadで完成させておいたデータをEasyEDAにインポートしてからカラー指定等を行いデータを完成させるという方法も使えるので、慣れないCADソフトを使ってカラー用の基板を設計する必要もなくいいかと思います。
まずEasyEDAについて簡単に見ておきます。
EasyEDAとは?
EasyEDAはブラウザ上で基板設計が出来るJLCPCBと同じグループ企業が提供しているサービスです。
LCSCといった同グループ会社で電子パーツを購入される方も多いようなので、ご存じの方も多いと思います。
基本無料で使える基板設計ツールとなります。
EasyEDA アカウントの作成
EasyEDAは作成した基板データを公開する事もできOSHWLabで他の方が公開している基板データを見ることが多いのですが、今回初めてEasyEDAのアカウントを作ってみました。
と言っても作り方は簡単です。
JLCPCB関連のグループサービスは全て共通のアカウントになっているようです。
普段基板の発注でJLCPCBのアカウントをお持ちなら自動的に紐付けられるようですね!
ダウンロード版もあるようですが、こちらではWeb版で進めていきます。
[Design online]を選択すると、エディションの選択になります。
[Std Edition]は日本語化されているようで使いやすいのかな?とも思いましたが、表示された内容を翻訳するとパッドの数などかなり限定されるようです!
そしてカラープリント基板データを作成するには、[Pro Edition]での作成が必須となるので、こちらを選択してアカウントを作成して下さい!
KiCadで作成済みのデータをEasyEDAにインポートする
普段EasyEDAを使っている方は操作方法や基板設計に関しては問題ないと思うのでこちらは飛ばして下さい。
KiCadを使われている方でEasyEDAの設計は慣れなくてどうも・・・という方はあらかじめKiCadで完成させておいたデータをEasyEDAにインポートすることが出来ます。
KiCadで作成した回路図データ(◯◯.kicad_sch)と基板データ(◯◯.kicad_pcb)、この2つのファイルを圧縮したzipファイルを用意しておきます。
EasyEDAを立ち上げ、[File]→[Import]→[KiCad]へと進みます。
テキストがズレる場合があるなどの警告が表示されますが、[confirm]で次に進みます。
先ほど作成したKiCadの回路図エディタファイルと基板エディタファイルを圧縮したzipファイルを選択しインポートします。
これでKiCadで作成した回路図&基板データのインポートが出来ました。
ダブルクリックでそれぞれタブで開くことが出来ます。
基板のテキストの位置が若干ズレている箇所やビス穴(Mounting_hole)のフットプリントが対応していないようなので少し修正しましたが、KiCadからインポートしたデータ自体に大きな問題はないようでした。
DRCでエラー箇所がないかチェックをし、問題なければカラー基板としてここからシルク文字の色を変更したり画像を挿入したりしていきます。
カラーシルクスクリーン印刷機能をオンにする
基板データが出来たので、ここからカラー基板として手を加えていきます。
EasyEDAのPCB設定でカラーシルク機能を有効にする必要があります!
カラーシルク機能を有効にするには[Using JLC color silkscreen technology]にチェックを入れておく必要があります。
おそらくデフォルトでこの項目にはチェックが入っていたと思いますが、確認しておいて下さい!
EasyEDAの設定はこれだけです!
画像を挿入する(JPEG/PNG)
以上EasyEDA上で基板設計が完了していることを前提で、ここからカラー基板として仕上げていきます。
まず画像の挿入です。
シルクレイヤーに貼り付け(挿入)することが出来る画像は、JPEGとPNGに対応しています。
[Place]から[Image]を選択し貼り付けたい画像を選びます。
[Place Origin…]にチェックを入れ、[Confirm]をクリックすると基板エディタ上で好きな場所に配置することが出来ます。
貼り付ける面は、Layerから基板表面(Top Silkscreen Layer)または基板裏面(Bottom Silkscreen Layer)を選択します。
画像サイズを調整してお好みの位置に貼り付ければ完了です!
プレビュー画面でカラーPCBのイメージを確認する
トップメニューにある[2D]または[3D]ボタンをクリックすると基板のプレビューが出来ます。
通常は単色のレジスト・シルク色でのプレビューとなっていますが、[Colorful Silk Screen]を選択すると上記設定したカラー表示に切り替わります。
いい感じに配置出来ていますね!
コンポーネントのシルクスクリーン色を設定する
画像以外にコンポーネントのシルクスクリーン色を設定することも出来ます。
カラーPCBでは、テキストなどの色は初期状態で黒色が指定されています。
コンポーネントを選択し、右側のプロパティパネルにある[Silk Screen Color]から色を指定することが出来ます。
プレビューで確認すると、デフォルトの黒色から変更されているのが分かります。
シルクスクリーンの色を設定する
パーツのリファレンス文字(R1/C2など)や任意に入れたテキストなどの色を個別に設定することも出来ます。
同様に右側のプロパティパネルから設定できます。
基板データ(ガーバーファイルの出力)
EasyEDA上でカラー基板の作成が出来たので、JLCPCBに発注するための基板データ(ガーバーファイル)の出力です。
ガーバーファイルの出力はトップメニューの[G]ボタンをクリックすると出力できます。
その際に[Silkscreen]の項目にチェックを入れカラーシルクプリントのエクスポートを選択しておきます。
次にJLCPCBでは発注した基板にパーツを実装してもらうSMTサービスがありますが、今回私は基板のみの発注だったので[I Got it,Continue]を選択しました。
最後にDRC(デザインルールチェック)をするかを聞かれます。
今回KiCadからインポートした基板データはJLCPCBのデザインルールに従い作成したものでKiCadでのDRCでエラーが無かったので問題ないと思いますが・・・
これで基板データが出力されます。
出力されたガーバーファイルをJLCPCBのサイトにアップロードすればカラーPCBとして発注することが出来ます。
生成されたガーバーファイル(zip)を見てみると、カラーシルクスクリーン用の製造ファイルがあるのが確認できます!
JLCPCBでカラーシルク基板を発注する
先ほどEasyEDAで出力したガーバーファイルをJLCPCBのサイトに通常手順でアップロードします。
カラーシルク基板の指定は、[詳細オプション(Advanced Options)]の中にある[EasyEDA multi-color silkscreen]を選択する必要があります!
カラーシルク基板は、レジスト(基板色)は白に限定され、また表面加工もENIGに限定されます。
これらを選択すると[EasyEDA multi-color silkscreen]の項目も選択することが出来ます。
これでカラーシルク基板として発注することが出来ます。
通常基板では表面処理にENIGを選択するとそれだけで2500円程のオプション料金がかかってしまいますが、カラーシルクPCBではデフォルトでENIG加工となっているのでその分の料金は発生せず非常にお安い料金で製造出来るようなので驚きです!
これが今回発注したカラーシルクPCBのトータルコストです。
プレビューもちゃんとカラー表示になっていますが・・・
バグのようなものはまだ残っているようです!
発注時はこのプレビュー表示がバグなのかEasyEDAでのデータ作成方法に不備があったのか分からなかったので、今回発注した基板では既存の画像を使ってテスト的に発注したのですが・・・
CAD通りのPCBに仕上がってきたのでデータとしては問題ないようでした!
次回は予定していたカラーPCBを製作してみたいと思います。
また、JLCPCBの基本的な基板発注方法に関してはこちらの記事でまとめているのであわせて見て頂ければと思います。
基板の到着
配送方法はOCS Expressを選択し発注から4日で製造が完了、トータル10日で基板が手元に届きました。
今回カラーではない別基板もいくつか一緒に発注していたのですが、カラーシルクPCBは通常基板よりもプラス2日ほど製造に時間がかかるようでした!
JLCPCBでは配送料金も他社と比べ非常に安いのですが、OCS(OCS NEP / OCS Express)を選択すれば10cm×10cm以内に収まる標準サイズの基板であれば配送も早く格安でカラーシルクPCBを製作することが出来ますね!
発注時にJLCPCBサイトで見れるプレビュー画面に結構バグ?がありテスト基板で試してみましたが、特に問題なく綺麗にプリントされていました!
通常基板ではテキストのサイズは0.8mmまでなら小さくても綺麗にプリント出来るのですが、カラーシルクプリントでは解像度が上がっている?分さらに小さなフォントサイズでもプリント出来るか0.7mmに落としてテストしてみたのですが・・・
さすがにここまで小さくすると見にくいようでした!
今後このサイズの基板(30mm×30mm)を製作する際にフォントサイズを一段落とせれば設計もしやすくなるのにな、とは考えていたのですがね!
今回テスト的に製作したカラーシルク基板ではパーツを実装するとほぼ見えなくなってしまうのが少し残念です・・・
以前製作した基板をベースに使っているので動作に関しては問題ないと思いますが、リフローによるパーツ実装の様子などまた後ほど追記しておきます。
最後に!
UVカラーシルクプリントされた実基板を見たことがなく、発注の際にEasyEDAのプレビューとJLCPCBのサイトでのプレビューに大きな相違などがあったことから、今回は以前KiCadで製作した基板データを使いEasyEDAで既存の画像データを挿入してテスト的に発注してみました。
カラーシルクPCB用に他のテスト基板も作っていたのですが、上記のようにプレビューの相違点や画像の抜け部分などどうなるのかよく分からなかったので今回はあり物の画像を使わせて頂きテスト基板として発注してみました。(個人利用なのでご了承下さい!)
今回発注したカラーPCBデータは公開できませんが、ベースで使った基板はこちらの記事で紹介しているので興味ある方は合わせて見て頂ければと思います。
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サービス開始日時など事前にお話を伺っていたのでカラー基板用のデータを作るためにEasyEDAの練習も始めたのですが、普段KiCadをメインで使われている方は慣れないうちは一旦KiCadで作っておいてデータをEasyEDAにインポートしてから文字のカラー指定や画像を挿入するなどしてデータを作成する方が慣れないCADソフトを使うよりも作業はしやすいと思います。
JLCPCBでは非常に安価な価格でカラーシルクPCBの製作が出来るので、自作基板製作の幅も広がりアイデア次第で面白いものが作れそうですね!
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