11月25日発売 書籍『Arduinoと3Dプリンタでロボットを作ろう』を出させて頂きました!

JLCPCB/JLC3DPで初めて金属3Dプリントパーツを作ってみました!

JLCPCBといえば基板(PCB)の製造でお馴染みの中国(深セン)にあるPCB製造メーカーです。
PCBの製作では他社を圧倒する価格で製造してもらうことが出来るので私もよく利用しています。
JLCPCBではPCBの製造以外にも3DプリントやCNC加工といったサービスも展開されています。

最近では3Dプリンターの低価格化も進みFusion360といった3D CADソフトを使いモデリングして個人レベルでも比較的簡単・安価に3Dプリントパーツといったものを製作出来るようになりました。
ほんと便利な時代になったものです!

しかしながら家庭用の3Dプリンタ(価格的に手が出せるもの)で使える材料はPLAやPETGといったプラスチックやレジンといったものに限られてきます。
これら材料を使ったパーツでもある程度の強度は出せるものの、パーツ設計時にさらに高い強度や耐熱性が必要、また質感を出したい場合も出てくると思います。
その選択肢の一つとして金属3Dプリントでパーツを作るという方法があるようです。

JLCPCBの3DプリントサービスとなるJLC3DPでは、プラスチックなどの樹脂系だけでなく金属材料を使った3Dプリントパーツも比較的安価で製造することが出来ます。

高い耐熱性が求められるパーツが必要だったこともあり、今回初めてJLCPCB(JLC3DP)で金属3Dプリントパーツの製作を試させて頂きました。

JLCPCB(JLC3DP)で金属3Dプリントパーツを製作してみる

趣味の電子工作で自作基板を製作する際にはんだゴテを使うことが多いのですが、はんだ作業は実装するパーツなどによりその用途に合ったコテ先に交換して作業を行います。
はんだ作業では、このコテ先を交換するというのが結構ネックになってきます。

300℃以上に加熱されたコテ先を交換する際にそれをどこに置いておくのか!?
製品としてはこのような耐熱素材で作られたコテ先スタンドといったものも販売されています。

そして私の場合、上記のようなコテ先を収納するスタンドが単体のものでは作業スペースの邪魔になることから、はんだゴテ本体のスタンドに取り付けて使えるようにPETGでこのようなホルダー的なものを自宅の3Dプリンタで製作しこれまで使っていました。

PETGはある程度耐熱性はあるものの、はんだゴテの高温ではさすがに簡単に溶けてしまうことからコテ先をチェンジする際はある程度冷めるのを待ってからこのホルダーに装着し交換するといった方法でやっており、はんだ作業ではこのチェンジのタイミングがちょっとしたブレークタイムとなっていました。

JLCPCB(JLC3DP)の3Dプリントサービスで金属プリントパーツの製造も出来ることを知り、上記パーツを金属3Dプリントパーツとして製作することにしました。

作ったもの

こちらがFusion360でモデリングし自宅の3Dプリンタで出力して、もう1年以上使っているものです。

金属3Dプリントでは機械パーツといった複雑な形状のものも高い精度で造形する事が出来るようですが、今回製作したものは非常に簡単な形状のものとなります。
初めての金属3Dプリントパーツの発注だったので、これくらいのものからテストも兼ねて作ってみるのはいいかもしれませんね。

そして少し修正を加え今回発注したものがこちらです。

自宅の3Dプリンタで製作しこれまで使っていたものはコテ台の高さに合わせて作り内部が完全に閉じた状態となっていたのですが、今回金属3Dプリントパーツで製作するものは高温に熱せられたコテ先をそのまま直で差し込んで使うことを想定しているため、冷却しやすいように少し高さを低くしてコテの底部が露出する形状にしています。

3Dプリントパーツはその体積により製造料金が決まり、金属プリントは他の材料より高額になるので無駄な部分を省くことにより料金もお安く出来ます。

ちなみに、白光のT12シリーズ(またはその互換サイズ)のコテ先が使えるはんだステーションを使い、gootのはんだこて台(ST27)で使えるように上記パーツは設計しています。

この組み合わせで使える今回製作したコテ先ホルダーのデータをダウンロード出来るようにしておきます。
興味ある方は使ってみて下さい!

データを入稿・発注する

それではJLC3DPで金属3Dプリントパーツを発注する手順です。

JLCPCBのサイトにアクセスし、[3Dプリント]をクリックします。

[3Dプリント(お見積り)]から必要事項を選択し発注への流れとなります。

[3Dファイルの追加]に製造するデータをドラッグ&ドロップしてデータをアップロードします。

MEMO
アップロードするデータは、STL(推奨)/STP/STEP/OBJに対応しています。
造形物のサイズと選択しているマテリアル(材料)から自動的に概算価格が表示されます。

今回製造するのは金属プリントなので、[SLM(Metal)]を選択します。

MEMO
2024年9月現在、SLM(Metal)で選択出来る材料および色は[316L][ステンレス]の選択のみとなっています!

あとは[数量]と[商品概要]を選択し[カートに保存]から[安全な決済]へと進み仮発注を行います。

決済とありますがこのあとJLC3DPのエンジニアによるデータチェック(レビュー)が行われた後に正式な価格が決定されるため、この時点ではまだ料金の支払いは発生しないので安心して進んで下さい!
またキャンセルも可能なので、送料を含めた最終価格を確認したい場合にも利用できます。

ここからJLC3DPのエンジニアによるデータのレビューが始まります。
製造データに不備等が無いか?(不備があればメールで連絡があります。)
また問題がなく製造に進める場合は、最終価格及び送料が提示され[支払い]が出来るようになります。(キャンセルも可能です)

JLC3DPのレビューから支払いまでの一連の流れは、こちらの記事で詳しくまとめているのであわせて見て頂き参考にして頂ければと思います。

【JLCPCB / JLC3DP】JLCPCBの3Dプリントサービス(JLC3DP)を利用してみました。発注手順などをご紹介!

データに不備等がある場合は確認メールが届きます

JLC3DPでは金属プリントに関わらず他の材料を選択した場合も入稿したデータに不備等がある場合、その確認メールが届きます。

壁厚やクリアランスの既定値といった基本的なガイドラインはこちらのページに記載されています。
設計の際に参考になると思います。

参考 3D Printing Design GuidelineJLC3DP

確認メールは基本的に上記ガイドラインの既定値に達していない場合に、製造は出来るけどヒビ割れ・変形・破損等のリスクがありますよといった内容の確認がほとんどとなります。

上記ガイドラインにある既定値を全て満たした状態で設計出来ない場合の方がこれまでの経験では多く、あくまで確実に造形出来るという目安となります。

今回発注したデータもこのような確認メールが来ました。

As shown below, the wall thickness of those indicate red area are too thin, which has a high risk of loss, deformation ,crack, or damage during the printing process.
Could you please confirm if the risks are acceptable for you?

If not, could you please kindly increase it to be at least 1.5mm to proceed? 2.0mm will be better.Then we will activate the ‘ replace file’ button for you.
Your early reply will be highly appreciated !

Best Regards

今回初めての金属プリントだったのでテストも兼ねてフィレット・面取り・テキストの刻みを入れてみたのですが、テキスト部分の溝の壁厚が薄すぎる(1.0mmで設計しています)ため変形や破損のリスクがあるというものでした。

3Dプリントのガイドラインによると、今回製作したサイズ(約62×20×30mm)のSLM(Metal)での造形物では溝の深さ(壁厚)は1.5mm以上が既定値となっているようです。

上記レビュー後の確認メールでは、1.0mmから1.5mmに増やすか、さらにクリアランスを2.0mm取った方が安全ですよという確認内容でした。

あくまで既定値なので今後のテストも兼ね逆にもう少し攻めてみようかとも考えましたが、今回は壁厚1.0mmのままで問題ないよとメールを返信し発注を行いましたが、届いた造形物は特に問題ありませんでした!

パーツの到着

配送方法にOCS Expressを選択し10日ほどで届きました。
SLM(Metal)の製造時間は72時間となっていますが、今回120時間かかる他の材料で製作したパーツも一緒に同梱で発注していました。
おそらく単体だともう少し到着は早いと思います。

届いた実物ですが、表面は少しザラザラした手触りで小さい造形物ですがかなりズッシリとくる重さです。
さすが金属プリントパーツですね!

表面は非常に綺麗に見えますが、手で触ってみると若干の凹凸や積層跡が感じられます。

面取りやエッジ部分はしっかりと立っており造形品質はかなり良さそうです。

全体的に寸法精度も良く、CAD寸法より最大で約0.1mmほど大きく(太く)なっている箇所がある程度でした。

他のマテリアルでは、例えばレジン系で言えばサンディング等の後処理もあり最大で約0.2mmほど小さくなりますが、SLM(Metal)では収縮等起こりにくく寸法精度はかなり高い印象を受けました。

最後に!

金属3Dプリントパーツは機械設計パーツといった高い強度や耐熱性が求められるもので本来主に使われるものだと思いますが、JLC3DPでは比較的安価な価格で製造してもらうことが出来るので、今回私が製作したようなちょっとしたものを作る目的でも気軽に試せると思います。
国内の同サービスを利用するとおそらく軽く数万円という価格になってしまいますからね!

今回ご紹介した金属3Dプリントパーツ製のコテ先ホルダーを製作してから数ヶ月が経ち本記事を書いていますが、かなり便利に使えています!

みなさんもアイデアがあれば利用してみてはいかがでしょうか?
何かの参考になればと思います!

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