MHP50についてもレビューしました!
ホットプレートサイズが大きくなりカラーディスプレイを採用、操作性が向上したMHP30の後継機となります。
KiCadを使った基板設計、そして自作基板の製作を始めて半年ほどが経ちました。
自作基板の製作は電子工作で出来る事の幅も広がり非常に楽しいものです!
Arduinoとの出会いで電子工作を始めたのですが、いつか作ってみたいと考えていた自作のオリジナルArduinoも作ることが出来ました。
自作基板の製作を進めていくとスルーホールパーツだけでなく表面実装パーツ(SMD)を扱うことも多くなってきます。
1206や0805サイズくらいまでなら何とかはんだゴテを使った手はんだでも実装は可能ですが、効率が悪く時間もかかってしまいます。
表面実装パーツの実装には、ヒートガンやリフロー炉(装置)が使われることが多いと思います。
ヒートガンはピンポイントでのパーツの実装や取り外しに非常に便利に使えます。
これまで表面実装パーツを使った基板へのパーツ実装は全てヒートガンを使ってきました。
ピッチの狭いICチップでははんだペーストの量によってはブリッジしてしまう場合もありますが、そのような箇所を後からコテで修正する程度で手はんだで実装する時より圧倒的に早く綺麗に仕上げることが出来ます。
そして表面実装パーツではリフロー装置が使われることも多いと思います。
加熱したプレートの上に基板を乗せ、はんだペーストを溶かしてパーツを実装するというものです。
リフロー装置は、アイロンやホットプレートなどを使い正確な温度調整が出来るように改造(自作)して使われている方も多いようですね!
いきなりこのような装置を自作するのは難易度が高いので、今回は既製品として販売されているミニリフロー装置『Miniware MHP30』を入手してみました。
SNSで多くの方にオススメして頂いたものです。
MHP30は加熱プレートのサイズが30mmほどと非常に小さいので使用できる基板サイズに制約を受ける事があると思いますが、コンパクトで作業スペースの邪魔にもならず使用後の保管場所にも困らないので便利に使えます!
目次
ミニリフロー装置『Miniware MHP30』を使ってみる!
SMDパーツの基板実装はヒートガンが便利に使えます。
風量や加熱温度を調整する事によりピンポイントでパーツの交換を行うことも出来ます。
そして基板へのパーツ実装では、基板全体を加熱してペーストはんだを溶かして一気にパーツ実装が出来るリフロー炉(装置)があると非常に便利となってきます。
リフロー装置はサイズや加熱性能など様々な製品が販売されているようですが、価格がそこそこ高価なものとなるため自作リフロー装置を製作される方も多いようですね!
いきなり自作のリフロー装置を作るのは安全面から言っても少し怖いので、既製品で手頃なものがないかと探していたところSNSで多くの方がオススメしてくれたのがこの『Miniware MHP30』というミニリフロー装置です。
MHP30は片手にスッポリと収まるサイズの非常に小型なリフロー装置となります。
2022年のreddot awardにも選ばれた製品のようで、製品としてのデザインや完成度は高く非常によく出来たリフロー装置だと思います。
リフロー装置を選ぶ際のポイントの一つとして加熱出来るプレートのサイズがあると思います。
これは使用する基板サイズにもよりますが、MHP30の加熱プレート部分の大きさは30mm×30mmとかなり小さくなっています。
基板をスライドさせ加熱させる部分を動かすことによりある程度大きな基板にも対応することは出来ますが、他の製品と比べ非常に小さいのが購入する際に一番迷ったポイントでした。
マイコンを使った電子工作という私の用途ではそれほど大きなサイズの基板で使うことはないと思いますが、それでもArduino Unoサイズくらいの自作基板を製作し扱うことはよくあります。
あと10mmほど加熱プレート部分のサイズが大きければと思い購入の際に非常に迷っていたのですが・・・SNSですごくいいアイデアを頂きました。
このようなMHP30で使える簡単な治具を作ることにより、ある程度大きな基板でも対応する事が出来そうです!(3Dプリンタで試作している段階です)
という事でMHP30の購入に至ったのですが・・・大正解でした!
加熱性能は申し分なく、非常にコンパクトでType-C PD電源(最大60W)により駆動することが出来るので作業スペースの邪魔にもならず非常にグッドなリフロー装置です。
外観&付属品チェック
MHP30のトップにある加熱プレートのサイズは30mm×30mm、ボディーサイズも43mm×35mm×31mmと非常にコンパクトで片手にスッポリと収まるサイズ感です。
本体寸法は事前に調べていて分かってはいましたが、実物を手にすると想像していたものより一回りほど小さく感じます!
本体のデザインは素晴らしく、USB Type-Cに対応したPD電源が使えるのも今風でいいですね!(最大60W)
操作は本体背面にある2つのスイッチ(A/B)で行い、前面にあるLCDモニタでリアルタイムの温度など情報を確認する事が出来ます。
コントローラー部分(本体下部)と加熱ホットプレート部分は分離する事が可能で交換が出来るようになっています。
ホットプレートの上部加熱部分は真鍮製でナノセラミックコーティングが施され、均一に加熱することが出来るようになっているようです。
MHP30は最大350℃までの加熱性能があり加熱プレート部分はかなり高温となります。
現在温度は前面にあるLCDモニターからもリアルタイムで確認できますが、加熱プレート下にLEDが仕込まれていてその点灯色により低温・中温・高温と視覚的に確認する事が出来るのも便利で安全な設計となっています。
本体底面には滑り止めラバーが付けられており、また支持脚を広げて安定させることも出来ます。
MHP30には60W PDに対応したACアダプタが付属するモデルもありますが、今回購入したものは付属しない標準タイプのものとなります。
MHP30本体と操作マニュアル(英語)、Type-C-Type-Cケーブルが付属しています。
PDに対応したACアダプタが付属するモデルは結構割高となるので、60W以上のPDに対応した電源アダプタ等を既にお持ちなら標準タイプを選択される方がいいと思います。
パワーバンクなどのPDに対応したモバイルバッテリーを使って駆動することも出来ます。
最大60WのPD電源による電力供給が出来ますが、出力(ワット数)の低い電源を使うと設定している温度によっては加熱途中でエラーとなる場合もあるので60W以上の電源で使用するのが望ましいと思います。
そして加熱スピードも早くなります!
加熱温度を視覚的に確認する事が出来る!
MHP30を使ってみて一番良かったのは、加熱プレートの温度を視覚的に確認する事が出来るところです。
加熱プレートの温度は最大350℃まで加熱することができかなり高温となるため、この機能のおかげで安心して使うことが出来ます。
加熱プレートの温度によりプレート下に搭載されているLEDの点灯色が変化する仕様になっています。
加熱開始直後の50℃以下の温度では緑色に点灯し、プレート加熱に伴い黄色・白色に変化し、200℃以上の高温になると赤色に点灯するようになっており視覚的に分かりやすくなっています。(前面パネルでリアルタイムの現在温度を確認する事も出来ます)
また、接続している電源出力が足りない場合や本体を傾けたり転倒した場合には赤色で点滅してエラーが起こっていることの確認もでき、加熱モード時では自動的に加熱を停止しスタンバイモードに移行する安全設計にもなっています。
MHP30 製品仕様
MHP30 製品仕様 | |
本体サイズ | 43mm×35mm×31mm(コントローラー部分) 31mm×31mm×28mm(ホットプレート部分) |
温度範囲 | 100~350℃ |
電源入力 | USB PDプロトコル(最大20V) |
電力 | 最大60W |
重量 | 82g |
実際に使用してみる
練習用のテスト基板を使って温度設定等を変えて何度かテストをしてみました。
ステンシルを一緒に発注した基板がなかったので、ペーストはんだを結構アバウトに乗せたレベルですが(少し量が多いですね!)、綺麗に実装する事が出来ました。
ヒートガンのように熱風を当てているわけではないので、パーツが飛んでしまうこともなくリカバリも簡単に行うことが出来ます!
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使用するペーストはんだの融解温度により設定温度も変わってくるかと思いますが、183℃の融解温度のペーストはんだを使い220℃設定で綺麗に実装出来ました。
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本番基板でも一発で実装する事が出来ました。
ピンピッチが0.5mm(MSOP-10)のCH340Eチップも綺麗に実装出来ています!
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ペーストはんだはフラックスの含有量が結構多いので、実装後はIPAを使った洗浄をする事により綺麗に仕上げることが出来ます。
ACコンセントからではなくPDからの駆動ができコンパクトで作業スペースの邪魔にもならず、また使用後の保管場所にも困らない、なかなか便利なリフロー装置です!
大きな基板の実装ではこのような治具があると便利!
初リフロー装置の使用となりますが、パーツ実装は綺麗に行うことが出来ました。
かなり作業効率が上がりますね!
非常に便利に使えるMHP30なんですが、購入に至るまでに迷ったポイントとして加熱出来る範囲があります。
MHP30の上部加熱プレートのサイズは30mm×30mmとかなり小さい面積となっています。
これは使用用途にもよりますが、もう少し大きければ・・・なんて思う方も多いと思います。
私も購入する際にこの加熱サイズの大きさは非常に迷いました!
基板をスライドさせながら加熱させるとある程度大きなサイズの基板でも対応出来るわけですが・・・。
SNSで便利そうな治具のアイデアを頂きました。
簡単な形状のものですがこのようなの治具を用意し加熱プレートの高さとピッタリと合わせておくと、基板をスライドさせながら安定して加熱させることが出来ると思います。
パーツ実装後はこの治具ごと基板を持ち上げてそのまま冷却する事が出来ます。
これである程度大きな基板でも安定して実装する事が出来そうですね!
現在この治具基板を発注しているので、後ほど使い心地等追記出来ればと思います。
操作方法
MHP30は操作ボタンが2つ(Aボタン/Bボタン)しかないため、初めて使う場合操作方法が少し分かりにくいと思います。
簡単に操作方法をまとめておきます。
MHP30はPCと接続することによりファームウェアのアップデートを行うことも出来ます。
使用するファームウェアのバージョンによって操作方法やUI等多少変わってくる場合があるかもしれませんが、ソフトウェアバージョン2.06/ハードウェアバージョン1.60のもので見ていきます。
基本情報の表示
電源投入時、スタンバイモードで起動します。
スタンバイモードの状態で[A]ボタンを長押しすると基本情報の確認が出来ます。
ホットプレートの内部抵抗・ホットプレートの型番・現在の温度・入力電圧の確認が出来ます。
また[B]ボタンを長押しするとソフトウェアおよびハードウェアのバージョンの確認が出来ます。
- ホットプレートの内部温度(Internal resistance of hot plate)
- ホットプレートの型番(Model of hot plate )
- 加熱プレートの温度(Device temperature )
- 入力電圧(Input Voltage )
スタンバイモードで5分間操作が行われないと自動的にスリープモードへ移行します。(画面表示が消えます)
[A][B]いずれかのボタンを押すことにより復帰します。
加熱の開始
次に基本操作です。
スタンバイモードで[A]ボタンを短押しすると加熱モードに入り、プレートの加熱が開始されます。
加熱モード中に再度[A]ボタンを短押しする事により、3つのプリセット温度(M1/M2/M3)に設定が出来ます。
デフォルトのプリセット温度は、M1:220℃/M2:250℃/M3:300℃に設定されています。
このプリセット温度は後述する設定画面から変更する事も可能です。
- M1:220℃
- M2:250℃
- M3:300℃
加熱モード中の画面表示です。
現在温度・使用プリセット・電力(ワット数:Wまたはボルト:V)・加熱時間が表示されます。
加熱時間は[B]ボタンを短押しすると0にリセットされます。
設定温度までプレート温度が上昇し一定になってからの時間を計測したい場合に使えます。
私の環境では65WのPD電源に接続して使っていますが、90秒ほどで220℃まで加熱する事が出来ます。
基本的にプリセット温度での使用で問題ないと思いますが、加熱モード中に[A]ボタンを長押しする事により細かく設定温度を調整する事もできます。
[A][B]ボタンで希望温度を上下させ目的の温度を設定したら、その状態を5秒保持すると決定という流れになります。(この設定温度は電源を切るとリセットされます)
加熱を終了する
加熱モードを終了するには[B]ボタンを長押しします。
加熱が停止しスタンバイモードに戻ります。
自然冷却で温度が下がっていくためホットプレートはかなり高温状態を保持するので注意が必要です!
ホットプレート下のLEDの点灯色が現在温度によって変化していくので視覚的に分かりやすい設計になっているのが便利で安心して使うことが出来ます!
設定モード
スタンバイモードで[B]ボタンを短押しすると各種設定が行えるメニュー画面に入ります。
設定の変更が出来るのは以下11項目です
変更したい項目に合わせ[A]ボタンを長押しすると、その項目の修正が行なえます。
修正後、5秒待つとメニュー画面に戻ります。
メニュー番号 | 項目 | 内容 |
1 | M1 Temp | プリセット温度M1の変更(デフォルト220℃) |
2 | M2 Temp | プリセット温度M2の変更(デフォルト250℃) |
3 | M3 Temp | プリセット温度M3の変更(デフォルト300℃) |
4 | Sleep Time | スリープタイムの設定(デフォルトOFF) |
5 | Backlight | ディスプレイバックライト輝度の変更 |
6 | Tilt Angle | 傾きを検知し警告を出します。(デフォルトON) |
7 | Show Type | ディスプレイに表示する電力表示の切り替え (V:ボルトor W:ワット) |
8 | Volume | ビープ音のON/OFF設定 |
9 | Temp Type | 華氏(F)摂氏(℃)表示の切り替え |
10 | Low Cur | 定電流モードON/OFF |
11 | Restore | 出荷時の設定に戻す |
上記項目を変更後、再度[B]ボタンを長押しすることにより変更内容が保存されスタンバイモードに戻ります。
また上記設定項目は変更後、電源を切っても保持されます。
[設定モード補足]Sleep Time
Sleep TimeはデフォルトでOFF設定となっています。
ONに設定すると加熱モードで一定時間(5~120分の範囲で設定可)経過すると警告を出し(エラーメッセージおよびLEDが赤く点滅)自動的にスタンバイモードに移行します!
[設定モード補足]Tilt Angle
Tilt AngleはデフォルトでON設定となっています。
MHP30は本体の傾きを検知して警告を出します。
また加熱モード中に傾きが検知されると自動的に加熱を停止しスタンバイモードに移行します。
加熱プレートはかなり高温になるので基本的にこの設定項目はONのまま使うのがいいと思います。
MHP30の本体底面には固定用のビス穴が用意されています。
特殊な設置方法(傾けて設置?)などの使用用途以外ではONに設定しておくと本体の傾きを検知して警告&自動加熱の停止が行われる安全設計となっています!
MHP30の特徴
- 手のひらサイズのコンパクトボディーで作業スペースの邪魔になりにくく保管場所にも困らない!
- USB Type-Cに対応したPD電源が使え最大60Wの電力供給が出来る!
- インジケーターLEDにより加熱ホットプレートの温度が視覚的に分かりやすい!
- 傾きを検知して加熱を停止させる安全設計!
- 加熱領域が狭い(30mm×30mm)
【追記】大きな基板のリフローにも対応出来るスタンドを製作しました!
MHP30で大きなサイズの基板にも対応できるように治具(スタンド)を製作しました。
MHP30単体では困難となるサイズの基板でも上手くリフローし実装する事が出来ました。
非常に簡単なものですが、MHP30ユーザーの方は作っておくと使い勝手がかなり向上します。
【追記】表面実装(SMD)パーツを扱う際にあると便利なアイテムたち!
自作基板の製作を行うようになり表面実装パーツを扱う機会も増えてきました。
表面実装パーツ、いわゆるチップパーツと呼ばれるものでは、はんだペーストを使いヒートガンやリフロー炉で基板にパーツを実装していきます。
これら表面実装パーツを扱う際に便利なアイテムをまとめてみました!
【追記】MHP30の後継機となるMHP50が登場しました
MHP30の後継機となるMHP50が登場しました!
MHP30の安全設計や加熱性能など良い部分は全て引き継がれ、ホットプレートサイズが大きくカラーディスプレイや操作系スイッチが前面に配置されたことにより操作性が向上しています。
また、「リフローモード」といった新たな機能も追加されています。
最後に!
サイズの割に少しお高いリフロー装置ですが、コンパクトで作業スペースの邪魔にもならず非常に便利に使えます!
ヒートガンとの併用でこれから自作基板のパーツ実装で使っていこうと考えています。
今回基板へのパーツの実装という目的でご紹介しましたが、もちろん修理等によるパーツの交換といったリワーク作業でも便利に使えそうです。
ヒートガンとは違い熱風によるパーツ紛失なんてことも起こらないですからね!
なかなか便利なはんだアイテムです!
その他、はんだ作業の際にあると便利なアイテムをこちらの記事でまとめているので合わせて読んで頂ければと思います。
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