自作基板の新たな試みとして静電容量方式のタッチキーを搭載した基板の製作を考えています。
静電容量方式のタッチキー(スイッチ)とは、指とスイッチ(パッド)間に発生する微弱な静電容量の変化からスイッチが押されたか否かの判定を行うといったもので、自作基板の製作で前々から興味を持っており取り入れてみたいと思っていたものです。
PCBにスイッチの役割をする電極(パッド)を作り人の指がパッドに近づくと指先とパッド間がコンデンサのように働き静電容量が発生、そしてこの静電容量の変化を検知してスイッチをON/OFFさせるといったものが静電容量方式のスイッチの概要となります。
(参考:Microchip Technology)
PCBに物理スイッチを設置することなくタッチスイッチのように動作させることが出来るのが面白く、アイデア次第で自作基板の製作では便利に使えそうです!
市販されているテストボードをいくつか入手し試していたのですが、複数のスイッチ判定も上手く読み取り動作させることが出来ました。
朝活、電子工作💡
雑なハードでタッチスイッチを試してる!10msくらいの反応スピードでも問題なさそう!
名刺キーパッド基板とか作れそうね📝QMKのカスタムマトリクスはコンパイル通らないので、ひとまずArduinoで・・・ pic.twitter.com/MpsebkjVoE
— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) October 10, 2024
静電容量方式のタッチキーとして機能するパッドをPCBに作ること自体は比較的簡単なんですが、微小な静電容量の変化を検知して利用するためノイズの影響を受けやすく、また上手く感度調整をしないと感度が高すぎて指先周辺の近接するキーが押されたと誤検出されたり、感度が低すぎるとタッチしてもなかなか反応しなかったりと・・・そのあたりのノウハウは難しくなってきそうです!
上記動画のものは各パッドが1cmほどと小さなものが使われているので反応の感度が高く近接するパッドが押されたと誤検知されることがが多かったので、タッチ検出用のICチップに取り付けるキャパシタ(コンデンサ)の値を変え感度を少し下げ、また各キーの判定にソフトウェア側である程度しきい値を設けてやっていました。
静電容量方式のタッチキー用のパッドをPCBに作り込む場合、パッドサイズが大きくなると感度が下がってしまうため一般的に15mmくらいまでのサイズが推奨されているようです。(参考)
またパッドの形状も正方形や長方形、また円形といったものが推奨されていて三角形のような鋭角なものは感度が悪くなるようです。
ノイズの影響も考えタッチパッド周辺にはGNDベタをシールドとして配置することも推奨されており、通常のベタGNDではなくハッチングパターンにすると効果も大きくなるようです。
さらに感度を下げないためにタッチパッド直下(PCB裏面)にはベタGNDの配置を避けて・・・などなど、自作PCBにタッチキー用のパッドを作る際にはいろいろと考慮して作っていく必要がありそうです。
そのテストも兼ねて、静電容量方式のタッチキーを使った自作基板の製作をいくつか考えています。
目次
静電容量タッチ式スイッチを使った自作基板のイメージ
自作基板の製作で物理的なスイッチを実装するのではなく、指で触れるだけで(または近づけるだけで)スイッチとして反応してくれるタッチキーが使えたらなと思う場面が製作過程でこれまで多々ありました。
例えば以前製作したこちらのミニ動画プレーヤー。
前面に操作用のミニスイッチを2つ取り付けているのですが、物理スイッチを取り付けるとその分出っ張りが出来てしまいます。
操作感やデザイン的にディスプレイ面より出っ張らないのが理想的だったのですが・・・
この投稿をInstagramで見る
タッチキーならPCB面にパッドを作り込めばタッチスイッチとして動作させることが出来るので、このようなPCBの製作では便利に使えそうです!
これまでの自作基板の製作過程においてこのようにタッチキーといった選択肢が使えたらな!
と思う場面が何度もあったことから、テストを兼ねていくつか自作基板を作ってみることにしました。
タッチキーを搭載しマクロパッドとして使える名刺基板のイメージ
静電容量方式のタッチキーを使った自作基板のアイデアや作ってみたいものはいくつかあります。
その中でタッチパッドのテストを兼ねて製作出来るものをまず作ってみるのが良さそうで、自作基板の製作において名刺基板はいつか作ってみようと考えていたので名刺サイズ(55mm×91mm)のPCBにタッチキーが付いたものを手始めに作ってみようかと考えています。
最近自作キーボードの製作も始めたことから、いくつかタッチキーが付いていてミニサイズのマクロパッドとして使うことが出来る名刺基板のイメージです。
まだイメージの段階ですが、タッチキーをこのように配置しメディアプレーヤーとして機能するものだと面白そうで実用でも使えそうです!
そしてハードウェアの構成は、QMKといったキーボード用のファームウェアが動く構成(MCU)で考えています。
ESP32ではデフォルトでタッチ用のI/O端子が用意されていますがQMKファームウェアで動く構成で考えているので、RP2040やATmega32U4といったマイコンとタッチキーの判定に静電容量式タッチセンサ用ICを使い組み合わせて使う予定です。
静電容量式のタッチキーのパッドを作る場合、一般的なガイドラインとしてパッドサイズは感度の問題から1.5cmくらいまでのものが推奨されているようですが、イメージしているものでは3cm程と大きなパッドを使っています。
感度調整はパッドに接続したキャパシタである程度調整は出来るのですが、このサイズのパッドで上手く反応してくれるのか?
またテストで組んだ小さなパッドのものでは、逆に感度が高すぎ指先近くの別のキーが押されたと誤検知されたりパッドの反対面(基板裏)に指を当てても反応してしまいました。
名刺基板として考えているので手に持って操作することも想定できます。
出来ればパッド裏面に手を当てた状態では反応しないように感度を調整したいところなんですが・・・難しいかな?
静電容量式タッチセンサ用ICはいろいろとあるようですが、現在テスト的に組んだものでは4チャンネル用のチップを2つ使い8キーの判定を行えるようにしています。
出力側(キー判定の結果を出力する端子)はI2CやSPI方式のチップもありますが、今回QMKに対応させようと考えているのでダイレクト出力できるタイプのチップで考えています。
QMKではカスタムマトリクスを使えばI2C等の出力に対応することも出来ると思いますが、キー判定にマトリクスを使わずにダイレクトピンを使うことも出来るため1キーの判定を1つのI/O端子に出力するダイレクト出力できるタイプのタッチセンサICを使うとファームウェアの作成も簡単になります。
QMKのダイレクトピンはアクティブLOWで動作するので、タッチセンサ用ICもアクティブLOWで出力できる、またはモード切替でLOW or HIGHの切り替えが出来るチップを使う必要があります。
詳細は製作した際に別記事でご紹介出来ればと思います。
キーホルダーサイズのミニマクロパッドのイメージ
電子工作で自作キーボードの製作も最近始めたのですが、ハード&ソフトを含めある程度基礎的なことは分かってきたので少し方向性を変えて変わったものも製作してみようかと考えています。
キーホルダーサイズで静電容量タッチキーが搭載されたミニマクロパッドというアイデアは面白そうです!
こちらもまだイメージの段階ですが、ブレッドボードで回路を組みQMKファームウェアでの動作も確認出来ているので作ってみようかと考えています。
こちらも同様にタッチセンサ用のICにはキー判定をダイレクトに出力できるタイプのチップを使う予定で、各キーにそれぞれ1チャンネルのタッチセンサ用ICを使ってみようかと考えています。
こちらの基板もQMKファームウェアが動く自作キーボードをベースにして物理スイッチをタッチキーに置き換えたという構成です。
両基板でタッチキーのサイズや形状、隣接するパッドとの間隔を変えて設計していて実際に動作させて比べてみるとタッチ感も分かりやすいかな?というテストも兼ねて製作を考えているのですが・・・
これまでのPCB製作でタッチパッドを扱った基板を作ったことがなく、基礎的な知識しか持ち合わせていないのでタッチパッドのみに特化したテストボードを先に作った方が分かりやすいかな?ということで以下のようなテストボードも作ってみようかと考えています。
タッチパッド用のテスト基板の製作
自作キーボードの基本的な回路構成やQMKファームウェアの基礎的な知識があれば、あとは使用するタッチセンサ用ICを選定しそのデータシートを読み込めばイメージだけで上記までは組むことが出来たのですが、タッチスイッチ用のパッド作成やそれを使ったPCBの設計では冒頭でお話したような多くのことがガイドラインとしてあるようで・・・
どれくらいの感度で自分がイメージしているタッチ感が出せるのか?
また実際にPCBで組んだ回路でどれくらいノイズ等の影響を受けるのか?または抑えることが出来るのか?
これは基板を作って実際に動かしてみないと分からない・・・ということで先にいくつかテストボードを作ってみようかと考えています。
その一つがこんな感じのボードです。
パッドサイズを変えキャパシタの容量でどれくらいの感度が出せるのか?
またレジストマスクを外しパッド(銅層)をむき出しにした場合はどれくらい感度が上がるのか?
そしてフレキシブル基板ではどう変わってくるのか?
そのようなことをテストしてから上記基板に反映させ製作してみようと考えています。
静電容量タッチキーが使われた市販されているボードをこれまでいくつか使ってみて、そして調べてみてある程度知識的に分かってきた部分は多いのですが、こればかりは実際に基板を作り動作させてみないと分かりづらい・・・ということでテストボードを現在いくつか発注しています。
最後に!
自作基板でタッチキーが使えると面白そうで製作の幅も広がりそうですよね!
現時点ではどれもまだCAD上のイメージだけなのでちゃんと機能してくれるか分かりませんが、実際にPCBにタッチキー用のパッドを作り込み組んでみないと分からない部分が多いのでいくつかテストボードを使い試してみてからイメージするものが作れるようになればいいかなと考えています。
製作した際にまた詳しくご紹介出来ればと思います。
コメントを残す