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【電子工作 / 自作基板】4ポートUSBハブコントローラーチップSL2.1Aを使ったブレークアウトボードの製作!

先日、自作基板の製作でUSB電源を保護するボードを製作しました。
USB電源ラインを保護するCH217KというスイッチICを使い電源ラインを制御しデバイス側に接続された機器の電源を手動で操作、また過電流や短絡を監視し強制的に電源ラインを遮断するといったボードです。

電子工作でマイコンを扱うことが多いのですが、ボードの初期化(DFUモードに入るなど)やセンサー等をリセットする際にケーブルの抜き差しが面倒になる事が多いことから、手動でUSB電源ラインのON/OFF操作が出来るものがあれば便利そう、ということで製作したものです。
素人の回路設計としてはなかなか便利なものが出来たと思います。

【電子工作 / 自作基板】CH217Kを使ったUSB電源保護ボード『USB Power Toggle』の製作!

自作基板の製作では、パーツ実装後にまず行う短絡チェッカーとしても使え非常に便利です!

このUSB電源のスイッチング&保護ボード(USB Power Toggle)が便利だったので2個製作したのですが、さらに増やし個別で複数使うならUSBハブ機能が付いたものもあると便利かな?

そんな事から同様のコンセプトでハブ機能を持たせ個別ポートを手動でスイッチング、また保護出来るボードも製作しました。
こちらは別記事で詳しく書こうと思っています。(追記しました)

【電子工作 / 自作基板】4ポートのハブ機能が付いたUSB電源保護ボード『4Port USB Power Toggle』の製作!

上記ボードを製作するにあたりCH334やCH335といったよく見かけるUSBハブコントローラーICをいくつか試したのですが、USBスイッチICとの組み合わせや、またそれらを使い個別ポートをマイコンで制御する必要があることから最終的に回路があまり複雑にならずシンプルに使え入手性も良いSL2.1Aという4ポートのUSBハブコントローラーチップを使うことにしました。

そしてこのボード製作の試作段階で今後便利に使えそうなハブコントローラーチップだったので、今回ご紹介するSL2.1Aチップを搭載したブレークアウトボードをまず製作し試作やテストを進めていました。

4ポートUSBハブコントローラーチップSL2.1Aを使ったブレークアウトボードの製作!

冒頭でご紹介したUSB電源のスイッチング&保護ボード(USB Power Toggle)が便利だったので、これにハブ機能を付け個別ポートを制御・監視出来るボードの製作を進めていました。

そして最近始めた自作キーボードの製作でUSBハブ機能が付いたものも作れないかな?といったことを考えていたこともあり、USBハブコントローラーチップはWCH社製のCH334やCH335など既に入手していたものがいくつか手元にありました。

試作回路を組みテストした段階でSL2.1Aを使う方向になったのですが、ブレッドボードで試作回路を組んだ時に4ポート分の回路を組むのが大変で、さらに個別ポートの動作や挙動などをテストする際に接続を変えたりと・・・、結構面倒になったことから試作段階で今回製作したSL2.1Aのブレークアウトボードを先に作り動作テスト等を行っていました。

SL2.1Aはシンプルな回路設計(ほぼワンチップで組めます)で便利に使えるチップだったので、ブレークアウトボードとして作っておけば今後テスト等で使う機会も多いだろうという考えからです。

SL2.1A 4ポートUSBハブコントローラーチップ

USB3.0を扱ったものは私のように電子工作を趣味でやっている素人としては回路設計が難しくなってくるかと思いますが、USB2.0なら比較的簡単に実現することが出来そうです。
安価で入手することが出来るUSBハブコントローラー専用のICチップがあるからです。

今回製作したブレークアウトボードで使っているSL2.1Aもまさにそれで、USB2.0となりますが必要となる周辺パーツが少なくほぼワンチップで使える4ポートのUSBハブコントローラーチップとなっています。
国内ではaitendoさんでも扱われているようで、またAliExpressでも多くのショップで扱われている入手性の良いチップなのもいいですね!

SL2.1にはパッケージの違いでSL2.1A(SOP-16)とSL2.1s(SSOP-16)があります。
今回製作したボードで使ったものはSL2.1Aとなります。

SL2.1Aについて簡単にまとめておきます。
SL2.1Aは外部電源用のフィルタコンデンサ数個のみとほぼワンチップで使える4ポートタイプのUSBハブコントローラーチップです。
発振器(クリスタル)が内蔵されているので、電源ラインに数個コンデンサを接続するだけで基本的に使えます。(動作を安定させるために外部発振器の接続が推奨されています)

SL2.1Aについて!
  • USB2.0 ハブマスター・コントロールチップ
  • チップ電源電圧は5Vで、内部で5~3.3Vを統合
  • 外部電源にのみフィルタリングコンデンサを使用
  • 外部クリスタル(12MHz)または内蔵クリスタルで動作。(内部クリスタルを使用する場合はXINを接地)
  • USB2.0ハイスピード(480MHz)/USB2.0フルスピード(12MHz)/ロースピードモード(1.5MHz)をサポート

詳しくはデータシートを参照して下さい。

参考 SL2.1AデータシートLCSC ELECTRONICS

基板設計

ブレッドボードやユニバーサル基板で使えるように各ポート端子のピッチは2.54mmで設計し、SL2.1Aを動作させるための最小の回路構成で組んだブレークアウトボードとなります。(外部クリスタルを使用)

ホスト側はピンヘッダーに加えType-C端子も取り付けています。

SL2.1Aの電源ラインにそれぞれフィルタリングコンデンサを接続し、出力側(デバイス側)の各ポートの電源ラインに電流スパイクの吸収や電圧安定化のため100μFの電解コンデンサ(タンタルコンデンサを使いました)を接続したシンプルな回路構成となりました。

ブレッドボードで使う際に一般的によく使われる片側5列タイプのもので両サイド2ピッチ分接続スペースが取れるボードサイズにしています。

SL2.1Aまわりの回路構成はシンプルに作れるのでピッチ変換基板を使ってもよかったのですが、最小構成で組んだこのようなボードがあるとテストでは便利に使えると思います。

JLCPCBに基板を発注

JLCPCBに基板を発注しました。
このサイズの基板であれば送料を入れても500円ほどで製作することが出来ます。

基板データ(ガーバーファイル)をダウンロード出来るようにしておきます。
何かの参考になればと思います。

発注の際に選択する項目は特記すべきところはありませんが、基板製造時に任意の位置に入ってしまう製造番号の削除は無料で出来るようになったので、[PCB上のマーク]は[マーク除去]を選択しておくと余計なシルクプリントがされないのでいいと思います。
PCBカラーはお好みで!

基板製造料金が2ドル、配送方法にOCS NEPを選択すればトータル4ドルほどで製作することが出来ます。

安価なOCS NEPを選択した場合でも発注から8日ほどで手元に基板が届くと思います。

パーツの実装

パーツの実装はリフローで行いました。
ある程度はんだ作業に慣れている方であれば手はんだでの実装も十分可能なサイズのパーツばかりです。

リフロー装置はMHP50を使いました。
いつも自作基板の製作で愛用している非常に便利なミニリフロー装置です。

【電子工作 / PCB】ミニリフロー装置『Miniware MHP50』を使ってみる!加熱性能や安全設計はMHP30から全て引き継がれ使い勝手がさらに向上した便利なリフロー装置です

ピンヘッダーを取り付けて完成です!

使ってみる

デバイス側の4ポートはブレッドボードで使いやすいようにUSB端子は取り付けていないので、電源ライン(VBUS/GND)とデータライン(D+/D-)をUSB端子のピッチ変換基板などに接続して使う形となります。

Type-C端子のピッチ変換基板は安価で販売されています。

Type-C端子のピッチ変換基板は私の環境ではテスト等で使用頻度が高いので、以前自作したこちらのボードをいつも使っています。
用途によりCCラインにプルアップ抵抗またはプルダウン抵抗を取り付けたり、また取り付けないもの、ブレッドボードの電源レーンに直接電源供給を行うか否かの選択が出来るもので、いくつか作っておくと便利です。

【電子工作 / PCB】ブレッドボード・ユニバーサル基板で便利に使えるType-Cコネクタ変換基板(DIP化基板)を自作してみました!

これだけで4ポートUSBハブとして使えるのは便利ですね!
接続したPCには特にドライバを入れる必要もなく、デバイス側にUSB機器を接続すると認識されます。

使用パーツ一覧

今回使用したパーツの一覧です。

パーツ定数入手先
タンタルコンデンサ(3528)C1/C2/C3/C4 100μF
(B 10V 100μF 107A)
AliExpress
コンデンサ(0603)C5/C6/C7 10μFAliExpress
抵抗(0603)R1/R2 5.1kΩAliExpress
USB端子J5 Type-C端子AliExpress / 秋月電子
ハブコントローラーICU1 SL2.1A(SOP-16)AliExpress / aitendo
クリスタルY1 12MHz(3225)AliExpress
その他ピンヘッダーーーー

最後に!

SL2.1Aは安価で入手性も良く、そしてシンプルな回路構成でUSBハブ機能が使えるのが便利だと思います。

4ポートバージョンのUSB電源保護ボードを製作していた時にブレッドボードでのテストをしやすくするためにブレークアウトボードとしてSL2.1Aに必要な最小限の構成で製作したもとなります。
今後自作基板の製作で使うことも多いチップだと思うので、このようなボードを作っておくとテスト等で便利に使えると思います。

そしてこちらのハブ機能を付けたUSB電源保護ボードの方も無事完成させることが出来ました。

また別の機会に詳しくご紹介出来ればと思います。

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