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【JLCPCB】初めてのフレキシブル基板を製作してみました!(フレキシブルArduino)

電子工作で自作基板の製作を始めて1年ほどが経ちました。
回路設計のことやKiCadの扱いなど少し慣れてきたこともあり、ある程度自分がイメージするもの(これまで製作してみたいと考えていたもの)などを作れるようになってきました。

これまで製作したものはこちらでまとめているので、合わせて見て頂ければと思います。

自作基板関連の記事一覧

そして今回は、初めてフレキシブル基板というものを製作した話となります!

初めてのフレキシブル基板の製作!

フレキシブル基板とは?

フレキシブル基板と聞いて『薄くて柔らかく、そして折り曲げることが出来る基板』だということはイメージ出来るかと思います。

このようなテープLEDライトやディスプレイのケーブルなどに使われているのを電子工作をやられている方ならよく見かけますよね!

通常のプリント基板(Printed Circuit Board:PCB)と比べ、その素材には絶縁体となるポリイミドなどの薄いベースフィルムを使用して銅箔を張り合わせた構造となっています。

プリント基板(リジット基板)と比べて薄くて折り曲げたりも出来るので、ノートパソコンといった家電製品の可動部分(ヒンジなど)に使われているのもよく見かけます。

フレキシブル基板(Flexible Printed Circuits:FPC)に関してはこれくらいの知識しか私は持ち合わせていないのですが、試させて頂く機会があったので実際に動作させることが出来る基板として製作してみました。

フレキシブル基板を使ったArduinoの製作

フレキシブル基板(FPC)を使った何か実用性のあるアイデアはないものか・・・
いろいろと考えてみたのですが特殊な用途?の基板製作となるため、なかなかこれといったアイデアが思い浮かばず!

こちらはまだ製作途中なんですが、2階建てPCBの基板間を結ぶケーブルの製作に使えるかな?といったことも考えたりしました。
既製品として販売されているリボンケーブル等では対応出来ない、例えば二股や三股に分かれたケーブルを製作することが出来れば各基板の回路設計の自由度も上がり便利そうではあります。

またこのような立体的な基板を製作されている方もいるようですね。
自由に折り曲げて使うことが出来るフレキシブル基板ならではのアイデアです!

参考 FLEXBALL - a Hundred Pixel Flexible PCB Ball With WiFiAutodesk,Inc.

ハサミ等でカットして上記のような立体的な基板形状になるものもCADで作ってはいたのですが・・・
もう実物を手にとって触ってみないと全くイメージが膨らまない、ということでこのようなフレキシブルなArduinoをテスト的に製作してみました。(Arduinoにした特に大きな理由はありません!)

【JLCPCB】フレキシブル基板の発注方法について!

フレキシブル基板の発注方法です。
JLCPCBではフレキシブル基板の発注は非常に簡単で、通常のPCBを発注する時と同じ要領で行うことが出来ます。

KiCadなどの基板設計ソフトで作成した基板データ(ガーバーファイル)を通常のPCB発注の時と同様にアップロードするだけです。

JLCPCBでのフレキシブル基板の製造は、15ドル(2200円ほど)から製作を依頼する事が出来ます。
他社と比べ非常にリーズナブルな料金設定となっているようです!

発注時に選択出来る項目も通常のPCB発注の時とほぼ同じです。

パネライズ(面付け)を行なったり、基板色(黄色・黒色・白色)の変更といったオプションも用意されています。

MEMO
フレキシブル基板では標準となる黄色以外に黒色や白色を選択することも出来ますが、大きくオプション料金が追加される項目となります!

また、通常のPCBでは大きくオプション料金が追加される表面仕上げ(Surface Finish)となるENIG(無電解金メッキ加工)が標準仕様となっています。

ポリイミド・FR4・ステンレス鋼・3Mテープといった補強材(Stiffener)を入れるオプションも用意されていますが、正直このあたりはよく分かっていません!

[Remove Order Number]の項目は[Specify a location]を選択し基板製造番号を基板裏の目立たない位置に入れる指定をしたのみで、それ以外は全てデフォルトで選択されている項目を指定して発注しました。
標準価格の15ドルで製作することが出来ます。(基板5枚)

フレキシブル基板の発注自体は通常のPCB発注の時と同じなので、ガーバーファイルの用意やJLCPCBでの発注方法などこちらの記事で詳しく解説しているので参考にして頂ければと思います。

【電子工作】はじめての基板製作!JLCPCBさんに基板を発注してみました。ユーザー登録・データ納品・基板到着までの一連の流れをご紹介!

フレキシブル基板の設計について

先述のようにフレキシブル基板の発注に関してはほぼ通常のPCBを発注する時と同じ要領で出来るので簡単なんですが、基板設計に゙関してはいろいろと工夫?する必要があるようです。
フレキシブル(自由に曲げられる)構造の基板となるので、銅箔の断線を対策するというものが多いようです。

InstagramでPCBの製作に詳しい方からいくつかアドバイス等を頂いたのですが・・・
理想的なフレキシブル基板の設計となるようにそれら項目を全て取り入れて設計するのは今の私のスキルでは難しく、まずは実際に製作し実物を触ってみないとよく分からないということで通常のPCB設計からある程度フレキシブル基板に対応させた段階で発注しました。

参考にさせて頂いた項目を少し見ていきます。

曲線のトレースを使用する

フレキシブル基板は銅箔(配線)を絶縁体となる薄いフィルム層で覆っているという構造なので、曲げ(可動)に対して銅箔の断線が起こりやすくなります。

そのため曲げ方向に対して垂直を保つように配線するのがベストとなるのは想像出来るのですが、実際の基板設計においてはそのような理想的な配線に出来ない場合の方が多いと思います。

角張った配線は無くし曲線での配線にするのが望ましいようですね!

KiCadで配線を引く際、標準ではこのような角張ったラインになります。

これを曲線配線にしたい場合は、[command]+[/](Windowsでは[Ctrl]+[/])で切り替えることが出来ます。
こんな感じですね!

今回発注した基板では極力曲線でトレースするように配線してみました。

ハッチングパターンの使用

通常のPCBではGNDプレーンを設置する際に「ベタ塗り」により連続した銅層を作りますが、フレキシブル基板では柔軟性を維持するために『ハッチングパターン』を使用するのがいいようですね!

ハッチングパターンにすることによりベタで全てを銅箔で覆ってしまうより柔軟性が良くなるようで、理想はハニカム構造のような6角形の形状にするのが望ましいようです!

KiCad7.◯ではハッチングパターンを作る機能が標準で用意されています。

45°の向きにTOP/BOTTOMともにこのようなハッチングパターンで製作しました。

KiCadのハッチングパターンに関してはこちらの記事も参考にしてください!

【KiCad / PCB】ベタGNDのハッチングパターンを試してみました!

ディアドロップの使用

基板発注後にSNSのコメントで『ディアドロップ』という用語を初めて教えて頂いたのですが、フレキシブル基板ではディアドロップの使用も望ましくなるようです。

今回製作した基板では端子部分(パッドと配線の接合部分)は曲げにより時間の経過とともに銅箔の疲労による断線が起こりやすくなるため、発注時のオプション項目にある補強材を入れたり、またディアドロップによる配線が望ましくなるようです。

このような接合部分ですね。

通常のPCBで引くこのような直線的な接続ではなく、

先細りするような配線(ディアドロップ)にするのが望ましいようです!

またビアやパッド部分は曲げによる負荷がかかると銅箔と基板との接着が低下しやすくなるので、スルーホールのメッキ部分にサポート(アンカー)を入れるといった対策も望ましいようです。

今回発注した基板ではディアドロップによる配線は行なっていないのですが、ディアドロップの配置はこちらもKiCad7.◯から標準機能として搭載されています。

通常の手順で配線したあと、[ツール]→[ディアドロップを追加]から

形状やサイズ等を指定することにより配置する事が出来ます。

こんな感じです!

初フレキシブル基板の製作で意識して作ってみたポイントをいくつか挙げてみましたが、理想的な基板として製作するにはまだまだ多くのテクニックがあるようです!

SNSでアドバイスや参考サイト等を教えて頂き、見様見真似で今回設計してみたのですが・・・
趣味レベルで製作&使用するものなのでそれほどシビアになる必要はないかと思いますが、ある程度知識として持っておくと理解も深まりますね!

フレキシブル基板の設計に関して参考になるサイトのリンクをいくつか貼っておきます。

参考 Flexible PCBs (Part III) – Design Tips for Effective PCB Manufacturing and to Improve Product QualityQualiEco Circuits Ltd. 参考 フレキシブルプリント基板設計のベストプラクティスAltium

最後に!

今回フレキシブル基板を試す機会があったのでテスト的にArduinoとして製作してみました。
フレキシブルなArduinoとしてはおそらく実用性は無いと思いますが、実際に製作し出来上がった基板を触ってみると設計時に頂いたアドバイスなどの内容も理解しやすく良かったと思います。

JLCPCBでは15ドル(標準料金)からと比較的安価な価格でフレキシブル基板の製造を行うことが出来ます。
便利な用途やアイデア等をお持ちの方、また私のようにどんなものなのか雰囲気を確かめてみたいとお考えの方も手軽な価格でフレキシブル基板を試すことが出来るのがいいですね!

パーツ実装&動作確認後、製作したフレキシブルArduinoについてもご紹介出来ればと思っています。

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