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【電子工作】USB電源ライン保護のスイッチIC『CH217K』を使ってみる!

先日USBの電源ライン保護用のスイッチIC『CH217K』を使い電源ラインを手動で操作(ON/OFF)でき、そして過電流が流れたり短絡がある場合に強制的に電源ラインを遮断出来るボードを製作しました。
素人の回路設計としては、なかなか便利なものが製作出来たと思います。

自作基板製作のパーツ実装時に行う短絡チェッカーとして使えるのも便利です!

【電子工作 / 自作基板】CH217Kを使ったUSB電源保護ボード『USB Power Toggle』の製作!

CH217Kは安価で入手性も良いチップ(秋月電子でも入手出来ます)で、私のような回路設計初心者でも比較的簡単に扱うことが出来るので便利だと思います。

USB電源ライン保護のスイッチIC『CH217K』を使ってみる!

普段自作基板の製作でマイコンを扱ったものを製作することが多いのですが、USBの電源まわりの保護目的に取られる処置はいろいろとあるようです。
回路構成などにより変わってくるかと思いますが、リセッタブルヒューズやダイオードを使ったものをよく見かけます。

例えば、こちらはArduino Uno Rev3のUSB電源部分の回路です。(画像引用: Arduino Store)
500mAのリセッタブルヒューズが接続され、この先にはオペアンプやMOS-FETを使い外部電源との切り替えを行う回路が接続されています。
過剰な電流が流れUSBホストや接続先のデバイスに影響を与えないようにしています。

またESP32-DevkitCではショットキーバリアダイオードが使われ、接続したPCに誤って電流が流れないようにされています。(画像引用: 秋月電子)

このようにUSBの電源ラインには何らかの保護処置を取ることが多いわけですが・・・

ショットキーバリアダイオードでは一般的なダイオードと比べ電圧降下は低いとされていますが、それでも0.3V程度の電圧低下が発生します。
Arduinoといった5Vで動作するマイコンでは、この電圧低下が問題になることが場合によっては出てくるかもしれません。
またリセッタブルヒューズでは制限する電流値が大きくなってくるとチップサイズも大きくなりがちです。

こちらではUSB電源ラインの保護目的に使われるUSBスイッチICとなるCH217Kについて見ていきたいと思います。

CH217KはENピンを使いUSB電源ラインのスイッチングを操作したり、過電流やチップの過熱が発生した際のアラートをFLAGピンで検知することも出来るので、これをマイコン等を使い制御することにより冒頭でご紹介したようなボードを製作することも出来ます。

WCH CH217Kの概要

CH217KはUSB電源ライン保護のためのUSBスイッチICです。

5V(Max5.5V)で利用でき外部接続した抵抗の値により400mA~2.7Aの範囲で出力電流のしきい値の制限を行う機能を持っています。(電源電圧2.7V~5.5V)
また過電流保護や過熱保護機能、低電圧誤動作防止(UVLO)機能も備わっています。

CH217Kの主な概要をまとめるとこのようになります。

CH217Kの概要
  • 外付け抵抗の値により出力電流のしきい値の制限が可能(400mA~2.7A)
  • 電源電圧2.7V~5.5Vをサポート
  • 出力側短絡時の高速電流制限保護
  • シャットダウン時の電流は1μA未満で逆電流はない
  • 内蔵パワースイッチングチューブのオン抵抗は70mΩ

詳しくはデータシートを参照して下さい!

参考 CH217K データシート秋月電子

CH217KはパッケージがSOT-23と小さなチップとなっています。
ブレッドボードやユニバーサル基板を使ってテストする場合、SOT23-6ピッチ変換基板が必要となります。

CH217Kは6ピン(VOUT/GND/FLAG/EN/ISET/VIN)のチップとなっており、各ピンの機能や役割はこのようになります。

ピン名称機能
VOUT電源出力端子
GNDGND端子
FLAG過電流・過熱アラート端子
EN電源出力制御ピン
ISET電流制限しきい値設定端子
※外付け抵抗が必要
VIN電源入力端子
MEMO
CH217Xではピンアウトが異なります!

基本的な接続&動作

基本的な接続です。
USB端子のVBUSに接続しUSB電源ラインの保護を目的とした接続例です。

CH217KのスイッチングはENピンで行い、LOWレベルの時にCH217Kのスイッチングが動作(ON)となりVINからの入力がVOUT側に出力されます。(プルダウン抵抗は不要)
そしてISETピンに接続した外部抵抗の値により出力電流のしきい値を決めることが出来ます。

MEMO
ISETピンに接続する外部抵抗は必須となります!
未接続状態だと動作が安定しません。

ISETピンに接続する抵抗値による電流しきい値の設定は、56kオームで1.0A、30kΩで2.0A、22kΩで最大の2.75Aとなるようです。
詳しくはデータシートを参照して下さい。

上記接続ではENピンがLOWレベルなのでCH217KのスイッチングはONとなりVINからの入力はVOUT側に出力されます。
その際にISETに接続した抵抗値により設定されたしきい値を超える電流が流れるとCH217KのスイッチングがOFFとなりVOUTへの出力が遮断されます。

またVIN/VOUT間の電位差と流れる電流の積が熱として発生するリニア動作をするため、連続導通電流が大きい場合や短絡が発生した時などでCH217Kの内部温度が上昇し過熱保護機能が働いた際もスイッチングがOFFとなります。
その際のアラートはFLAGピンから得ることが出来ます。(LOWレベルに落ちる)

上記は基本的な使い方ですが、過電流や短絡による保護目的でUSB電源ラインに入れるヒューズ的な役割を果たしてくれます。

ENピン / FLAGピンを利用し電源ラインを制御する

上記基本的な接続方法でUSB電源まわりにリセッタブルヒューズを使った時のような保護が簡単に出来ます。

そしてENピンの状態を変化させ電源ラインを任意に制御(ON or OFF)することや、またFLAGピンを使い過電流や過熱時のアラートを監視し個別動作を割り当てるなどの使い方も出来ます。

一例ですが、こちらはマイコンにATtiny202を使いCH217KのENピンのHIGH or LOWにより電源ラインを手動で制御、またFLAGピンの状態を監視し過電流や短絡、過熱が発生した際に強制的に電源を遮断(ENピンをHIGH)しエラーランプを点灯させている様子です。

このような制御も比較的簡単に行うことができ便利だったので、これをPCB化しUSB電源保護ボードとして製作しました。

【電子工作 / 自作基板】CH217Kを使ったUSB電源保護ボード『USB Power Toggle』の製作!

また上記ボードが便利に使えたことから、ハブ機能を追加し個別で各ポートを制御出来る4ポートバージョンも製作してみました。

【電子工作 / 自作基板】4ポートのハブ機能が付いたUSB電源保護ボード『4Port USB Power Toggle』の製作!

簡単にこのような任意の制御で使えるのもCH217Kが便利なポイントの一つだと思います。

最後に!

CH217Kの細かい動作や仕様などはデータシートを参照して頂きたのですが、安価で入手性も良く便利に使えるUSB電源ライン保護のためのスイッチICだったので簡単に概要をまとめてみました。

何かの参考になればと思います。

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