以前、ブレッドボードの両サイド電源レーンに挿して使える電源ボードを製作したことがあります。
5V/3.3Vを個別で供給出来たりと、今でも便利に使っています。
このような電源ボードがあれば、ちょっとしたテストやプロトタイプ回路を組む時に安定化電源などを用意する必要がなく手軽に電源供給が行えるので重宝しています。

しかし、テスト回路を組む際に片側6列タイプのブレッドボード(サンハヤト製)を使うこともよくあるのですが、6列タイプのものではレーン幅が合わず使うことが出来ません!
ブレッドボードの種類に限らず主に動作確認用として使える小型な電源ボードがあればと感じる場面が多々あったことから、ミニサイズの電源ボードも製作してみることにしました。
これくらいのサイズで作りたいんだよねー!
スルーホールパーツ使うと入んないから…なんだけど、背面のSMDピンヘッダーを手はんだしてピッチズレないかしらと考えてる・・・ pic.twitter.com/QMbcQlePLf
— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) July 3, 2025
目次
ブレッドボード用ミニ電源モジュールの製作!
USB Type-Cからの入力で、3.3Vまたは5Vを出力できるブレッドボード専用の小型電源ボードを製作しました。
ブレッドボード専用の電源モジュールはこれまでいくつか製作したことがあるのですが、今回はブレッドボード上に組む回路スペースを極力広く取れるよう、省スペースな片側差し込みタイプのボードとして設計してみました。
一般的によく使われる片側5列タイプのブレッドボードや6列タイプのものでも使え、電源レーンに直接挿し込んで電源供給を行うことが出来ます。
基板設計
今回製作した電源ボードのコンセプトは、ブレッドボードの電源レーンに直接挿し込んでマイコンまわりで使える3.3V or 5Vの電源供給が行えるといったもので、ブレッドボード上に組む回路スペースを広く取れるようにボードサイズは極力コンパクトに作りました。
電源レーンに挿し込んだ際に列表記のプリントが隠れないように、また一般的によく使われる片側5列タイプのブレッドボード以外に6列タイプのものでも使いやすくなるように、3D CAD上でボードサイズやピンヘッダーの位置を決めてから基板設計に移りました。
表面実装のピンヘッダーくん、リフローだとおそらく正規の位置(センター)にピッタリ実装出来るはずだけど、手はんだとなると微妙にズレて綺麗にブレッドボードにハマるのか🤔
ってのがある… pic.twitter.com/YFsxANIc5T— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) July 7, 2025
私がよく使うブレッドボードにサンハヤト製の6列タイプのものがあります。
通常の5列タイプと違いマイコンボードを挿し込んで使う場合などで、ワイヤーを挿せるピンを多く取れるので便利なブレッドボードです。
6列タイプのものにも使え電圧切替が出来る簡易電源ボードが手元になく不便に感じることが多かったことから、ちょうどいい機会だったので今回製作してみることにしました。
3D CAD上で理想的なボードサイズを決め、この限られたスペースに収まるように使用するパーツ構成は何度か見直しを行いました。
ボードサイズが約37mm×16mmとかなり小型になるため、当初はTPS63000という可変電圧の出力が出来るバックブーストコンバータ(DC-DC)チップを使う予定でボードサイズを想定していたのですが・・・
以前製作したTPS6300xの評価ボードでテストしてみたところ、通電中にフィードバック抵抗の値を変えて出力電圧を可変させる当初考えていた構成では動作が安定しない事が分かったので、少し構成を変えて回路を組むことにしました。
テスト中にチップが焼けた😂
ボードの問題ではなく使い方の問題。自分が想定してた使い方だと問題があること分かったのでヨシとしよう!
チップ取り替えよー… https://t.co/0Idzyvcd90 pic.twitter.com/c0jNmFTkGL
— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) July 15, 2025

TPS6300xシリーズにある5.0V固定出力タイプのTPS63002を使い、3.3V出力はそこからリニアレギュレータを介する構成で組むことにしました。
5V出力側をUSB端子のVBUSに直接接続する構成では接続するPCやUSBハブなどによっては出力電圧が5Vを下回る場合がありますが、昇降圧が出来るバックブーストコンバータを介すことで5V出力を安定して取り出すことが出来ます。
この構成でなんとか想定していたボードサイズに収まりそうなので、この回路構成で基板設計を進めていきました。
データシートの定格上、3.3Vおよび5V出力は最大で1Aほど出力できますが、物理スイッチを介して出力電圧の切り替えを行っているので、実際はスイッチ側の最大定格により500mAほどまでの使用となるかと思います。
電子的に切り替えを行えば物理的なスイッチ定格は問題にならないのですが、ボードサイズの問題で上記のような回路構成にしました。(V1.21ボードとしています)
PCBWayに基板を発注
基板の製造は、PCBWayを利用しました。
動作確認では問題なく使えるようなので、基板データ(ガーバーファイル)をダウンロード出来るようにしておきます。(V1.21ボード)
何かの参考になればと思います。
PCBWayへの発注方法も少し見ておきます。
PCBWayでの基板発注は、[概算の見積価格の確認(仮発注)] → [データチェックを受け最終価格が決定] という流れで進めていきます。
発注項目の選択は特記すべきところはなくデフォルトで選択されている項目から変更する必要はありませんが、小さな基板となるため[Remove product No.]に[Yes(extra+$1.5)]を選択し、基板製造時に任意の位置に入ってしまう発注番号を削除するオプションを選択しました。
レジスト(基板カラー)はお好みで選択して下さい。
通常の有鉛はんだレベラー(HASL)で発注しても特に問題ありません!
またパーツの実装はリフローで行うことを想定していたので、メタルマスク(ステンシル)も一緒に発注しました。
バックブーストコンバータチップTPS63002の実装は、チップ背面にサーマルパッドがあるので手はんだでの実装はおそらく難しいと思います。
ヒートガンやリフローでの実装になるかと思います。
以上、基板のオプション項目およびメタルマスクを選択し基板を発注しました。
ここからガーバーファイルをアップロードしてデータのレビューが行われ、最終価格が決定された後に本発注への流れとなります。
PCBWayでの基本的な基板発注方法は、こちらの記事で詳しくまとめています。
あわせて見て頂ければと思います。

基板の到着
今回配送方法にOCSを選択し、発注から6日で基板が手元に届きました。
一週間かからずに製造された基板が手元に届いてしまう、ほんといい時代ですね!
そして今回も基板と一緒に注文していた、ギフトショップで0 Beans(実質無料)で扱われていたモジュールも届きました!
サイズ&重量が小さいものなら、基板発注のタイミングで一緒に頼んでおくとお得に入手することが出来ます!
PCBWayのユーザー限定で使えるギフトショップは、お得なアイテムが多数扱われているので、基板を発注するタイミングで覗いてみるのはオススメです!

パーツの実装
それではパーツの実装です。
今回の実装で難しいパーツは、TPS63002だと思います。
以前、評価ボードを製作した際に何度か実装したので今回は特に気になりませんでしたが、VSON-10(3×3mm)パッケージでパッド幅が0.24mmと非常に小さなチップとなります。
実装がシビアになってくるパーツはこのTPS62002だけですが、ステンシルを使いこのレベルではんだペーストを塗布出来ていれば問題なく一発でリフローは完了しました。
ちなみに、ステンシルを使ったはんだペーストの塗布ではいつもこれを使っています。
パーツの実装は、MHP50というミニリフロー装置を使いました。
PD電源が使えコンパクトで作業スペースの邪魔にもなりにくい、自作基板の製作でいつも愛用している非常に便利なホットプレートです!

本基板はMHP50のホットプレートサイズ(50mm×50mm)に収まる基板サイズなので、加熱温度を段階的に上げていくリフロープロファイルを使い実装を行いました。
MHP50の便利な機能の一つです!
一発で綺麗にパーツを実装することが出来ました!
リフローの様子!
セルフアライメントでキュッとなるのが毎回気持ちいい… https://t.co/CeTpfcZjug pic.twitter.com/ELnHJhMglH— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) August 2, 2025
基板表面のSMDパーツの実装が完了したら、スイッチと背面にピンヘッダー(SMD)を手はんだで取り付けます。
背面のピンヘッダーはブレッドボードに挿し込む部分となるので、ピッチがズレないように仮固定を行い、なるべくパッドのセンター位置になるように取り付けます。
以上で完成です!
動作テスト
ひとまず無負荷での動作テストを行ってみました。
入力電圧が多少低下しても出力電圧は一定となっているので問題無さそうです!
完成!
ひとまず無負荷でテスト…
入力電圧が多少下がっても出力は一定で取れてるので、問題なし! pic.twitter.com/UbcDhJf2Ip— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) August 2, 2025
テスト回路を組む際に入力電圧の低下が気になる(影響する)ものなどは安定化電源を接続してテストすることはよくありますが、簡易的なテストでは面倒なのでこのようなコンパクトな電源ボードが使えれば便利な場面も多いと思います!
基板製作を行う際に、このような感じでブレッドボード上にテスト回路を組むことがよくありますが、スペースを占有することなく便利に使えそうです!
電源レーン以外の場所に挿し込むと短絡状態となってしまうので、使用には注意して下さい!
使用パーツ一覧
今回使用したパーツの一覧です。
| パーツ | 定数 | 入手先 |
| コンデンサ (0603) | C1/C6 100nF C2/C3/C4/C5/C7/C8 10μF | AliExpress |
| ヒューズ (1206) | F1 1.0A | AliExpress |
| USB端子 | J1 Type-C端子(16P) | AliExpress / 秋月電子 |
| インダクタ | L2 2.2μH(4mm×4mm) | AliExpress |
| LED (0603) | LED1/LED2 | AliExpress |
| 抵抗 (0603) | R1/R2 5.1kΩ R3 1kΩ R4 100R R5 10kΩ | AliExpress |
| DC-DC | U1 TPS63002 | AliExpress |
| 3.3V LDO | U2 TLV75733PDBVR | AliExpress |
| ピンヘッダー | J2/J3 2×3P(SMD 2.54mmピッチ) | AliExpress |
| スイッチ | SW1/SW2 | 秋月電子 |
最後に!
今回製作した電源ボードは、限られたスペースの中に昇降圧DC-DCとリニアレギュレータを収め、ブレッドボードでの使いやすさを重視したコンパクトな設計としました。
USB電源だけで安定した動作電圧を得られ、ブレッドボードの回路スペースを極力妨げないサイズ&形状のため、ちょっとした実験や開発時に便利に使えそうです。































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