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マイコン等の低電圧帯で使う、複数電源の自動切り替え回路について考えてみる![ダイオードORing / MOSFET / Power MUX]

自作基板製作やテスト回路を組む際に、複数の電源を自動切り替えして使いたい場合は結構あります。

例えば、USB電源が切断されたらバックアップ用のバッテリーに切り替える、といった用途です。

このような電源切り替え(パワー・パス)の実現に向けて、これまでいくつかの方法を試してきました。

最もシンプルなものでは、ダイオードを使った「ダイオードORing」という方法があります。

また、MOSFETを使う方法や、専用の電源マルチプレクサチップを使う方法などもあるかと思います。

私の場合、マイコンまわりの電源切り替え、例えばUSBからの駆動(5V)とバッテリー駆動(3.7V)を切り替えるといった低電圧帯でのやり取りがこれまで多かったのですが、今回はこのあたりの電圧帯をターゲットに、「このような切り替え方法があるよ!」といったことを簡単に紹介していきたいと思います。

複数電源の自動切り替え回路について考えてみる [ダイオードORing / MOSFET / Power MUX]

USB電源やバッテリー、バックアップ用電源など複数の電源があり、それらを自動切り替えして負荷に電源を供給し続ける・・・。

そのような場合、電源入力側に配置する切り替え回路としていくつかの選択肢が考えられると思います。

マイコンまわりの3.3Vや5Vといった比較的低電圧・小電流のものを扱うことが私の場合ほとんどなので、今回はこれらの電圧帯(数A程度まで)で使うことを対象に、代表的な3つのアプローチを考えてみました。

ダイオードを使った「ダイオードORing」

最もシンプルに実現できるのが、ダイオードを使ったORing回路です。

ダイオードの「アノードからカソードへ一方向にしか電流を流さない」という特性を利用し、2つの入力のうち電圧の高い方が優先されて負荷側(後段回路)へ出力されるという仕組みです。

メイン電源が切断されたときの電圧保持や逆接続の保護、また冗長(バックアップ)電源として用いられます。

ただ、一般的な整流ダイオードを使う場合、順方向電圧(Vf)による電圧降下が発生します。

例えば、Vfが0.6Vのダイオードだと、5VのUSB電源から給電している場合、負荷に届くときには4.4Vまで落ちてしまうため、この電圧低下が許容出来る場合は問題ありませんが、後段の回路によっては正常に動かなくなることも考えられます。

また、仮に1Aの電流が流れると、それだけで0.6Wの電力が熱として失われます。

この損失を減らすために、比較的Vfが低く(0.3V〜0.4V程度)電子工作でも定番であるショットキーバリアダイオードを使うのが一般的だと思います。

しかし、ショットキーバリアダイオードであってもVf分の電圧低下は避けられず、電流が増えれば発熱も無視できなくなります。

また、ショットキーバリアダイオードには「高温になると漏れ電流(逆方向電流)が増える」という弱点があり、バックアップ側のバッテリーなどに意図しない電流が逆流してしまうリスクもあります。

そこで利用されるのが「理想ダイオード」です。

これは内部のMOSFETを制御してダイオードの振る舞いを模倣するもので、電圧ドロップや発熱を極限まで減らすことができます。

理想ダイオードチップの一例としてこれまで使ったことがあるものでは、XC8111MAX40200といった小型のICは便利で、これらを使うことで上記ショットキーバリアダイオードの弱点だった電圧降下や発熱の問題をスマートに解決することが出来ます。

【自作基板 / JLCPCB】ブレッドボード用ミニ電源ボードを作り直してみました![TPS2115A / XC8111]【リベンジ編】

2つの理想ダイオードが内蔵された、例えばLM66200のようなデュアル理想ダイオードチップを使えば、さらに省スペースでORing回路が実現できてとても便利です!

【自作基板 / JLCPCB】デュアル理想ダイオードチップ「LM66200」 ブレークアウトボードの製作!

MOSFETを使う方法

さらに定番アプローチとして、ディスクリート部品で手軽に組めるMOSFETを使う方法も便利だと思います。

この回路の具体的な挙動は以下のようになります。

動作概要
  • メイン電源(USB)が接続されている時:
    MOSFETのゲート(1番ピン)に5Vがかかります。
    ソース(2番ピン)の電圧は、D(ショットキーバリアダイオード)を通過した「5V – Vf」となるため、ゲート-ソース間電圧(Vgs)がほぼ0Vになり、MOSFETは完全にOFFになります。
    これにより、BATTERYから電流が消費されるのを防ぎつつ、メイン電源から負荷へ給電されます。
  • メイン電源(USB)が切断された時:
    ゲートがプルダウン抵抗によって0V(GND)に落ちます。
    一方で、ソース側にはMOSFETの内部にある「ボディダイオード(寄生ダイオード)」を介して、BATTERYの電圧がそのまま現れます。
    これによりゲート-ソース間に十分な電位差が生まれ、MOSFETが完全にONになります。
    ONになったMOSFETはオン抵抗が極めて低いため、BATTERYの電圧をほとんどドロップさせることなく負荷へ供給できます。

MOSFETを使う場合、ON時の抵抗(オン抵抗)が非常に低いため、ダイオードのような大きな電圧降下や発熱をほぼゼロに抑えられるのが大きなメリットです。

しかし、この構成にも弱点があります。

MOSFETの内部にあるボディダイオードの向きを正しく管理しないと逆流のリスクがあるほか、メイン電源が切断された瞬間に一瞬だけ過渡的な逆流が発生するケースもあります。

これらを完全に防いだり、より安全な保護が必要になる場合には、例えばMOSFETを2個背中合わせ(バック・トゥ・バック)に配置するなど、結果として部品点数が増えてしまい基板スペースを圧迫してしまう場合も出てきます。

電源マルチプレクサ(Power MUX)を使う方法

より安全な電源切り替えを実現するために、電源マルチプレクサIC(Power MUX)を使う方法もあります。

以前本ブログでも、TI(Texas Instruments)の定番Power MUXチップであるTPS2115Aを使ったものを紹介したことがあります。

【自作基板 / PCBWay】パワーマルチプレクサチップTPS2115Aを使ったテスト&評価ボードを製作してみました!

Power MUXチップを使う最大のメリットは、専用チップということもありその多機能さにあると思います。

内部に切り替え用のMOSFETだけでなく制御回路まで内蔵されており、以下のような高度な制御がIC単体で完結します。

電源マルチプレクサICを使うメリット
  • 手動切り替えと自動切り替えの柔軟な選択(優先モードの設定など)
  • 外部接続したマイコンなどで制御も可能
  • 切り替え時のクロスコンダクション(2つの電源が一瞬ショートする現象)の完全な防止
  • 電流制限機能による過電流保護など

外部のマイコン等と連携してステータスを監視したり、任意のタイミングで電源を切り替えたりする必要があるものには、これ以上ないほど便利に使えます。

ただ、チップ自体の実装(パッケージ)が難しかったり、周辺パーツが増えてしまったりするため、省スペースでシンプルに自動切り替えをしたいという目線で見ると少し大掛かりになりやすい場合もあります。

ここまでの機能は不要でシンプルに構成したい場合では、上記の理想ダイオードやMOSFETを使った方法が回路規模や手軽さの面では現実的な選択肢になりそうです。

特に、電圧ドロップが許容できる回路ならショットキーバリアダイオードを2個並べるだけですし、少しでもロスを減らしたいならMOSFETを1つ足すだけで、十分に実用的な自動切り替え回路が組めるからです。

専用ICの手軽さも魅力的ですが、ディスクリート部品の手軽さとカスタマイズ性の高さも捨てがたいものがありますね!

最後に!

今回は、これまでの自作基板製作においてマイコン周辺でよく使った電源自動切り替えの3つのアプローチをざっくり紹介してみました。

「手軽さ重視のダイオード」
「低損失だけど少し工夫がいるMOSFET」
「多機能で安全だけどパーツ構成など少し大掛かりになるPower MUX」

と、それぞれに違った良さや一長一短がありますね!

作る物のサイズや、どこまで厳密な制御が必要かによってベストな選択肢は変わってくるとは思いますが、定番のものなので回路設計の際のちょっとした参考にしていただければ幸いです。

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