基板(PCB)の製作をされている方ならもうお馴染みだと思いますが、中国のPCB製造メーカーとなる『PCBWay』の3Dプリントサービスを利用してみたのでご紹介したいと思います。
近年、中国に拠点を持つPCB製造会社が増えてきて、一般的な用途で使用する基板であれば驚くほど格安で製造することが出来るようになりました。
PCBWayやJLCPCB、Elecrowといった製造会社は日本で利用されている方も多いと思います。
もともとはプリント基板の製造をしている会社ですが、3DプリントパーツやCNC加工といったサービスも展開されています。
今回PCBWayの3Dプリントサービスを初めて利用してみたのでご紹介したいと思います。
PCBWayさん届いてた🟢
今回はPCBと言うよりは3DPパーツのテストを兼ねて…なるほどね、これはいいわ👌
Thank you@PCBWayOfficial https://t.co/FlQquA7iGR pic.twitter.com/xcrFYi2oMc
— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) March 3, 2025
目次
PCBWayの3Dプリントサービスを利用してみる
今回PCBWayで製造したものは、自作テンキーパッドの基板と3Dプリントケースです。
基板やCAD設計の話などは製作ブログとして別記事で詳しく書く予定なので、本記事ではPCBWayの3Dプリントサービスについて書いていこうと思います。
PCBWayで3Dプリントパーツとして製作したケースはレジン系マテリアル(材料)で製造したものとなり、トップケースはスプレー塗装、ボトムケースは染色する色を指定したカラー透明ケースとなります。
PCBWayの3Dプリントサービスを利用するのは今回初めてなんですが、他社と比較すると多くのマテリアルが用意されており、またスプレー塗装や染色では非常に多くのカラーから選択出来るのがPCBWayを利用する最大のメリットだと感じました。
スプレー塗装や染色では選択出来るカラーバリエーションが豊富
PCBWayの3Dプリントサービスでは、[Resin]や[Nylon]、[PLA]や[ABS]・・・多くのマテリアルが用意されています。
これだけでも多いのですが、今回ケースの製作で利用したレジン系マテリアルだけでもこれだけの材料が用意されています。
他社と比べ種類が豊富なんですが、さらにマテリアルによっては[スプレー塗装]や[染色]、[電気メッキ(Electroplating)]といった多くの表面仕上げオプションが用意されているので、その組み合わせは非常に多くなります。
そしてこのような自作テンキーパッドを設計したので、そのケース(トップケースとボトムケース)の製造を3DプリントパーツとしてPCBWayに発注しました。
トップケースは[Standard white material(UTR 8360)]というレジンをベースにし、表面仕上げオプションに[スプレー塗装]を選択して製造してもらいました。(発注方法に関しては後述します)
PCBWayのスプレー塗装では、基本カラーとしてよく使われる色味のものが12色(マット or 光沢)がデフォルトで用意されています。
またそれ以外にもカスタムカラーとしてPANTONEカラー(世界共通の色見本帳)から色味を指定して発注することも出来ます。
非常に多くのカラーサンプルが用意されています。(以下はごく一部です)
参考 PANTONE - MattPCBWayそしてボトムケースは、ベースに透明レジンとなる[UTR-8100(transparent)]を選択し表面仕上げオプションとなる[染色(Dyeing)]で色味を指定してカラー透明ケースとして製造してもらいました。
こちらも同様に、用意されている基本カラー以外にPANTONEカラーコードを指定して染色することも出来ます。
透明レジンにカラー染色したこのケースは非常に綺麗な仕上がりで正直驚きました!
染色する色味は[PANTONE Black U]を選択したのですが、サンディング処理もされているようで積層やサポート跡も全く無くツルツルな仕上がりとなっています。
このレベルのケースが作れるなら、やってみたいことはいろいろと思い浮かびます・・・。
PCBWayの3Dプリントサービスを初めて利用してみて感じたのは、対応するマテリアルや選択出来るカラーバリエーションが非常に豊富なのが最大の魅力だと思います。
3Dモデルの設計では、完成が近づいてくるとイメージするカラーもある程度決まってくるかと思います。
今回製作したテンキーパッド用ケースでは、全体的にグレーのイメージでボトムケースはLEDの光を投影できる半透明ケースといったイメージで設計を進め、自宅の3Dプリンタでの試作ケースも製作していました。
PCBWayの3DプリントサービスではPANTONカラーを指定しスプレー塗装や染色するといったことが出来るので、CADのイメージに近い色味のものを製作することが出来ます。
今回製作したものはPANTONカラーで言うとトップケースは[PANTONE Cool Gray 5C]でスプレー塗装、ボトムケースは透明レジンに[PANTONE Black U]を指定して染色したものとなります。
PANTONEカラーを指定して発注することが出来るので、3D CADのレンダリングイメージに近い色味のものが作れるのは非常にいいと思います!
PCBWayのスプレー塗装は両面仕上げ
PCBWayのスプレー塗装サービスは両面仕上げの塗装となるようです。
背面もしっかりと綺麗に塗装されていました。
なるほど、製造料金が他社より少しお高めで納期に時間がかかるのも納得です!
普段よく利用しているJLCPCBのスプレー塗装サービスでは基本的に表面(見える面)が塗装されます。
こちらはJLCPCBで製造したキーボード用のケースですが、内部の見えなくなる面は塗装時の固定器具の跡かな?などが残ったり塗装ムラも多くなります。
ケースといったものでは基本的に内部は見えなくなるのでこれは問題になることはあまりないのですが、例えばパネルといったものを製作する時などで両面塗装したい場合はPCBWayが有利になりそうです。
造形精度も問題なし!
自宅の3Dプリンタ(FDM機)ではサポートやオーバーハング等の問題で細かい部分の造形が難しくなることがあります。
今回製作したケースでは全面にサポートが入ってしまう形状&設計なのですが、微細な切れ込み部分も綺麗に再現されていました。
サンディング処理が入っているようなので表面の仕上がりも綺麗です。
ここまで再現出来れば、サポートの事などを意識する必要もなくなるので設計も楽になります!
そしてレジン系マテリアルの寸法精度も非常に良さそうです。
ビス穴やインサートナットを圧入する部分などの寸法調整はいつも気を使う部分なんですが・・・
例えばM2のビス穴(ホール)はCAD上2.2mmで設計すると思いますが、この寸法のままではFDM機では機能してくれないのでプラス0.2mmほどオフセットを入れたりするのですが・・・
CAD寸法のまま発注しましたが、穴径も上手く取れています。
PCBWayの3Dプリントサービスの利用方法
レビュー(仮発注)
それではPCBWayの3Dプリントサービスの利用・発注方法に関しても少し見ておきます。
基板の発注で既にPCBWayを利用したことがある方なら基本的な発注の流れは同じなので簡単です。
PCBWayのサイトから[CNC/3Dプリント]を選択し[ファイルの追加]を選択します。
3Dプリントパーツの発注なので[3D printing]を選択し、3Dモデルデータ(STLやSTEP、OBJに対応)をドラッグ&ドロップしてアップロードします。
そして製造する材料(マテリアル)を選択するのですが、PCBWayでは扱われているマテリアルの数がかなり多いので3Dプリントに不慣れな方は迷われるかと思います。
特にレジン系マテリアルではこれだけの数扱われています。
マテリアルを選択し[Show material description]をクリックすると耐熱温度や強度、機械的な特性といった基本情報を確認することが出来ます。
今回製作したトップケースとボトムケースの例を見ていきます。
まずスプレー塗装したトップケースです。
ベースとなるマテリアルは[Resin]の中にある[Standard white material(UTR 8360)]を選択しました。
おそらくPCBWayでのレジン系マテリアルでは一番ベーシックなものとなり非常に安価です。
このマテリアルをベースにし[Surface finish options]からオプションとなる[スプレー塗装(Spray painting)]を付けました。
スプレー塗装では、マット仕上げ(Spray painting – Matt paint)と光沢仕上げ(Spray painting – High gloss paint)が選択でき、あとはお好みのカラーを選択するだけです。
先述のようにベーシックな12色から選択出来る以外にPANTONカラーを指定することも出来ます。
トップケースは、グレーの光沢仕上げ(PANTONE Cool Gray 5C)で発注しました。
選択するマテリアルにより選べるオプションの数や種類が変わってきます!
スプレー塗装はオプション項目となるので、ベース料金からオプション料金が加算されます。
マテリアルの選択は以上ですが、発注項目の下にネジのタップや印刷リスクなどの確認項目があります。
これは必要に応じて選択して下さい!
今回はデフォルトで選択されている項目を変更せず発注しました。
最後に造形物の説明を選択します。
3Dプリントパーツなので武器や危険物といったものを製造出来てしまうので、製造するものを明確にしておく必要があります。
項目の選択は以上となります。
他に発注するものがあれば、[Add Another Part]からファイルをアップロードし同様に選択していきます。
ボトムケースの方は透明レジンとなる[UTR-8100(transparent)]に染色オプション(Dyeing)を付けました。
[Submit Request]をクリックするとカートに入りレビューが開始されます。PCBWayではエンジニアによるレビュー後に最終価格が決定しそこから本決済に進む流れとなります。
この時点(仮発注)ではいつでもキャンセル出来るので安心して進んで下さい。
営業時間内であれば数時間程度でレビューが完了すると思います。
レビューが完了すると[レビュー中]から[支払い待ち]に変わり最終価格が提示され本決済へと進めます。(キャンセルはいつでも出来ます!)
スプレー塗装や染色オプションを付けたので4-6日予定の製作時間が10-11日に変わっていました。
また最終価格は少し下がっていました。(なぜかな?)
価格や製作予定時間等に問題がなければ[チェックアウトに進む]をクリックして本決済へと進みます。
PCBWayでは、3Dプリントパーツと基板(PCB)を一緒に決済&発送することが出来ます。
今回3Dプリントしたケースと基板やステンシルなどをまとめて決済しました。
送料も1回分で済むのでお得です!
本決済
決済画面では、配送先住所や支払い方法、配送方法を選択し決済する流れとなります。
配送方法はOCSを選択するのがコスパが良いと思います。
OCSはANAグループの高速輸送サービスとなり価格と到着日数のバランスが一番良い配送方法だと思います。
最後にクーポンやアカウント残高をお持ちなら決済する前にここで適応しておきます。
PCBWayの利用が初めての方は、初回ユーザー登録時に5ドル割引クーポンが付与されます。
本決済の流れは以上となります。
PCBWayのユーザー登録や基板発注方法、本決済の流れはこちらの記事で詳しくまとめています。
あわせて見て頂ければと思います。

配送方法にOCSを選択し発送から2日で手元に届きました。
早いですね!
最後に!
PCBWayで今回3Dプリントパーツを初めて発注してみたのですが、品質はかなり良く満足出来るものでした!
ベースとなるマテリアル料金は比較的安価な価格設定となっていますが、今回試したオプションとなるレジンのスプレー塗装や染色は品質が高い分、大きなオプション料金がかかってしまいます。
両面塗装や透明レジンの染色、また扱われているマテリアルの種類などによりこれは他社との使い分けになるかと思いますが、個人的には他社では扱われていない透明カラーレジンケースを作れる事が分かったので試してみたいものがいくつか出てきたりもしました。
現在製作を考えているファミコンコントローラー型のゲームエミュレーター機にファミコンカラーの半透明ケースが作れればすごく良さそう・・・なんて思ったりしています。

何かの参考になればと思います・・・。








コメントを残す