リポバッテリーやリチウムイオン電池の充電に使える『TP4056モジュール』は電子工作をやられている方ならご存じの方多いと思います!
充電コントローラーICにTP4056が使われた1セル(シングルセル)専用のバッテリー充電モジュールです。
リポバッテリーの扱いには結構気を使うわけですが、このモジュールは安価で入手する事ができ保護回路も入っているためリポバッテリーやリチウムイオン電池を使った工作などで便利に使うことが出来ます。
市販されているTP4056モジュールにはいくつか種類があるのですが、このモジュールに接続して使用するバッテリーに保護ICが入っているのか、またその有無が分からないという場合もあるのでバッテリー保護IC(DW01)も搭載されたタイプのモジュールを使うのがいいと思います。
TP4056とDW01という構成のモジュールはAmazonなどでも入手しやすく1個単価100円ほどで販売されています。
安価な割に1セルバッテリーの充電&使用で便利に使えるモジュールなので、電子工作でこれまで製作したものにいくつか使っています!
そしてこの市販されているTP4056モジュールをより便利に使えるように、PD充電器からの充電を可能にし出力端子の配置を変えるなど少し手を加えたクローンモジュールを製作してみました!
目次
TP4056クローンモジュールの製作
TP4056モジュールとは?
電子工作でリポバッテリーや18650といったリチウムイオン電池を扱う場面は結構多いと思います。
TP4056モジュールは1セル(シングルセル)専用のバッテリー充電モジュールとなり、工作用途でも便利に使えます。
TP4056モジュールに関しては以前こちらの記事でまとめているので基本的な使用方法等は参考にして下さい!
冒頭でご紹介したようにTP4056モジュールにはバッテリー保護チップ(DW01)がセットで搭載されたものを使うのが安心です。
またTP4056モジュールはUSB端子の形状がMiniUSBやmicroUSB、Type-Cになったものが市販されています。
USB端子の形状が違うだけで内部の構成はどれも同じなんですが、今ではType-C端子になったものを使うのが何かと便利だと思います。
・・・なんですが、Type-C端子になったものはコネクタのCCピンにプルダウン抵抗が入っていないようでPD充電器から使うことが出来ません!
これが何気に不便!
TP4056クローンモジュール製作に至った経緯
今回製作したTP4056モジュールのクローンボード製作に至った経緯は、以下2ヶ所に手を加えたいという思いからです。
- PD充電器からも使えるようにしたい!
- 出力端子及びバッテリー端子の配置を変えたい!
①PD充電器からも使えるようにしたい!
Type-C端子になったTP4056モジュールを使うことが多いのですが、市販されているものはPD充電に対応していません!
Type-C端子のCCピンにプルダウン抵抗が入っていないからというよくあるパターンのものとなり、もちろんType-A to Type-Cケーブルからは問題なく使うことが出来ますが、Type-C to Type-Cケーブルでは使うことが出来ずこれでは何かと不便です。
このモジュールはUSB端子から5Vを取り出せれば使えるので、基板上のUSB端子まわりに5.1kΩのプルダウン抵抗を取り付けるスペースが有れば解決出来そうですが・・・以前パーツを外しパターンを確認したことがあるのですが、これはちょっと無理そうです!
このような製品は身の回りに結構あるため、先日このようなアダプタを製作しました!
市販されているTP4056モジュールもこのアダプタで対応する事が出来るのですが、出力端子の配置も変えたかったことから今回自作することにしました。
②出力端子及びバッテリー端子の配置を変えたい!
次に端子の配置を変えればピンヘッダーでの使用以外にプラグを取り付けたりも出来るので便利になりそうです。
市販されているTP4056モジュールのバッテリー接続端子と駆動する負荷に接続する端子の配置は以下のようになっています。
リポバッテリーを接続して使う場合、これでは少し使いづらくなります。
市販されている1セルのリポバッテリーにはPH2.0プラグが取り付けられていることが多いのですが、上記配置ではバッテリーを直接プラグで接続する事が出来ません。
そのためピンヘッダー以外にプラグ接続も出来るように端子の配置をこのように変えました。
これでこのようにプラグを取り付けて使うことも出来るようになります。
簡易的に1セルリポバッテリーの充電器として使うことも出来るので便利になりますね!
上記2ヶ所に手を加えたTP4056クローンモジュールとして自作してみました!
回路構成 & ボードイメージ
まず回路構成です。
オリジナルボードとほぼ同じ構成です。
バッテリー充電チップにTP4056を使いバッテリー保護チップDW01、そしてDW01単体では直接電流を止める機能がないため2個のNチャンネル型FETが入ったFS8205Aを使い異常時ボディーダイオード通じ電流を遮断出来る構成となっています。
ボードサイズや形状(切れ込み部分は面付けの関係でカットしました)、ピンの位置などは全てオリジナルのものに合わせています。
FS8205A(TSSOP-8)チップは小さなパッケージのチップFS8205S(SOT23-6)で代用することも可能なのでボードサイズをさらに小さく作ることや独自の形状で作ることも出来たのですが、TP4056モジュールを使ってこれまで製作したものに差し替えて使うことも出来るようにボードサイズやチップサイズはオリジナルのものに合わせて製作しました。
オリジナルのボードは非常に安価で販売されているので、リフロー等で主要パーツ(TP4056/DW01/FS8205A)を取り外し今回製作したクローンボードに載せ替えて使うといったことも出来るようにしています。
また入力側(5V)はUSB端子以外にVIN端子からの入力も出来るようにしています。
JLCPCBに基板発注
基板の発注はJLCPCBを使いました。
通常の単体基板として発注する場合、基板5枚で約500円ほど(送料区分はOCS NEPを選択)で製作する事が出来ますが、今回JLCPCBに面付け依頼を行い発注しました。
TP4056モジュールはこれまで製作で使ったものをこの自作ボードに入れ替えたり、また今後使う機会も何かと多いと思うので3×5枚面付けで発注し実質75枚の基板を1200円ほどで製作することが出来ました。
単体の基板データ(ガーバーファイル)は以下からダウンロード出来るようにしておきます。
何かの参考になればと思います。
TP4056 Custom Module(Gerber)
JLCPCBでは単体の基板データを使い面付けを依頼することが出来ます。
単体基板データを使い[JLCPCBによる面付け(Panel by JLCPCB)]を選択し面付けを依頼する方法も少し見ておきます。
通常の要領でガーバーファイルをJLCPCBのサイトにアップロードします。
単体基板データを使いJLCPCBに面付け依頼を行うので、[納品形式]は[JLCPCBによる面付け]を選択します。
[パネル形式]に面付けしたい枚数(列×行)を選択します。
単体基板の時と同様に面付け後の基板サイズが100mm×100mm以内に収まるサイズだと基板製造料金がお安く、またOCS系の送料区分の選択や料金自体が安くなるのでトータルコストを抑えることが出来ます。
今回3×5面付けで100mm以内に収まるように面付けを依頼しました。
またJLCPCBに面付けを依頼する場合、エッジレールを付けることも出来ます。
エッジレールはステンシルを同時発注する場合にその位置合わせで使うことも出来ますが、今回は基板製造番号を逃がすという目的でエッジレールを入れて発注しました。
両面に5mmのエッジレールを入れても100mm以内に収めることが出来ます。
こちらが実際に出来上がった基板ですが、上手く基板製造番号をエッジレールに逃がすことが出来ました。
通常JLCPCBでは基板製造番号(発注番号)を指定位置に入れるのは無料で出来ますが、削除するには1.5ドルの追加料金がかかってしまいます。
また基板製造番号を指定位置に入れる指定を行ってしまうと、おそらく面付けした全基板に製造番号が入ってしまい今回製作したような小さな基板では他のシルク文字の邪魔になったり見にくくなってしまいます。
[発注番号の削除]の項目は指定せずエッジレールを付けておけば自動的にそちら側に発注番号が入り無料なのでお得ですね!
今回の発注で選択した項目はこんな感じです!
送料区分はOCS NEPを選択しトータル1200円ほどで実質75枚の基板を作ることが出来ます。
JLCPCBの基本的な基板発注方法に関してはこちらの記事でまとめています。
また[JLCPCBによる面付け]を選択して面付け依頼を行う方法はこちらの記事でまとめています。
あわせて見て頂ければと思います。
パーツの実装 & 動作確認
送料区分はOCS NEPを選択し発注から8日で手元に基板が届きました。
150円ほどの送料ですが1週間ほどで届くので、ほんと毎回助かっています!
パーツの実装はMHP50を使って行いました。
Miniwareさんから新しくリリースされたMHP30の後継機となるミニリフロー装置です。
ホットプレートサイズが大きくなり、PD100W電源に対応するなど非常に優秀なリフロー装置です!
MHP50の詳しいレビューに関してはMHP30の記事に後日追記しておきます。
MHP50はMHP30からホットプレートサイズが大きくなっていますが、面付け基板などホットプレートサイズより大きくなる基板を扱うパーツ実装はこのようなスタンドがあると非常に便利です。
MHP50ユーザーの方はこちらの記事も参考にして頂ければと思います。
リポバッテリーを扱うものなので入念にチェック・・・動作確認も問題なく正常に動作してくれました!
5枚を一気に実装してみましたが、もう少し作っておきたいのでステンシルも一緒に発注しておけばよかったかなと・・・
パーツ一覧
今回使用したパーツ一覧です。
使用パーツ | リファレンス(定数) | 入手先 |
抵抗(0603) | R1/R3 5.1kΩ | AliExpress |
R2/R6/R7 1kΩ | ↑ | |
R4 100Ω | ↑ | |
※R5 4kΩ (充電電流300mA) | ↑ | |
コンデンサ(0603) | C1/C3 0.1μF | AliExpress |
C2 10μF | ↑ | |
LED(0603) | D1(スタンバイLED) | AliExpress |
D2(チャージLED) | ↑ | |
端子 | J1 Type-Cコネクタ | AliExpress / 秋月電子 |
IC | U1 TP4056 | AliExpress |
U2 DW01A | AliExpress | |
U3 FS8205A(TSSOP-8) | AliExpress |
最後に!
市販されているTP4056モジュールは単価100円ほどと非常に安価で販売されているのでこのようなカスタムボードを自作すると逆にコストがかかってしまいますが、使い勝手は良くなるので個人的には作ってみてよかったと思います。
販売されているボードから主要パーツ(TP4056/DW01/FS8205A)は使い回せるようにしているので、リフロー等で今回製作したカスタム基板の方に簡単に付け替えて使えるようにしておいたのもよかったと思います。
電子工作用途でよく使うモジュールでさらに使いやすくなるように手を加えてカスタムさせてみたいというものはいくつかあるのですが、その手始めとしてTP4056充電モジュールのカスタムボードを今回作ってみました。
何かの参考になればと思います・・・。
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