これまでの自作基板製作では、一般的な2層基板を使って設計を行ってきました。
2層以上の多層基板の設計にも、いつかはチャレンジしてみたいと思ってはいたのですが・・・
意外にも早く、その時がやってきました!
各PCB製造メーカーでは、2層基板は今や格安で製造できる時代となりました。
しかしそれでも「多層レイヤー構成」にステップアップする理由は様々あるかと思います。
例えば、
- 配線密度が増え、配線同士の交差が多くなる
- 2層ではビアが大量に必要になり、かえって配線スペースを圧迫してしまう
- GNDベタが分断され、リターンパスの確保が難しくなる
- 電源ラインのインピーダンスを下げ、動作をより安定させたい
- USBなど高速信号ラインで、インピーダンス整合やノイズ対策をしっかり行いたい
- 基板サイズを小型化したい
といった理由が挙げられると思います。
特に最近製作したいくつかの小型基板では、限られたスペース内に多くの配線を通す必要があり、2層基板では限界を感じる場面も増えてきました。
そこで今回、実際に4層基板を設計・発注し、試してみることに・・・
4層基板と聞くと、なんだか一気に設計の難易度が上がるような印象を受けますが、実際に試してみた率直な感想としては「思っていたよりかなり2層基板に近い感覚で扱える」というものでした。
これならもっと早く4層基板を使っていればよかったかな…と感じてしまうほどでした!
初めての4層基板の設計
冒頭でも書いたように、一般的な2層基板から4層以上の多層基板設計が必要になる理由はいろいろあると思います。
今回、私が初めて4層基板として設計したのはこちらの基板です。
ファミコンコントローラー型のカスタムESPboyの製作を以前から考えていたのですが、どうしても2層基板では適切な配線を引くことが出来ず、実は1年ほど保留状態になっていたプロジェクトです。
限られたスペース内に、基板やスイッチパーツ、ディスプレイやバッテリーなどを配置する必要があり、特に内部スペースの制約がかなり厳しい構成となっていたものです。
中央にバッテリースペースを設けるレイアウト上、その周辺へディスプレイや拡張端子などのスルーホール部品が集中してしまい、2層基板では適切なGNDラインおよび電源ラインを確保することが非常に難しい状態となっていました。
基板の左右でGNDベタが分断され、細い電源ラインしか引けないという、まさに2層基板の限界にぶつかっていた感じです!

長らく保留状態となっていたのですが、最近は他の基板設計でも2層基板では限界を感じる場面が増えてきたこともあり、今回思い切って4層基板として再設計したという流れとなります。
今日来たJLCPCBさん!
自設計で初4層基板で作ってみた。
動くかな…😆 pic.twitter.com/J6zMZ8zcNT— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) April 12, 2026
結果として、これまで苦労していた配線問題は改善され、無事完成まで持っていくことが出来ました。(後日別記事で詳しく紹介する予定です)
朝活続き…
ファミコンコントローラー型の自作カスタムESPboyくん完成🤩
かなりよく出来たと思う!一箇所回路の間違いがあったけど、上手くリカバった👌
初4層基板だったけど、これから使っていこう📝Thank you@JLCPCB_Japan @JLC3DP pic.twitter.com/4MkEmwAETM
— ガジェット大好き!! (@smartphone_jp1) April 18, 2026
多層基板の基本的なレイヤー構成について
基板の層数(レイヤー数)を増やす最大の目的は、「信号の通り道(信号層)」と「電気の土台(プレーン層)」を分けることにあります。
特に多層基板では、GNDや電源ラインを専用層として内部に確保できる点が大きな特徴です!
層構成(スタックアップ)を考える上で重要なのは、信号層のすぐ隣にGND層を配置することだと思います。
これにより、
- 信号のリターンパスを短くできる
- ノイズの影響を受けにくくなる
- インピーダンスが安定しやすくなる
- USBなど高速信号の品質向上につながる
といったメリットがあります。
また、GNDプレーンを大きく確保することで、基板全体の安定性向上やEMI(電磁ノイズ)低減にも効果があるようですね。
代表的な2層・4層・6層のスタックアップ例を簡単に見ておきます。
2層基板
基板の表面と裏面の2層のみで構成される、最もシンプルなものですね。
| Topレイヤー | 部品実装 + 信号配線 + GNDベタ |
| Bottomレイヤー | 信号配線 + GNDベタ |
低コストで扱いやすい反面、配線密度が増えるとGNDベタが分断されやすく、電源ラインや高速信号の取り回しが難しくなってきます。
4層基板
2層増やした4層基板では、内側の2層を「GND」と「電源」の専用層(プレーン層)にするのが一般的です。
| Topレイヤー | 信号配線(部品実装) |
| In1(Internal1) | GNDプレーン(基板全体の基準) |
| In2(Internal2) | 電源プレーン(各パーツへの電源供給) |
| Bottomレイヤー | 信号配線 |
信号層とプレーン層を分離できるため、GNDを綺麗に確保しやすく、ノイズ対策や高密度配線にも有利となります。
今回、初めて4層基板の設計にチャレンジしてみたわけですが、実際にやってみると思っていたほど特別難しいものではありませんでした。
4層基板では、2層基板に対して内層にGND層・電源層が追加される構成となるため、基本的な信号配線についてはこれまでの2層基板設計の延長感覚で進めることができます。
むしろ、GNDや電源ラインを専用層として確保できることで配線自由度が大きく向上し、結果的には「2層基板より配線しやすい」と感じる場面の方が多くありました。
もちろん、層数が増えることで通常の2層基板と比べるとPCB製造コストは高くなります。
とはいえ、今回JLCPCBで製造してみた限りでは、個人製作でも十分現実的に利用できる価格差という印象でした。
実際に4層基板を体験したことで、多層基板設計の雰囲気や考え方もかなり掴むことが出来たので、今後は基板サイズや配線密度、回路構成などに応じて2層や4層を使い分けながら設計していければと思っています。
6層基板
4層基板にさらに「信号層」を追加し、より複雑な配線や高速信号に対応した構成です。
現状、私の用途では4層以上の多層基板が必要になる場面はほとんど無いのですが、今後さらに高密度な基板を設計する機会があれば、6層基板にもチャレンジしてみたいところです。
| Topレイヤー | 信号配線(部品実装) | 信号配線 |
| In1(Internal1) | GNDプレーン | GNDプレーン |
| In2(Internal2) | 信号配線 | 信号配線 |
| In3(Internal3) | 電源プレーン | 信号配線 |
| In4(Internal4) | GNDプレーン | GNDプレーン |
| Bottomレイヤー | 信号配線 | 信号配線 |
今回のような個人製作レベルでは、まず4層基板が「最も現実的で扱いやすい多層構成」なのではないかと感じました。
参考 6-Layer PCB Stackup and Buildup GuidelinesJLCPCBKiCadの設定について
2層以上の多層基板を設計する場合のKiCad側の基本設定についても簡単に見ておきます。
PCBエディタを起動し、[ファイル] → [基板の設定]へと進みます。
左側メニューから[物理的スタックアップ]を選択し、[導体レイヤー]から使用するレイヤー数を設定します。
今回は4層基板の設計なので導体レイヤー数に「4」を選択します。
これで、Top / Bottomレイヤーに加え、内層となる「In1.Cu」と「In2.Cu」が追加されます。
次に、[基板編集レイヤー]から内層として追加されたIn1.CuおよびIn2.Cuを、「電源用のプレーン」にします。
以上で、KiCadでの4層基板用の基本設定は完了です!
これで、In1.CuレイヤーをGND層、そしてIn2.Cuレイヤーを電源層として設計していくことになります。
実際の設計感覚としては、これまでの2層基板設計にかなり近く、そこへ内部電源プレーンとGNDプレーンが追加されるイメージです。
ビアによる回避配線を減らせるなど、配線の自由度も大きく向上しかなり楽に設計できました。
そして、多層基板になるとビアの扱いも少し変わってきます。
通常の2層基板では表面から裏面まで貫通するスルーホールビア(Through-hole Via)が使われますが、多層基板では外層から内層のみに接続されるブラインドビア(Blind Via)や、内層同士を繋げるベリードビア(Buried Via)があります。
参考 What is PCB Via and Which Type Should You Choose?JLCPCBこれら特殊ビアは製造工程が複雑になるため、通常のスルーホールビアと比べると製造コストが大きく上がるようです。
設計内容によっては必要になるケースもあると思いますが、今回のような一般的な4層基板で利用する程度であれば、通常のスルーホールビアだけでも特に問題なく設計可能だと思います。
また、スルーホールビアであれば特別な設定無しで利用でき、JLCPCBでの製造料金についても、大きな価格上昇なく利用することが出来ます。
JLCPCBへの発注や製造料金について
今回利用したJLCPCBへの発注やかかる製造料金などにについても少し見ておきます。
初めの4層設計の基板として発注してみたのですが、まず驚いたのが製造料金です。
多層基板、今回は4層基板での発注だったのですが、JLCPCBでは基板サイズによっては通常の2層基板とあまり変わらない料金で製造できるのが非常に印象的でした。
4層基板であっても、100mm×100mm以内に収まる基板サイズであれば、製造料金はわずか7ドルとなるようです。
以前は「4層基板=かなり高価」というイメージを持っていたのですが…
個人製作レベルでもかなり利用しやすい価格帯になっているんですね!
ただ、100mm×100mmを超えるサイズになると、4層基板では製造コストが一気に上がるようです。
今回実際に製作した基板は約120mm×50mmサイズとなり、標準構成での製造料金は約27ドルほどとなりました。
とはいえ、私の場合は100mmを超えるこのような大型基板を製作する機会はあまり無く、普段製作しているような小型基板であれば、2層基板と大きく変わらない同価格帯で4層基板を利用できることが分かりました。
実際に今回使ってみて、「これならもっと早く4層基板を使っておけば良かった…」と感じるほど、多層基板へのハードルはかなり低くなった印象です。
最近よく製作していたミニボード、今なら4層基板として設計した方が楽だっただろうな…なんて思ったりもしています。
ちなみに、JLCPCBへの基本的な基板発注方法はこちらの記事でまとめています。
あわせて見て頂ければと思います。

最後に!
今回、初めて4層基板の設計・製造にチャレンジしてみましたが、実際にやってみると、これまでイメージしていたほど難しいものではありませんでした。
もちろん、GNDプレーンや電源プレーンなどのレイヤー構成やビア配置、リターンパスなど、多層基板ならではの考え方は必要になります。
しかし、一般的な4層基板であれば、基本的には2層基板の延長感覚で設計することができ、むしろGNDや電源層を専用プレーンとして確保できることで、配線の自由度が大きく向上することが分かりました。
また、JLCPCBでは4層基板も非常に手頃な価格で製造できるようになっており、「多層基板は業務用途向け?」といった以前持っていた漠然としたイメージはかなり薄れ、実際に設計・製造してみたことで、多層基板へのハードルはかなり下がったように感じます。
今後は、用途や回路構成、基板サイズなどに応じて、2層基板と4層基板を使い分けながら設計していきたいと思います。
これから初めて4層基板にチャレンジしてみようと考えている方の、何かしらの参考になれば幸いです。




















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