以前書いたこちらの関連記事となります。

上記記事では、USB電源やバッテリーなど複数の電源を自動で切り替える方法について紹介しました。
複数ある電源から適切な1つを自動で選択し、システムを落とさずに切り替えるというシンプルなものです。
マイコンを使った自作基板製作では、例えばUSBが繋がっている時はUSB電源を使い、抜かれたら自動的にバッテリー駆動へと切り替えるといった仕組みがあると非常に便利です。
仮リポ繋いでテスト…
リポの充電とUSB電源との切り替えは問題無さそう👌充電テストして問題無ければ表面の操作スイッチ取り付けて完成させよう… https://t.co/uMskL8Hy58 pic.twitter.com/DFIek70tDx
— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) September 20, 2025
ただ実際に回路を組むとなると、ダイオードの電圧降下(VF)によるロスや、切り替え時の挙動、専用チップを使う場合の回路構成など、細かい部分で悩むことがあります。
一般的なダイオードを使った方法は回路がシンプルな反面、その電圧降下が無視できない場面も少なくありません。
こうした電源切り替えを比較的シンプルに解決できる理想ダイオードIC「LM66200」のブレークアウトボードを以前製作していたので、今回取り上げてみます。
目次
デュアル理想ダイオードチップ「LM66200」 ブレークアウトボードの製作
USB給電とバッテリー給電など、2つの電源をスムーズに切り替える方法として最もシンプルなものでは、ダイオードを使った電源の多重化(ORing)が使われることが多いと思います。
ORing回路は、ダイオードのアノードからカソードにのみ電気を流すという特性を利用し、複数の電源ラインへダイオードを挿入し電圧の高い方から電力を供給するという仕組みです。
どれか一つの供給が停止した場合でも、システムを停止させないための冗長化回路です。
回路は非常にシンプルで部品点数も少ないため手軽に実装できるというメリットがありますが、一般的な整流ダイオードでは順方向電圧(VF)が0.6~0.7V程度発生します。
そのため、例えば5V入力なら4.3V程度まで低下し、3.7V系のLiPoバッテリーなどではさらに影響が大きくなります。
そこでよく使われるのがショットキーバリアダイオードです。
ショットキーバリアダイオードは、一般的なダイオードと比べて順方向電圧が低く0.2~0.4V程度に抑えられるため、電圧降下による損失を減らすことができます。
しかし、マイコン回路やバッテリー駆動機器では、数百mV程度の電圧低下でも後段回路の構成などにより無視できない場合が出てきます。
特に低電圧動作のシステムでは、そのわずかな差が動作マージンやバッテリー使用時間へ影響することもあります。
そこで登場するのが「理想ダイオード(Ideal Diode)」です。
理想ダイオードは、内蔵するMOSFET制御によりダイオードのような逆流防止動作を実現しながら、順方向電圧降下や電力損失をショットキーバリアダイオードよりも大幅に低減できる仕組みです。
通常のダイオードでは数百mV程度発生していた電圧降下も、理想ダイオードではMOSFETのオン抵抗(RDS(on))による数十mV程度まで抑えることが出来ます。
そのため、低電圧駆動回路やバッテリー駆動機器との相性が非常に良いように感じます。
先ほどのダイオードを使ったORing回路を理想ダイオードに置き換えると、同じように電源を自動選択(電圧の高い方)しながらも、電圧降下や発熱を大幅に減らすことができます。
LM66200 ブレークアウトボードの製作
上記のようにシングルタイプの理想ダイオードを複数使えば、低損失で複数電源から電圧の高いものを優先して出力させるORing構成の回路を組むことが出来るわけですが、実際に回路を組む際は部品点数や基板実装面積なども気になるところです。
特に小型の自作基板では、電源周りだけで多くの部品を使いたくない場合もあります。
また、電源切り替え回路は動作自体は地味な反面、トラブルが起きるとシステム全体へ影響するため、なるべくシンプルにまとめたい部分でもあります。
そこで以前テスト用にLM66200というデュアル理想ダイオードチップのブレークアウトボードを作っていたので、今回はこのボードについて紹介します。
LM66200は、TI(Texas Instruments)製のデュアル入力・シングル出力タイプの理想ダイオードチップです。
定格電圧1.6V~5.5Vで動作し、1チャンネルあたり最大2.5Aに対応した理想ダイオードを2系統内蔵したICです。
2つの入力に対して理想ダイオードによるORing構成で利用できるようになっており、外付け部品をほとんど追加せずに電源の自動切替回路を構成することが出来ます。
参考 LM66200 データシートTexas Instruments定格電圧が低いため用途は限定されますが、例えば3.3Vや5Vといった低電圧帯で動作するマイコン回路や、USB給電とバッテリーを併用する場合などで特に使いやすいICだと思います。
市販のブレークアウトボードのようなものが見つからなかったため、以前テスト用に自作して試してみたのですが…
使い勝手が良かったので、最近の自作基板でもよく使うようになったチップです。
製作したボードの構成は非常にシンプルなものです。
入力1(VIN1/GND)、入力2(VIN2/GND)、出力(VOUT/GND)に加え、現在どちらの電源が選択されているか(VIN1またはVIN2)を通知するSTピン、内部の理想ダイオード機能を有効/無効にするONピンを引き出しています。
また、ステータスピン(ST)はオープンドレイン出力になっているため、プルアップ抵抗を実装し、任意の電圧へプルアップできるようにプルアップ先電源入力用端子としてV_STピンも引き出しています。
簡単なボードではありますが、このようなボードは作っておくと今後の自作基板製作の試作回路の検証などを行うのにとても便利だと思います!
例えば、電源の自動切替自体はLM66200へ入力と出力を接続するだけで実現できますが、接続する回路構成などによっては、切り替え時の挙動が意図しないものになる場合もあります。
DC/DCやLDOから生成した電圧を入力する場合、それら回路の後段にある容量の大きなコンデンサに残る電荷の影響により、期待したタイミングで出力電圧が切り替わらないといったことも起こり得ます。
検証段階で、必要に応じて放電用のブリーダ抵抗を追加した方が良いのか?とか、実際の切り替え波形はどうなっているかなども確認しながら進めることができます。
こうした細かな挙動は回路図だけでは分かりにくく、ブレークアウトボードとして手軽に試せるようにしておくと、データシートと照らし合わせながら検証できたりと意外と便利だったりしますよね!
JLCPCBに基板を発注
基板の製造は、今回もJLCPCBを利用しました。
パーツ数の少ない(2パーツのみ)シンプルなボードですが、今回はアセンブリサービス(PCBA)を利用して実装までJLCPCB側で行ってもらいました。
LM66200はパッケージがSOT-583と非常に小型なため、サイズの合うピッチ変換基板を探したり用意したりするのが面倒で、またチップ自体の入手や細かい手はんだでの実装作業の手間なども考えると、PCBAを利用しても5枚で20ドルもかからず10日ほどで実装済み基板が届いてしまうので、最近ではこのような試作・検証用の小規模な基板でもアセンブリサービスを利用することが増えてきました。

今回製作したボードの基板データ(Gerber / BOM / CPL)をダウンロード出来るようにしておきます。
何かの参考になれば幸いです。
発注項目の選択は特記すべきところはなく、このような感じで大丈夫です。(ほぼデフォルトで選択されている項目)
また、自身でパーツを入手して実装してしまう場合はステンシルも一緒に発注しておいた方がいいですかね!
JLCPCBの基本的な基板発注方法に関しては、こちらの記事で詳しくまとめています。

またPCBAサービスの利用に関しては、こちらの記事が参考になると思います。
あわせて見て頂ければと思います。


配送方法にOCS Expressを選択し、発注から10日ほどで実装済みの基板が手元に届きました。
JLCPCBのPCBAサービスは納期が非常に早く、これまで利用した感じでは、今回のような比較的シンプルな基板であれば大体10日前後で届くことが多い印象です。
このような検証用基板では、そのスピーディーさは毎回重宝しています!
また、何かメインとなる基板を発注するタイミングで一緒に入れておけば、今回のような小さな基板であれば複数枚入れておいても送料への影響もほぼなく、ついでに試作・検証用の基板も作っておけるのが便利です。
ちょっと試してみたい回路や、今回のような検証用ボードなども気軽に追加できるので、最近は必要になりそうなものをまとめて発注することが増えました。
最後にピンヘッダーを取り付けて基板は完成です!
実装済みの状態で届くため、届いてすぐに検証やテスト、試作回路への組み込みなどができるのはとても便利なところです。
使用パーツ
本ボードで使用したパーツです。
| パーツ | 定数 | 入手先 |
| 抵抗 (0603) | R1 10kΩ | AliExpress |
| 理想ダイオードIC | LM66200DRLR | AliExpress |
| その他 | ピンヘッダー | ーーー |
最後に!
今回は、デュアル理想ダイオードチップ LM66200を使ったブレークアウトボードについて紹介しました。
電源の自動切替自体はダイオードを使ったORing回路でも実現できますが、電圧降下によるロスや発熱などを考えると、低電圧で動作するマイコン回路やバッテリー駆動機器では無視できない場合があります。
部品点数を増やすことなく低損失な電源切替回路を比較的簡単に構成できるため、USB給電とバッテリーの切替や、バックアップ電源構成などにも使いやすそうです。
今回のようなブレークアウトボードを1つ用意しておくと、実際の挙動を確認しながら試せるため、自作基板製作や試作回路の検証用としても便利だと思います。
電源周りをシンプルにまとめたい場合には使いやすいチップなので、最近の自作基板製作でもよく利用するようになりました。
何かの参考になれば幸いです。




















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