JLCPCBでは、FPC基板を比較的安価に製造してもらえるため、これまで何度か試したことがあります。
FPC(Flexible Printed Circuit)とは、いわゆるフレキシブル基板のことで、ポリイミドなどの柔軟なフィルム基材の上に銅配線を形成した、折り曲げ可能なプリント基板です。
一般的なFR-4といったリジッド基板とは異なり、薄くて軽く、狭いスペースへの配線などに適しています。
そのため、スマートフォンやノートPCなどの内部配線や可動部で使用されているのをよく見かけます。
初めてのフレキシブル基板が来たよ🤩
フニャフニャなArduinoくん!
お試しで試させてもらったけど、これ面白い👌#JLCPCB pic.twitter.com/oZ9TfEAfHM— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) January 21, 2024

電子工作用途でも、このようなFFCフラットケーブルを使用する場面も多いと思います。
このようなシンプルなフラットケーブルであれば市販品を利用すれば十分なのですが、自作基板の製作においては、特殊な形状や分岐したものなどが必要になる場面も出てきます。
そこで今回は、テストを兼ねてFPCを使用した自作フラットケーブルを製作してみることにしました!
上写真のようにFFCコネクタで使用するものだと、補強板(スティフナー)を追加して強度や厚みを調整する必要があります。(青色部分が補強板です)
今後製作を予定している基板の事前検証という意味も含め、そしてFPCを使ったフラットケーブルの設計や発注方法の確認も兼ねて、まずは初めての試みとしてシンプルなフラットケーブルを自作してみることにしました。
目次
FPC(フレキシブル基板)を使った自作フラットケーブルの製作!
JLCPCBのFPC基板の製造では、カバーレイ(FR-4基板で使われるソルダーレジストに相当する保護層)として、従来の黄色だけでなく、最近ではブラックやホワイトも選択出来るようになっています。
さらに、透明FPCの製造にも対応しており、デザイン面でも選択肢が広がっています。

これらを活かして、市販品には無い自作フラットケーブルを作ってみたいと思います。
・・・とは言っても、今回はまず設計と発注方法の確認を兼ねたシンプルなものとなります。
現在製作中のこちらのType-C短絡チェッカーでは、市販されている一般的な12ピン 0.5mmピッチのFFCフラットケーブルを使用しています。

動作上は特に問題はありませんが、この市販品を自作したFPCケーブルに置き換えることができれば、より製作コンセプトに沿った仕様に仕上げることができ、また外観的にも統一感のあるものに出来そうです。
・・・ということで、今回テスト的に12ピン・0.5mmピッチのFPCフラットケーブルを自作してみたいと思います。
フットプリントの作成
FPC(またはFFC)フラットケーブルは、ピッチ(0.5mmや1.0mmなど)やピン数、長さなどの組み合わせが非常に多く、用途によって仕様も様々です。
汎用ライブラリにフットプリントがあまり用意されていないため、今後自由に設計出来るようにベースとなるフットプリントを自作しておくことにしました。
今回、12ピン・0.5mmピッチのFPCフラットケーブルを作っていきます。
一般的な12ピン0.5mmピッチのFFCフラットケーブルでは、端子寸法はおおよそ以下のようになっています。(画像引用)
これをもとにフットプリントを作っていきました。
①パッドの作成
まずは1ピン分のパッドを作ります。
コンダクタ幅(Conductor Width)が0.3mm、ストリップ長(Strip Length)が4.0mmとなっています。(今回3mmで設計しています)
- コンダクタ幅(Conductor Width): 各ピン(導体)の銅パターンの横幅を指します
- ストリップ長(Strip Length): 端部で露出させる導体(接点部分)の長さを指します
FPCでは先端のカバーレイを剥がして銅箔を露出させ、この部分がFFCコネクタの接点になります。
②ピッチ配置
作成したパッドを0.5mmピッチで12個並べます。
0.5mmピッチでパッド幅が0.3mmなので、パッド間の距離は0.2mm(0.5mm-0.3mm)ということになります。
③外形(Edge.Cuts)の設定
次に外形線(Edge.Cuts)を配置します。
データシートでは、FPC外形端から最外側パッド中心までの距離(Margin)が0.5mmと指定されています。
つまり、最外パッドの中心から0.5mm外側に外形線を引くということになります。
④ケーブル幅の確認
データシート上のケーブル幅(Width)は、6.5mmとなっています。
計測してみるとこの寸法とぴったりと一致しました。
このパッド配置および基板エッジで問題なさそうです!
⑤パッド周辺のカバーレイを一括開口
現状のパッド配置では、各パッドの上にソルダーマスクがかかっている状態です。
FPCでは、銅配線の上にポリイミド製のカバーレイがラミネートされ、その必要部分を開口加工して端子を露出させます。
今回のような0.5mmピッチ(パッド間距離0.2mm) の細ピッチ設計で、パッド間に細いカバーレイを残そうとすると、
- 加工時に細いカバーレイがちぎれる
- 接着剤がパッド上にはみ出す
- 開口位置ズレによる接触不良が発生する
といったリスクが高くなるようです。
そのためFPCでは、端子部を1ピンずつ個別に開口するのではなく、端子列全体をひとつの大きな窓として一括開口するのが一般的な設計方法となっているようです。
⑥パッド根本のオーバーラップ
パッドの根元(配線との接続部分)を完全に露出させたままにすると、FPCが曲げられた際にその境界部分へ応力が集中しやすくなります。
FPCは薄い銅箔をポリイミド上に形成しているため、曲げ応力が一点に集中すると、パッドの浮きや剥離、断線といったトラブルの原因になります。
そこで、パッドと配線の接続部にはカバーレイを一部オーバーラップ(残す)させる設計を行うようです。
具体的には、パッド側へ約0.2〜0.3mm程度カバーレイを被せることで、銅箔の根元をフィルムと接着剤で押さえ込み、応力を分散させます。
KiCadのプレビュー画面では上手く表示されないようですが、
JLCPCBに発注する際のガーバービューア上では、設計意図通りの形状・レイヤー構成で正しく表示されるのが確認できました。
⑦パッド先端と基板外形エッジにクリアランスを
FPCの外形カット(金型やレーザー)には必ず製造公差(一般に±0.1mm〜0.2mm程度)が生じるため、パッドを基板エッジぴったりに設計すると、ボード外形の僅かな収縮によりカットが内側にズレた際に銅箔が削れてバリが発生し、ショート等の原因になるようです。
JLCPCBの発注画面でカット方法を見るとレーザー切断が既定の方法となっているようで、パッド下のサポートがなくなるのを防ぐために、0.2mm全ての端子を短くするといったことが記載されています。
これは製造データ作成時にJLCPCB側でおそらく自動的にデータ調整をやって頂ける部分だと思いますが、作成したフットプリントでは外形エッジから0.2mm離してパッドを配置しました。
以上でベースとなるフットプリントの作成は完了です!
基板設計
フットプリントが作成できたので、次は基板設計に進みます。
作成したパッドを左右に配置し、Edge.Cutsを接続して外形を作成します。
自作なので任意の長さのケーブルが作れるわけですが、今回150mmで設計しました。
スティフナー(補強板)の追加
今回製作するフラットケーブルは、FFCコネクタでの使用を想定しています。
FPCは非常に薄いため、そのままではコネクタにしっかり固定できません!
そのため、端子部の裏面に補強板(スティフナー)を追加し、強度および厚みを調整する必要があります。(以下市販品写真の青い部分がスティフナーです)
このスティフナーが無いと、FPCは厚みが薄いのでコネクタのロックが効かず固定することが出来ません。
KiCadでのスティフナー設計
KiCadには標準でスティフナー専用レイヤーは用意されていないため、新たにレイヤーを追加しました。
今回は裏面側に配置するため、レイヤー名を[B.Stiffener]としています。
このレイヤー上に、矩形で塗りつぶし形状を作成し、スティフナー領域を定義しました。
また、発注先(JLCPCB)のエンジニアさんが分かりやすいように、材質・厚み・サイズなどの情報をテキストで追記しておきました。
最後にシルク等を追加してオリジナルの自作フラットケーブル基板の完成です!
カバーレイの色はブラックを指定して発注しようと思います。
自作だと、ロゴやテキストなどを自由に配置できたり、カラーも選べるのでいいですね!
JLCPCBに発注
基板データが出来たので、JLCPCBに発注しました。
発注項目も見ておきます。
ガーバーファイルをアップロードし、ベース素材に[フレキシブル]を選択します。
カバーレイの色は、今回ブラックを選択しました。
黒色のフラットケーブルは見たことないので、ちょっと楽しみです!
また、単体でも発注可能ですが、面付けしても大した価格差が無かったので、[JLCPCBによる面付け]を選択し1×11面付けで発注することにしました。
なお、FPC基板の面付け条件は、通常のFR-4基板とは若干異なるようです!
この点については別記事で詳しくまとめていますので、そちらを参考にして下さい。

端子部はエッジコネクタ扱いとなるので、[金端子/カードエッジコネクタ]に[Yes]を選択。
FPC単体とスティフナーを合わせた仕上がりの厚みは、0.3mmに設定しました。
FFCコネクタ側のデータシートを見ると、0.5mmピッチのコネクタの多くは0.3mmの仕上がり厚みが要求されるようです。
そして、スティフナーは、[厚み0.225mmのポリイミド補強板]を選択しました。
これも先ほどのケーブル側のデータシートを参考に、厚みを選択しました。
以上の設定で発注しました。
FPCフラットケーブルの設計&発注は今回初めての試みとなるため、果たして狙い通りの仕上がりになるのか?
完成品が届くのが楽しみです。
最後に!
今回は、FPC(フレキシブル基板)を使った自作フラットケーブルの設計からJLCPCBへの発注までの流れをまとめてみました。
通常のリジッド基板とは異なり、FPC特有の設計ポイントがいくつもあり、また発注時の設定についても厚みの選択など注意すべき点が多くありました!
現時点ではまだ実物が届いていないため、この記事はいったんここまでとなります。
今回の設計方法や発注設定で、狙い通りの仕上がりになるのか?
そして問題なく使用出来るのか…?
完成基板が手元に届いたら、使用結果も含めて追記したいと思います。



































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