11月25日発売 書籍『Arduinoと3Dプリンタでロボットを作ろう』を出させて頂きました!

【JLCPCB / JLC3DP】JLC3DPの金属3DプリントSLM(Metal)でヒートガン用耐熱ボードを作ってみました!

自作基板製作でヒートガンを使う機会が何かと多いのですが、前々から気になっていたことがあります。

ヒートガンは主に表面実装部品(SMD)を基板に実装する際に使っているのですが、高温の熱風を基板や電子パーツに当てるためその熱対策は必須となります!

実装するパーツの種類や数などにより変わってきますが、基本的に300℃以上ある熱風を比較的長い時間当て続けて作業することが多くなるため、それに対する熱対策をしておかないと作業しづらい場面が多々出てきます。

ヒートガンを使った作業では、はんだ用のシリコンマットを使って作業を行っているのですが・・・

一般的によくはんだ作業で使われるシリコン製耐熱マットは500℃ほどの耐熱性能があるためヒートガンの熱風でも溶けることはまずないのですが、しかし困ったことに高温の熱風を当て続けると膨張して変形してしまいます。

これは冷めると元の形状に戻ってくれるのですが、これでは基板が浮いてしまいヒートガンを使った作業が非常にやりにくくなってしまいます。

そんな事から最近では少し厚みのあるリサイクルMDF板なども使っていたのですが、こちらもある程度の厚みがないと反ってしまい、そしてヒートガンの熱風により焦げてしまいその臭いが・・・

リフローとは違い特定の部分にピンポイントで当て続けるヒートガンの高温の熱風って思っている以上に強力なんですよね!

ヒートガンを使った作業で毎回面倒に感じていた部分となり、前々から何か良い対策がないものかと考えていました。

そこでヒートガン用の耐熱ボードをJLC3DPで扱われている金属3Dプリントを利用して製作してみることにしました!

JLC3DPの金属3DプリントSLM(Metal)を利用してヒートガン用耐熱ボードを製作!

JLCPCBの3DプリントサービスとなるJLC3DPでは、一般的によく使われるPLAやレジンといった樹脂系マテリアルなど以外に金属製3Dプリントパーツの製造を行うことも出来ます。

以前はんだゴテのコテ先(T-12チップ)を収納するためのスタンドを製作したことがあります。
はんだ作業中、用途に合ったチップに交換する際に高温状態のものをそのまま収納出来るように製作したものです。

コテ台に装着出来るように設計し、JLC3DPの金属3Dプリントパーツで製造しました。
耐熱性に優れた[SLM(Metal) 316L]というステンレス製のものとなり、便利なので普段のはんだ作業で愛用しています!

JLCPCB/JLC3DPで初めて金属3Dプリントパーツを作ってみました!

金属3Dプリントパーツの製造は他のマテリアルと比べるとかなり高額になるのですが、JLC3DPでは比較的安価な価格で提供されていることから今回製作したヒートガン用の耐熱ボードの製作でも利用してみることにしました。

CADのイメージ

JLC3DPでは趣味用途でも手が出しやすい比較的安価な価格で金属3Dプリントパーツの製造が提供されているのですが、それでも他のマテリアル(材料)と比べるとサイズによっては結構な金額になってしまいます。

3Dプリントパーツの製造では、基本的に造形物の体積に比例して価格が決定されます。
単位体積あたりの価格が他のマテリアルと比べ高いので、極力サイズを抑えて製作したいところです!

普段使っているシリコン製耐熱マットの上に置いて作業することを想定し、130mm×130mm程度のサイズ感のものだとコンパクトで使いやすそうです。
これくらいのサイズがあれば、私が普段趣味で製作している自作基板であればサイズ的に十分カバーすることが出来ます。

あとは厚みをどれくらいにするか?
金属3Dプリントパーツでは、上記サイズのものでも厚みによっては結構な重量感になると思います。
極力数mm程度の厚みで抑えたいところです。

以前製作したモデルを使いヒートガンの熱風をピンポイントで当てた時にどれくらいの熱が伝わるのか簡易テストをしてみました。

2.5mm厚部分に熱電対素子を挟み込み底面温度がどれくらいになるか・・・
ヒートガンを通常使用する設定よりも高い温度&風量で、ピンポイントで熱風を当てて計測してみました。

これくらいの温度上昇ならシリコン製耐熱マットの上に金属3Dプリントしたボードをベタ置きしても、通常使用時ではこれだけ長い時間当て続けることはないと思うので問題はなさそうです。

形状はPCB面に合うように1.6mm高の出っ張り(基板押さえ用)を両端に付け、2mm厚で設計しました。
長時間ピンポイントでヒートガンの熱風を当て続けても、下にシリコン製のマットがあれば問題なさそうです。

そして四隅にM2ビス穴も付けました。
数mm程度のスペーサーを取り付けて嵩上げすれば、底面に耐熱マット等を敷かずこのボード単体でも使えると思います。

以上、簡単ではありますがCADで形状が作れたのでJLC3DPに発注しました。

CADモデル(STL)をダウンロード出来るようにしておきます。
何かの参考になればと思います。

JLC3DPに発注

JLC3DPへの発注に関しても少し見ておきます。
JLC3DPへの発注は非常に簡単です!

CADデータをJLC3DPのサイトにドラッグ&ドロップしてアップロードし、製造するマテリアルを選択するだけです。

金属3Dプリントは、[SLM(Metal)]を選択し材料に[316L(ステンレス)]を選択します。
あとは[商品概要]を選択しカートに入れて決済すれば発注は完了です!

製造データのレビューが行われ、問題がなければ製造が開始されます。

JLC3DPの基本的な発注方法はこちらの記事で詳しくまとめています。
あわせて見て頂ければと思います。

【JLCPCB / JLC3DP】JLCPCBの3Dプリントサービス(JLC3DP)を利用してみました。発注手順などをご紹介!

今回レビューの段階で確認メールが届きました。
形状上部品の変形や反りが発生するリスクがありますよ、といった内容のものでした。

一応JLC3DPでの製造基準値は満たしている予定でしたが・・・

JLC3DPの『3Dプリント設計ガイドライン』を見ると、Metal(SLM)の最小壁厚は100mm×100mmで2.0mm、200mm×200mmで2.5mmとあります。
必ずしも満たしている必要はないのですが、130mm×130mm×2mmのサイズで作っていたので、壁厚2mmの部分で引っかかってるのかな?

薄壁で長辺形状のものは3Dプリントでは反りやすいと思うので、あと1~2mm程度厚みを増やそうかとも考えましたが、金属パーツなので結構な重量になってしまいそうです。
また、その分価格も・・・。

少し心配でしたが、『リスクは承知したので製造に進んで下さい』といった旨のメールを返信し、このまま製造してもらうことにしました。

3Dプリントパーツの到着

3Dプリントパーツの製造は、選択するマテリアルによっては製造に結構な時間がかかります。

今回発注した金属3Dプリントパーツは、発注から2週間ほどで手元に届きました!
心配していた反り等もなく、綺麗な仕上がりです!

コンパクトに仕上げましたが、持ってみるとかなりズッシリとした重量があります。
完全に金属の塊って感じです!
こんなのが3Dプリント出来るってすごいですよね!

実際に使ってみる

ヒートガンの高温熱風をピンポイントで当て続けてもかなりカットしてくれるので、シリコン製の耐熱マットとセットで使えばそのままベタ置きで使っても問題なさそうです。

そしてコンパクトなサイズ感にしたので、作業スペースの邪魔にもなりにくいのが良いですね!(このサイズでも結構な重量感です)

これまでのように高温でシリコンマットが反ったりすることがないので、作業は非常にやりやすくなりました!

四隅にM2サイズのビス穴を開けていたので、10mmスペーサーを取り付けて使っています。

これなら底面の熱が直接デスク等に伝わることがないので、単体で使っても問題なさそうです。

【電子工作】初めてのヒートガン(リワークステーション)を買ってみました!1台持っているとはんだ作業で大変重宝します!【RF4 RF-H2】
はんだ付けステーション ヒートガン「RF-H2」1000W
created by Rinker

ただ汚れは少し気になります。
パーツの実装で何度か使ってみたのですが、溶けたはんだペーストやフラックスが付着するとこの汚れが洗ってもなかなか取れない・・・

金属パーツなので洗剤等でサラッと洗い流せるかな?と思っていたのですが、フラックス汚れが付着すると次回実装時に熱を加えると溶けて基板に付着しやすくなってしまいます。
これだけが少し誤算でしたが、ヒートガンを使った作業がこれまでより格段にやりやすくなりました!

そして余談になりますが、Twitterでセラミック製のこのような耐熱ボードがあることを教えて頂きました。

ハニカム形状にホールが空けられたセラミック製の耐熱ボードのようです。

安価で良さそうですね、ありがとうございます!

ただ貫通穴になっているようなので、これだとやはりヒートガンの熱風がそのまま底面に届いてしまい・・・
ある程度の重量がありそうなので下に敷いた耐熱マット等が反りにより浮き上がることはなさそうですが、やはり底面の熱対策は必要となりそうです。

最後に!

イメージ通りの使用感のものが出来たので、ヒートガンを使った作業で便利に使っています。

金属3Dプリントパーツはサイズによっては結構なコストがかかってしまいますが、他のマテリアルでは実現できない耐熱や高強度のものが作れるので、アイデア次第で便利なものや面白いものが作れそうですね。

そしてこのような作業用の治具は、自分の環境に合ったものを自作しておくと便利で作業効率も上がるのがとてもいいですね!

コメントを残す