目次
これから始める自作基板。JLCPCBでの基板発注ガイド
はじめに
電子工作を始めると、最初に出会うのが『ブレッドボード』や『ユニバーサル基板』だと思います。
ジャンパーワイヤーを使って接続したり、簡単なはんだ付けで試作回路を組み動作テストなどが行えるので便利です。
これらを使って回路を組むのは便利で楽しいのですが、ある程度の規模になってくると「配線が多すぎてぐちゃぐちゃに!」「どこの接続が間違っているのか分かりにくい」・・・なんてことを感じてくると思います。
また電子工作をやられている方なら、このような経験もみなさんされたことがあると思います。
- ユニバーサル基板で作った回路、はんだ付けをミスってしまい修正が大変だった!
- ジャンパーワイヤーで配線していたら、ショートしていつの間にか動かなくなった!
- 完成はしたけど・・・なんか配線がごちゃごちゃしていて、もっと綺麗に完成させたかった!
そんな時に「自分だけのオリジナルのプリント基板(PCB)が作れたら・・・」 と思ったことはありませんか?
私も趣味で電子工作を始めてから基板製作にも興味を持っていたのですが、
『なんだか難しそう?』
『基板を製造するのに結構なコストがかかりそう?』
そんな漠然としたイメージを持っていたことから、なかなかチャレンジすることが出来ない時期がありました。
学生時代は高専・大学と電子工学を専攻していたのですが、その時の感覚ではプリント基板を外注(特に国内メーカーに発注)すると簡単(小規模)のものでも数万円といった高額な製造料金がかかっていたので、そのようなイメージを持っていたのだと思います。
しかし最近では、初心者の方(私自身初心者です)でも安価で簡単にプリント基板を発注して作れる時代 になっています!
格安で基板を製作する事が出来る基板製造メーカーは、JLCPCBやPCBWay、ElecrowやPCBGOGOといった主に中国の基板製造会社が現在メインとなっているようで、利用されている方も多いと思います。
特にJLCPCBでは他社を圧倒する料金設定となっており、基板の製造以外にも3Dプリントパーツといったものの製造も驚くほど安く製造してもらうことが出来ます。
基板製造で言えば、例えばごく一般的な構成で10cm×10cm以内に収まる基板サイズであれば、送料を入れてもワンコイン(500円)程度で製造してもらうことができ到着も早いのがJLCPCBの最大の魅力になるかと思います!
この価格で1週間~10日前後で基板が届くのであれば、もうユニバーサル基板を使ってチマチマとはんだ付けをやりプロトタイプの製作をするのが面倒になってしまうくらいです!
電子工作という趣味の枠内で自作基板を製作するようになり2年ほどが経ったのですが、これならもっと早く始めていたらよかった・・・なんてことを考える時が多々ありました!
そして初めてJLCPCBで基板を発注した時にまとめた以下記事や他の製作記事を読んで頂いた方から、「ブログ記事を読んで基板製作を始めました!」といったコメントやメールをこれまで多く頂きました。

私自身、基板製作歴2年が経ったこともあり、これから始めてみようとお考えの方の目線で書けることも増えてきたので、本記事ではあらためてこれから基板製作を始めてみようとお考えの方向けに自作基板製作の魅力やJLCPCBを使って基板を発注する方法などをゼロから解説したいと思います。
『自分だけのオリジナル基板を作ってみたい!』とお考えの方にぜひ読んで頂き、まずは1枚作ってみるところから始めてみるきっかけになればと思います!
JLCPCBとは?
電子工作をしていると『自分だけのオリジナル基板を作ってみたい!』と思う瞬間が必ずやって来ると思います。
しかし始めるにあたって、いろんな不安要素も出てきます。
私自身も基板製作を始める2年くらい前はそうだったのですが、
『基板って製造料金が高そう・・・趣味で作るにはコスパが悪いのでは?』
『海外の基板製造メーカーって英語ばかりで注文が難しそう?』
『発注する時の設計データってどうやって作るの?アップロード方法は?』
実はJLCPCBを使えば初心者の方でも簡単&安価に基板を発注し自作基板を製作することが出来ます。
しかも、2ドル(5枚)からという驚きの低価格で数日後には自宅にオリジナル基板が届いてしまいます。
この投稿をInstagramで見る
JLCPCB サービスの特徴
JLCPCBは、中国の大手プリント基板製造メーカーで世界中のエンジニアや電子工作愛好家に利用されています。
特に趣味レベルの少量生産でも低コストで高品質な基板を作れるのが最大の魅力となり他社を圧倒するポイントだと感じます。
電子工作といった趣味用途で製作する基板に十分対応することができ、非常に安価で製造することが出来ます。
これは他社の価格を圧倒していることから、これから初めて基板製作を始めてみようとお考えの方はまずJLCPCBを利用するのがオススメで、おそらくJLCPCB一択となるかと思います。
この2年ほどでJLCPCBを使い製作した基板の数は100を超えていますが、これまでの経験からJLCPCBの特徴を簡単にまとめるとこのようになります。
- 圧倒的な低価格で製造でき、国内メーカーでは考えられないコストパフォーマンス!
- 最短24時間で製造完了。安価なOCS Express(OCS NEP)といった配送方法を選択しても発注から1週間~10日程度で手元に届く!
- ガーバーファイル(基板データ)を用意できれば、JLCPCBのサイトにアップロードするだけで発注が可能
- 2~6層基板に対応し、フルカラー基板や部品実装サービス(PCBA)といったオプションも用意されているので趣味用途では十分!
- 基板以外に3DプリントやCNCといった関連サービスも安価で利用することが出来る!
JLC3DPといった関連サービスも安価で利用できる
プリント基板の製造料金が驚くほど安いというのがJLCPCBの最大の魅力となり特徴でもあるのですが、実は基板製造だけではありません!
同じJLCグループが提供する『JLC3DP』では、3Dプリントパーツの製造やCNC加工といったサービスも展開されており、こちらも低価格で利用することが出来ます。
自作基板を製作するようになると、それに合わせたケースやパネル、エンクロージャーといったものも作りたくなってくると思います。
そこで最近よく利用しているのがJLCPCBの3DプリントサービスとなるJLC3DPです。
自作した基板にさらにこのような自作ケースを作ることが出来れば、製作物の完成度が大きく上がります!


JLC3DP(JLCPCB)ではこのような3Dプリントパーツの製造も他社と比べ非常に安価で製造することが出来るので、製作した基板を収納するケースを作ったりと最近かなりの頻度で利用するようになりました。

このような自作キーボード用のケースを作ったりすることも出来るので、製作物の完成度が大きく上がりますね!

JLCPCBとJLC3DPを組み合わせれば、基板+筐体をまとめて発注&製造することも出来るので、電子工作で作る製作物のクオリティーがグッと上がり既製品のような仕上がりのものを作ることが出来るので趣味としては更に楽しくなって来ると思います!


JLCPCBでの基板発注の手順
少し前置きが長くなってしまいましたが、自作基板製作の楽しさやJLCPCBを利用するメリットなどが伝わったかと思います。
それでは本題となるJLCPCBでの基板発注の手順について進めていきます。
JLCPCBでプリント基板(PCB)を注文する流れはとてもシンプルです!
初めての方でも、 以下の流れでスムーズに基板を発注し製造することが出来ると思います。
- ユーザー登録
- 基板設計データ(ガーバーファイル)を用意する
- JLCPCBのサイトにガーバーファイルをアップロード
- 必要事項を選択
- 発注&決済
- 基板の到着
また、初めてJLCPCBで基板を発注した時に書いたこちらの記事にも発注手順に関して詳しくまとめているので合わせて見て頂ければと思います。

①ユーザー登録
まずユーザー登録です。
JLCPCBでユーザー登録を行っておけば、3DプリントやCNCといった他の関連サービスも同一アカウントで利用することが出来ます。
ユーザー登録は非常に簡単です。
JLCPCBのサイトにアクセスし、右上にある[サインイン(Sign in)]にある[こちらから(Start Here)]をクリックします。
メールアドレスやパスワードを入力してアカウントの登録を行ってもいいのですが、Googleアカウントをお持ちならアカウント連携で作成する事もできこちらの方が簡単で以後ログインする際も便利だと思います。
便利なので私はGoogleアカウントを連携してユーザー登録を行いました!
お好みの方法で登録を行って下さい。
ユーザー登録完了後、初回利用特典クーポンなどいくつかクーポンが発行されます。
マイページから確認してみて下さい!
ユーザー登録が完了したらJLCPCBのサービスを利用することが出来ます。
②基板設計データ(ガーバーファイル)を用意する
JLCPCBに限った話ではありませんが、基板を発注する際には設計した基板データ、いわゆる『ガーバーファイル』というものが必要となります。
このガーバーファイルをJLCPCBのサイトにアップロードして基板を発注することになります。
一般的に基板の設計では、KiCadやEasyEDA、EAGLE、Altium DesignerといったEDAツールを使用します。
本記事ではKiCadを使ってガーバーファイルを出力する方法を見ておきます
KiCadの基本的な使い方や設計方法などはこちらでは詳しくは割愛しますが、既に設計済みの基板を例に進めていきます。
こちらは以前製作した自作Arduino Unoです。
世界にたった一つだけのオリジナルのArduinoなので、使っていてテンションも上がります!
基板の設計が完了したので、発注の際に必要となるガーバーファイルを出力します。

まずここで重要となってくるKiCadのレイヤー構成についても簡単に見ておきます。
KiCadの基板エディターの右側にある[外観マネージャー]には多くのレイヤーが表示されています。
数が多いため初めてKiCadを使って基板設計をする際にどのレイヤーが何を意味しているのかやその役割について迷うかと思います。
また基板を発注する際にガーバーファイルとして出力する必要があるレイヤーはどれなのかも初めてだと結構迷います。
基本的に基板単体で発注する際に必要となるレイヤーは2層基板では、[F.Cu] [B.Cu] [F.Silkscreen] [B.Silkscreen] [F.Mask] [B.Mask] [Edge.Cuts]の7つのレイヤーが必要となります。
初めて基板を発注する際はガーバーファイルの出力で必要なレイヤーがどれなのかよく分からない???となるかもしれませんが、とりあえずこの7つのレイヤーを選択してガーバーファイルを出力しておけば問題ありません。
レイヤー名 | 用途 |
F.Cu | 基板表面の銅箔 |
B.Cu | 基板裏面の銅箔 |
F.Silkscreen | 基板表面のシルク印刷 |
B.Silkscreen | 基板裏面のシルク印刷 |
F.Mask | 基板表面のレジストマスク |
B.Mask | 基板裏面のレジストマスク |
Edge.Cuts | 基板外形(基板形状) |
(F.Paste) | 基板表面のはんだペースト |
(B.Paste) | 裏面のはんだペースト |
KiCadの主なレイヤーとその役割に関しては、こちらの記事で詳しくまとめています。
合わせて見て頂ければと思います。

それでは実際にガーバーファイルを出力してみます。
ガーバーファイルには、製造ファイル(各レイヤー情報)とドリルデータ(穴などの位置)を含める必要があります。
ガーバーファイルの出力は、KiCadの[ファイル]から[プロット]へと進みます。
[出力フォーマット]に[Gerber(ガーバー)]を選択し、[出力ディレクトリー]を選びます。
分かりやすいようにこちらでは[Plot]というフォルダを作り、ここにデータを出力するようにしました。
[含めるレイヤー]は先ほど説明した7つのレイヤーは必ず必要となるので選択しておきます。(ステンシルが必要な場合は9レイヤー)
それ以外の他のレイヤーは基板設計時に任意の目的で使用できる汎用レイヤーとなり基板製造には直接関係ないレイヤーなので選択しても特に問題になることはありませんが、設計過程でのメモ等が入っているとJLCPCBのエンジニアさんがデータチェックをした際に「何か指定が入っているけど?」みたいなやり取りで面倒になったこともあったので、必要ないレイヤーは選択しないのがいいと思います。
基板とステンシルを一緒に発注する際に忘れてしまうので私はいつも入れています。
出力するレイヤーが選択できたら[プロット]をクリックしてファイルを出力します。
他の設定は基本的にKiCadのデフォルトで選択されている上記設定から変更する必要はないと思います。
指定したフォルダに各レイヤーファイルが生成されます。
次に[ドリルファイルを生成…]をクリックしてドリルファイルも出力します。
指定したフォルダに各レイヤーデータとドリルファイルが出力されました。
PCB製造メーカー(本記事ではJLCPCBを利用)に基板製造を依頼する際は、これら生成したデータ全てをzip形式に圧縮したファイルを使います。
これが基板発注の際に必要となるガーバーファイル(基板設計データ)となります。
③JLCPCBのサイトにガーバーファイルをアップロード
発注に必要となるガーバーファイル(zip)の用意が出来たので、JLCPCBで基板を発注する流れを見ていきます。
JLCPCBの発注は非常にシンプルです。
JLCPCBトップページにいき、[ガーバーファイルを追加(Add gerber file)]から先ほど用意したガーバーファイルをドラッグ&ドロップしてアップロードします。
データに問題がなければ設計通りの基板が表示されます。
画面右側に基板製造料金の見積価格も表示されます。
特殊な基板設計やオプションを付けない限り決済の際に基本的にここから料金が変わることはないかと思います。
基板製造料金が2ドル、そして配送方法にOCS NEPを選択すればトータル3ドルで基板5枚を製造出来ることになります。
この価格設定、驚異的ですね!!
基本サイズとなる10cm×10cm以内に収まる基板サイズであれば、基本的にこの価格で製造することが出来ます。
ちなみに[ガーバービューア]をクリックすると、基板のプレビューも行えます!
④必要事項を選択
ここから基板製造に必要な事項を選択していきます。
本記事をご覧の方は初めて基板を製作される方だと思います。
特殊な基板設計などはされていないと思うので、選択項目は特に変更する必要はなくデフォルトで選択されている項目にしておけば問題ないと思います。
PCBカラー(基板色)はお好みで選択して下さいね!
あと[PCB上のマーク]は[マーク除去]を選択すると基板の任意の位置に自動的に入ってしまう製造番号を削除することが出来ます。
JLCPCBでは無料で出来るオプションとなったので、[マーク除去]を選択しておくのをオススメします。
このように意図しない位置に製造番号が入ってしまうのを防ぐことが出来ます!
項目の選択が出来たら料金を確認します。
先ほどと変わらずトータル3ドルの見積もり価格になりました。
問題なければ[カートに保存]をクリックして発注へと進みます。
複数基板を一緒に発注する場合は、同様にガーバーファイルをアップロードしPCBカラーなどを選択した後にカートに入れていきます。
⑤発注&決済
カートに入れたら[安全な決済]から発注へと進みます。
JLC3DPで3Dプリントパーツをカートに入れ一緒に発注することも出来ます。
同梱で発送出来るので、送料も1回分で済むためお得です!
基板のオーダーですが、[1.配送先住所の選択]→[2.配送方法の選択]→[3.発注する]→[4.料金の支払い or キャンセル]の順に必要事項を入力&選択していきます。
[①配送先住所の選択(Shipping Addres)]
JLCPCBの利用が初めての場合まだ配送先住所の登録が完了していないので、[新しい配送先住所を追加]から行って下さい。
②配送方法の選択(Shipping Method)
次に配送方法の選択です。
OCS NEPまたはOCS Expressを選択するのがいいと思います。
OCSはANAグループの高速輸送サービスです。
価格と到着日数のバランスが一番良い配送方法だと思います。
OCS ExpressでもOCS NEPでも到着日数はほぼ変わりません。
小さな基板であればOCS NEPを選択することが出来るので格安で利用できます。
OCSを利用する場合、発送から5日前後で手元に届くと思います。(お住まいの地域により若干日数が前後するかも知れませんが!)
③発注する(Submit Order)
[発注する(Submit Order)]で注文を確定します。こちらでは、[直接支払い(Pay Directly)]と[支払い前の審査(Review Before Payment)]の選択が出来ます。
レビュー前に料金を支払うか、レビュー後に支払うかの選択です。
JLCPCBではこのあとエンジニアによるデータチェックが行われるのですが、初めての基板発注では思わぬ追加料金が発生した場合でも確認後に料金を支払うか、またはキャンセルするかの選択が出来るので、[支払い前の審査]を選択して発注しておくのが安心かもしれません!
④料金の支払い or キャンセル
エンジニアによるデータチェックが行われ、問題がなければ[レビュー]から[支払う]表示に切り替わり最終価格が提示されます。(営業時間内であれば数分から数時間程度)
最終価格は特殊な設計等がなければ見積価格から変わることはないと思いますが、[支払い前の審査]を選択しておけばこの時点で料金を支払い製造に進むか、またはキャンセルするかの選択が出来ます。
問題がなければ[支払う]をクリックして支払いを完了し基板製造に進んでもらいます!
決済方法はクレジットカードのほかにPayPalを使うことも出来ます。
あとクーポンの選択もこちらで行います。
JLCPCBではユーザー登録完了後にいくつか初回特典クーポンがもらえます。
使用できるクーポンをお持ちなら、ここで選択しておきます。
以上で発注の完了です!
基板製造工程の確認
オーダー完了後、基板の製造が開始されます。
マイアカウントの[Order history]から現在の進行状況をリアルタイムで確認する事が出来ます。
基板の製造時間は選択したレジスト色(基板カラー)によって少し変わってきます。
標準の緑基板であれば約1日ほどで製造が完了しますが、他の色の基板では通常1~3日ほど時間がかかります。
製造が完了されると発送され、[出荷追跡(Shipment Tracking)]から追跡番号や発送状況を確認する事が可能となります。
基板製造に1~3日ほど、そしてOCS NEPまたはOCS Expressで発送から5~6日ほどで手元に届くので、だいたい発注から8日前後でいつも手元に届く感じです。
非常にお安くて配送も早いのが、JLCPCBを利用する最大の魅力だと思います!
まとめ JLCPCBを活用して電子工作の可能性を広げよう!
今回、JLCPCBを使った基板製作(発注)の手順をまとめてみました。
プリント基板の製作と言うと、かつては「プロのエンジニアが行う特別な作業」といったイメージがありました。
しかし現在では、趣味で電子工作をされている方でも簡単かつ低コストでオリジナル基板を作れる時代 になっています!
特にJLCPCBでは業界トップクラスの低価格で基板製造が提供されているので、初めての方はまずJLCPCBを利用して基板製作にチャレンジしてみるのはオススメです!
そして自作基板が作れるようになると電子工作で出来ることの幅が大きく広がったようにも感じます。
この投稿をInstagramで見る
『基板製作に興味はあるけど、難しそう・・・』
そんな思いから躊躇されている方は、驚くほど低コストで製作することが出来るので、まずは1枚作ってみるところから始めてみてはいかがでしょうか・・・?
















コメントを残す