【自作基板 / 電子工作】RP2350を使った初めての基板設計。最小構成で組むRP2350A/RP2354Aブレークアウトボードの製作！[その② パーツ実装・動作テスト]

前回のこちらの記事の続きとなります。

【自作基板 / 電子工作】RP2350を使った初めての基板設計。最小構成で組むRP2350A/RP2354Aブレークアウトボードの製作！[その① 基板設計・発注]

Raspberry Pi Pico2で使われているRP2350を使った初めての自作基板製作の話となります。

秋月電子さんなど国内ショップでもチップの取り扱いが開始されたことから、RP2350を使った開発ボードや自作ボードが製作しやすくなりました。

Raspberry Pi公式さんが公開されている『ハードウェア設計ガイド』やKiCadデータ『RP2350 Minimal』は非常に参考になり、これらを参考に製作を進めていったのは前回書いた記事の通りです。
初めてRP2350を使った基板設計をお考えの方は、まず公式さんが公開しているこれら資料を参考に進めていくと理解も深まると思います。

そしてPCBWayに発注していた基板が届き、パーツ実装&動作テストを終えました。
特に問題は無いようなので、前回の続きとしてパーツの実装から動作テストまでの製作過程を書いていきたいと思います。

最小構成で組んだこのようなボードがあると、Raspberry Pi Pico2といった既存ボードを使う場合と比べ内部的に使われている機能(回路)などに左右されること無くプロトタイプのテスト回路が組めるので便利な場合も多いと思います。

動作確認がてら・・・
RP2350でNESエミュ動かせた🎮

テストボード作れたので、ここから次の展開へと…😏 pic.twitter.com/jUuFbsdmyL

— ガジェット大好き！！ (@smartphone_jp1) April 30, 2025

最小構成で組むRP2350A/RP2354Aブレークアウトボードの製作！[その② パーツ実装・動作テスト]

PCBWayから基板が到着

PCBWayに製造を依頼していた基板は、配送方法にOCSを選択し発注から8日ほどで手元に到着しました。

前回の記事では基板の表面処理に通常のHASLを選択した場合の参考価格を載せていますが、実際に私が発注したものはオプションのENIG(無電解金フラッシュ)を選択したものとなります。

綺麗な仕上がりですね！

最近はほぼENIGを選択して基板を発注することが多いのですが、通常のHASLと比べるとパッド表面が非常に平坦に仕上がり細かいピッチのパーツ実装には適しているようです！

表面処理の違い！
←ENIG HASL→

比べてみると平らで綺麗ね！ pic.twitter.com/l9TZgdpUhp

— ガジェット大好き！！ (@smartphone_jp1) April 7, 2024

初めてRP2040の基板実装をした時は結構ブリッジしてしまい後からコテを使って修正するのが面倒だと感じていましたが、表面処理にENIGを選択するようになりそのようなことがかなり減ったような気がします。

今回扱うRP2350A(RP2354A)はQFN-60とRP2040のQFN-56からチップサイズ(7mm×7mm)は同じですがピン数が増えています。(下写真はRP2350AとRP2350Bの比較です)

このようなピッチの狭いパーツを実装する際には、基板表面処理に通常のHASLを選択する場合と比べENIGではパッド表面に上手くはんだペーストが回り込んでくれるのでリフロー後のブリッジといった不具合なども起きにくくなる印象を受けます。

また今回製作したこのようなブレークアウトボードはテスト環境で便利に使えるので、後々追加で増やしていくことも想定できます。
ENIGではパッド表面が酸化しにくく保存性にも優れています。

パーツの実装

ベースパーツのパッケージを0603にしているので、はんだ付けに慣れている方なら手はんだでの実装も十分可能だと思いますが・・・
しかしRP2350の位置合わせは、手作業だと結構難しいと思います！

リフロー(またはヒートガン)を使い実装する場合はセルフアライメントにより正規の位置にチップが乗ってくれるので、位置さえ合ってくれればブリッジ等の修正が必要な場合でも比較的簡単に出来ます。

それではパーツの実装です。
ステンシルを使いはんだペーストを塗布します。

今回製作した基板は、GPIOピンのラベルを見やすいようにボードサイズは余裕を持ったサイズにしています。

そのため、ブリッジしやすいRP2350Aチップまわりのパーツは手はんだで修正出来るようにコテが入るスペースを確保して配置しているので気持ち的に楽に実装していけます。

パーツの実装はMHP50というミニリフロー装置を使いました。
自作基板の製作でいつも愛用している非常に便利なリフロー装置です。

【電子工作 / PCB】ミニリフロー装置『Miniware MHP50』を使ってみる！加熱性能や安全設計はMHP30から全て引き継がれ使い勝手がさらに向上した便利なリフロー装置です

Miniware MHP50 ミニホットプレートキット

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前回の記事でも書いたのですが、RP2350はRP2040から電源部分の回路が見直されています。
1.1V内蔵リニアレギュレータからスイッチングレギュレータ(DC/DC)に変更され外部接続するパーツが増え、それらパーツの配置・レイアウトや使用する推奨パーツについてもラズパイのエンジニアさんが検証されています。

RP2350Aチップは秋月電子さんなど国内ショップでも扱われるようになり入手性は良いのですが、推奨されているインダクタだけは現状国内ショップではまだ入手出来ないようです。(LCSCでは扱われています)

今回初めてのRP2350Aを使った自作基板ということでラズパイ公式さんが推奨されているパーツ&レイアウトで設計したのですが、このインダクタだけが入手出来なかったためひとまず手元に余っていたRaspberry Pi Pico2から拝借することに・・・
0806サイズのチップインダクタで、コイルの巻き方向(極性)が分かるものです。

ラズピコ2さん、ちゃんと入手出来るようになったら戻してあげるからねー！

他の使用パーツはごくごく一般的なパーツばかりです。

実装はスムーズに行えました。
MHP50のホットプレートよりも若干大きな基板サイズとなりますが、これくらいなら一度のリフローで完了出来ます。
ホットプレートサイズに収まる基板なら、MHP50のリフロープロファイルを使いプリヒートや待機時間等を設定してリフロー出来るので便利です！

実装は一発OK、完璧で綺麗な仕上がりです！
MHP50くん、ホント便利なミニリフロー装置です。

動作確認

パーツの実装が出来たので動作確認です。

まずフラシュチップのCSピン(チップセレクトピン)のジャンパーの選択です。
RP2350Aチップで使う場合、フラッシュが内蔵されていないのでジャンパーをこの位置で短絡させておきます。

フラッシュが内蔵されたRP2354Aチップで使う場合、フラッシュチップまわりのパーツは全てカット出来るのですが・・・

セカンダリフラッシュとして使う場合は、ジャンパーを3の位置で短絡させて使います。
その際のCSピンは、使えるピンで一番近いGPIO0としています。

ジャンパーを短絡させたら通電して動作確認なのですが、初めての電源投入では電源ラインの短絡チェックは必須ですね！
以前製作したUSB電源管理ボードが便利に使えました。

電源ラインの短絡があると強制的にオフにしてくれる短絡チェッカーとしても使えるので、自作基板製作では非常に役立っています！

【電子工作 / 自作基板】CH217Kを使ったUSB電源保護ボード『USB Power Toggle』の製作！

電源ラインの短絡チェックを行い問題無いようなので、ArduinoからLチカスケッチを書き込み動作確認・・・

ボードLED(GPIO25)のLチカ、そして他の全てのGPIOピン(30本)の出力チェックも問題ないようでした！
一発で実装出来るのは気持ちがいいものです。

そして今後製作を考えているRP2350を使ったNESエミュレーターも問題なく動いてくれました。

動作テストとしては十分でしょう！
これからこのボードを使いRP2350を使ったプロトタイプのテスト回路を組むのに便利に使えそうです！

動作確認がてら・・・
RP2350でNESエミュ動かせた🎮

テストボード作れたので、ここから次の展開へと…😏 pic.twitter.com/jUuFbsdmyL

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ピンヘッダー or ピンソケット(20P)を取り付けて完成です！

このような最小構成で組んだボードは、上記動画のように外部に組んだ他の回路やボードと接続してテスト等で使うことが想定できます。
使用するワイヤー(オスまたはメス)に関係なくGPIOピンに接続出来るように、ピンヘッダー&ピンソケットという組み合わせで取り付けました。

これは使用環境やお好みで・・・！

推奨されているレイアウトについての補足！

少しパーツの配置、レイアウトについて補足しておきます。

RP2350では1.1V内蔵リニアレギュレータからスイッチングレギュレーターに変更されたため、RP2040から電源部分のピンが5本追加され外部接続する必要があるパーツが増えています。

この部分の推奨パーツやレイアウトに関しては、『ハードウェア設計ガイド』以外にRP2350のデータシートにも詳細に記載されています。(前回の記事を参考にして下さい)
ラズパイのエンジニアさんが多くの時間を費やし検証された部分になるようです。

そして今回は初めてのテストボードだったので0603サイズのパーツを使いレイアウトしたので気付かなかったのですが・・・

本ボードが無事に動いてくれたので次にRaspberry Pi Pico2互換ボードの製作を考えているのですが、0402サイズのパーツを使う場合だと上記のような配線幅(CをまたいでLに入るライン)を確保することがどうしても難しく！

もう一度、公式さんが公開されているRP2350 Minimalの設計データを見直していたのですが、どうやら公式さんのデータではこの2つのコンデンサのフットプリント自体を微修正？されているようですね！

推奨されているレイアウトで0402パーツを使う場合フットプリントを調整しないと引けないようで、ほんと良く考えられていて参考になりました。

数時間格闘してようやく理解でき、綺麗にレイアウトすることが出来ました。

使用パーツ一覧

今回使用したパーツの一覧です。

推奨されているインダクタ(L1)は現在LCSCでは扱われているようですが、なかなか入手しづらいようです。
RP2350とセットで使うことが推奨されているパーツなので、国内ショップでも扱ってもらいたいものですね！

最後に！

初めてのRP2350を使った自作テストボードが完成しました！
最小構成で組んだこのようなボードは、他の自作基板製作のテスト回路を組む際などで便利に使えそうです。

今回製作したボードはラズパイ公式さんが公開されている資料を参考にほぼコピーしたようなものとなりますが、『ハードウェア設計ガイド』や『RP2350データシート』を読み進め『RP2350 Minimal』のKiCadデータと照らし合わせながら設計を進めていくと非常に参考になり理解も深まりました。

RP235xシリーズのチップは更に使えるGPIOピンの数が増えたRP2350BやRP2354Bがあります。
このBシリーズのチップに対応したMinimalのKiCadデータもラズパイ公式さんが公開されているので、これも参考になりそうです。
同様に最小構成で組んだブレークアウトボードも作ってみようかと考えています。

何かの参考になればと思います・・・

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