11月25日発売 書籍『Arduinoと3Dプリンタでロボットを作ろう』を出させて頂きました!

【電子工作 / PCB】フレキシブル基板(FPC)を使ったArduinoの製作!

初めて作ったフレキシブル基板について書いたこちらの記事の追記となります!

【JLCPCB】初めてのフレキシブル基板を製作してみました!(フレキシブルArduino)

JLCPCBでフレキシブル基板を試させて頂く機会があったので、フレキシブルなArduinoを作ってみました!

フレキシブル基板(Flexible Printed Circuits:FPC)は、通常のプリント基板(Printed Circuit Board:PCB)と比べその素材に絶縁体となるポリイミドなどの薄いベースフィルムを使用して銅箔を張り合わせた構造となっているため、薄くて柔らかくそして折り曲げることが出来る基板です。
ノートパソコンのディスプレイといった可動部分(ヒンジなど)に使われたり、電子工作ではテープLEDライトやLCDモジュールなどに使われているのもよく見かけます。

フレキシブル基板を使った初めての製作だったので、二股や三股に分かれた基板間を接続するための自作ケーブルやハサミ等でカットして立体的な基板となる構造のものなど、フレキシブル基板の特性を生かした何かいいアイデアはないものかといろいろと考えてみたのですが・・・
これは一度作ってみないと全くイメージが出来ない、ということでテスト的にフレキシブルなArduinoを作ってみました。

フレキシブル基板は配線(銅箔)を薄いベースフィルムで覆う事により曲げることが出来るように作られた基板なので、銅箔の断線が起こりやすいためディアドロップや曲線による配線を使用したり、スルーホールやビアにはアンカーを打つ、また柔軟性を維持するためにGNDプレーンといったベタ塗り領域をハッチングパターンにしたりと・・・その設計には多くのテクニックがあるようです。

今回は、製作したフレキシブル基板にパーツを実装し動作確認を行なってみました。

フレキシブルなArduinoとして製作したのですが、特にArduinoにした大きな理由はありません。
通常のPCB製作と比べて基板設計やパーツの選定の違い、また実際に上手くパーツを実装する事が出来るのか?
といった、製作時にいくつか持っていた疑問点が解決出来ればと考えテスト的に製作したものとなります。

【FLEX ARDUINO】フレキシブル基板(FPC)を使ったArduinoの製作!

冒頭でご紹介したようにArduinoをフレキシブル基板で製作する特に大きな理由や用途などはありませんが、初めてフレキシブル基板を製作してみて基板製作やパーツ実装で気付いたことをメモ的に書いておきます。

CAD設計

こちらがフレキシブル基板で今回製作したArduino Unoです。

Arduinoとして動作する最小限の構成としパーツ点数を極力少なくしました。

フレキシブル基板は銅箔(配線)を絶縁体となる薄いフィルム層で覆っているという構造なので、曲げ(可動)に対して銅箔の断線が起こりやすくなります。

そのため曲げ方向に対して垂直を保つように配線するのがベストとなるようですが実際の基板設計においては理想的な配線に出来ない場合が出てくるため、角張った配線を無くし曲線での配線にしています。

また通常のPCBと同様にGNDなどベタ塗りしたプレーンを作る必要が出てくる場合がありますが、基板の柔軟性を維持するためにハッチュングパターンを使用して塗りつぶしています。

そして今回製作した基板では行なっていないのですが、ディアドロップを使った配線も望ましくなるようです。
パッドから延びる配線の接続部分は曲げにより時間の経過とともに銅箔の疲労による断線が起こりやすくなるため、このように先細りするような形状となるディアドロップによる配線がいいようですね!

スルーホールやビア部分は曲げによる負荷がかかると銅箔と基板(フィルム)との接着が低下しやすくなるので、スルーホールのメッキ部分にアンカーをいれるなどの対策も望ましくなるようです。(画像引用)

フレキシブル基板の設計に関してはまだまだ多くのテクニック等があるようで、SNSで教えて頂いたことをある程度実践した段階でテスト的に今回の基板を発注しました。

KiCadを使った曲線配線やハッチングパターンでの塗りつぶし、またディアドロップの配置といったことはKiCad7.◯から標準機能として搭載されています。
SNSでアドバイスや参考サイト等を教えて頂き、見様見真似で設計してみたのですが・・・
このあたりの詳しい話は前回の記事を参考にして下さい!

【JLCPCB】初めてのフレキシブル基板を製作してみました!(フレキシブルArduino)

今回製作した基板データ(ガーバーファイル)をダウンロード出来るようにしておきます。
初めてのフレキシブル基板の製作だったため不備等あるかもしれませんが、何かの参考になればと思います!

MEMO
SNSのコメントでいくつか頂いたのですが、『Arduino』は登録商標であるため第三者が使うことが出来ません。
承知の上で私個人での使用目的で製作しているので基板シルク文字に[FLEX ARUINO] と入れていますが、ご了承下さい!

JLCPCBに基板を発注

基板の発注はJLCPCBを使いました。
JLCPCBでのフレキシブル基板の製造は、15ドル(2200円ほど)から製作を依頼する事が出来ます。
他社と比べ非常にリーズナブルな料金設定となっているようです!

フレキシブル基板の発注方法は簡単で、通常のPCBを発注する時とほぼ同じ要領で行うことが出来ます。
発注項目の選択は通常のPCBを発注したことがある方なら特に問題ないと思います。

まずKiCadなどの基板設計ソフトで製作した基板データ(ガーバーファイル)をJLCPCBのサイトにアップロードします。
[Base Material]はフレキシブル基板の製造なので[Flex]を選択します。
フレキシブル基板の製造は2層基板までに対応し標準料金は基板5枚で15ドルとなっています。

通常のPCBで行うパネライズ(面付け)といったオプションも用意されています。

今回製作したフレキシブルなArduinoくんは黒基板のイメージで設計していたのですが・・・
標準色の黄色から黒色または白色に変更すると結構大きなオプション料金となるようです!

通常のPCBでは大きくオプション料金が追加される表面仕上げ[Surface Finish]はENIG(無電解金メッキ加工)での製造が標準仕様となっています。

また通常のPCBには無い補強材[Stiffener]というオプション項目がありますね!
ポリイミド・FR4・ステンレス鋼・3Mテープといった補強材を入れる事が出来るようです。(今回は指定無しで発注)
今回製作したArduinoではI/O端子部分は使用時にテンションが掛かりやすい部分となるので、こういった部分に補強材を入れて製造してもらうのが正解なんでしょうかね?

今回の発注ではオプション項目は選択せず全てデフォルトで選択されている項目を指定して発注しました。
通常のPCBと同様に10cm×10cm以内に収まる基板サイズなら標準料金となる15ドル(2200円ほど)で製作することが出来ます。(基板5枚)
送料区分はOCS Expressを選択し、トータル2500円ほどで製作することが出来ました。

MEMO
製造時に任意の位置に入ってしまう基板製造番号を基板裏の目立たない位置に入れる指定のみをしました。
([Remove Order Number]→[Specify a location]を選択)

このようにフレキシブル基板の発注方法は通常のPCBを発注する時とほぼ同じ要領で出来ます。
KiCadを使ってガーバーファイルの用意やJLCPCBでの発注方法に関してはこちらの記事で詳しく解説しているので参考になるかと思います。

【電子工作】はじめての基板製作!JLCPCBさんに基板を発注してみました。ユーザー登録・データ納品・基板到着までの一連の流れをご紹介!

パーツの実装

送料区分はOCS Expressを選択し発注から10日で手元に届きました。
通常のPCB製造より2日ほど時間がかかるようですね!

こちらが届いた基板です。
ペラッペラです!

この時点でパーツの実装が難しそう!?
と感じたのですが・・・通常のPCBの実装と比べ実際手こずりました!

パーツの実装は主要パーツをリフローで行い、端子関係はヒートガンを使って行いました。
基板が薄くて柔らかく、そして簡単に湾曲してしまうためパーツの実装は結構手間がかかりました。

もう少し小さなサイズの基板からテストした方がよかったかもしれませんね!
Arduino Unoサイズの基板になるとピンセットで持ち上げただけで基板が湾曲し乗せているパーツの位置がズレてしまう・・・なかなか大変でした。

まず主要パーツをミニリフロー装置MHP30を使って実装しました。
基板に型が付きやすく基板を持ち上げると簡単にパーツの位置がズレてしまうので、MHP30用に使ったこのような治具基板に固定してパーツを乗せていきました。

【電子工作】コンパクトボディーで安全設計!ミニリフロー装置『Miniware MHP30』を使ってみる!
【電子工作】『Miniware MHP30』で大きな基板のリフローに対応出来るように治具基板を作ってみました!

多少パーツの位置がズレてもリフロー時のセルフアライメントによりパッドの位置に上手く乗ってくれますが、端子関係は大きいのでリフロー後ホットプレートから外す際にズレたりしやすいので、これらはヒートガンを使って行いました。

【電子工作】初めてのヒートガン(リワークステーション)を買ってみました!1台持っているとはんだ作業で大変重宝します!【RF4 RF-H2】

基板が湾曲してパーツを乗せにくい以外は通常のPCBの時と同じ要領で実装は出来ました。
今回の実装は上記のような台(治具基板的なもの)に助けられました!

そして今回の実装で一番大変だったのがType-C端子でした。
基板設計時に表面実装タイプの端子を使っていたのですが、テストを兼ねているのであえてこのパーツだけいつも使っているシールド(外枠)部分の固定がスルーホールとなっているタイプの端子を使いました。
今回の基板ではこの端子のみスルーホールパーツとなっています。

通常の1.6mm厚PCBを想定して作られているパーツなので、フレキシブル基板で使うとスルーホール部分が下に出っ張ってしまいます。
そのためリフローによる実装が出来なく、またヒートガンを使う場合も上手く基板自体を嵩上げ等しないと難しくなります。

なにより基板自体が湾曲しやすいので、リード線部分(16ピンあります)を全て基板にはんだ付けするのが非常に難しかったです。

以前製作した自作Arduinoの基板に端子の位置を合わせて固定してはんだ付けする・・・
コテを使い多分10回くらいやり直しました。

パーツにもよりますが、フレキシブル基板ではスルーホールパーツの実装は結構手間がかかるのでなるべく避けた方がいいかもしれませんね!
いい経験になりました!

動作確認

実装は非常に綺麗に出来たと思います!
ICSP端子からArduinoブートローダーを書き込み、スケッチの書き込みも問題なく出来ました。
Lチカ成功です!

動画で伝わるか分かりませんが、こんなに薄くてペラペラな基板でArduinoが動いてくれるのは面白くちょっと不思議な感覚にもなりますね!

使用パーツ一覧

今回使用したパーツ一覧です。

使用パーツ一覧
パーツ定数入手先
抵抗(0805)R1/R2 5.1kΩAliExpress
R3/R4/R5/R6/R7/R8 1kΩ
R9 10kΩ
コンデンサ(0805)C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7 0.1μFAliExpress
C8/C9 22pF
ダイオードD1 M7(1N4007)AliExpress
ヒューズ(1812)F1 500mAAliExpress
LED(0805)LED1/LED2/LED3/LED4AliExpress
リセットスイッチ(SMD)SW1 5PタクトスイッチAliExpress
5VレギュレータU1 AMS1117-5.0AliExpress
USB-シリアル変換チップU2 CH340CAliExpress
MCU(マイコン)U3 ATmega328P-AUAliExpress
クリスタル(3225)Y1 16MHzAliExpress
Type-C端子J1 Type-C端子(16P)AliExpress
ピンヘッダー(SMD)J2 2×3(2.54mmピッチ)AliExpress
ピンソケット(SMD)J3 1×6(2.54mmピッチ)AliExpress
J4/J5 1×8(2.54mmピッチ)
J6 1×10(2.54mmピッチ)

最後に!

初フレキシブル基板のテストとしてフレキシブルなArduinoを製作してみました。

Arduinoとしてはおそらくあまり実用性は無いと思いますが、実際にフレキシブル基板を使って製作することにより設計時に頂いたアドバイスなどの内容も理解しやすく良かったと思います。

JLCPCBでは15ドル(標準料金)からフレキシブル基板の製造を行うことが出来ます。
私のようにどんなものなのか雰囲気を確かめてみたいとお考えの方も手軽な料金帯でフレキシブル基板を試すことが出来ます。

アイデア次第で面白いものが作れそうですね!

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